第12話

 なんやこいつ……

なんでこうも濃いファンが多いんだよ……

 俺は心の中で小さく呟く。

サ室を出たい……

 しかし、アウフグースなんて高めのサウナでしかやっていない。

 俺は黙って下を向いた。

 「私のアウフグースでは綺羅星カレンちゃんの曲に合わせて熱波を送ります。大人気楽曲を3連チャン。ロウリュするたびに曲を変えていくので盛り上がってください!それでは一曲目。恋のトキメキハート」

 そういってタクヤさんは曲をかけて、石に水をかけ始めた。

 うおっ、いい香りだ。爽やかだけど、甘い。優しい香りだ。オレンジに近いけど色々と入っている……

「ちなみにこれは私のオリジナルブレンドアロマ水。綺羅星カレンちゃんの香りを想像して調合しました。つまりはカレンちゃんの香りです」

 何言ってるんだ。こいつ……

「綺羅星カレンの香り……ビンビンビン……あーっ、逝くっ!」

何言ってるんだ?こいつ……

「それでは曲に合わせて仰ぎますので、合いの手お願いします!」

 その合図と共にめちゃくちゃいい風がサウナ室を駆け巡っていく。

 それは春の春疾風のように。

 それは夏の薫風のように。

 それは秋の野分のように。

 それは冬の木枯らしのように。

 風はとても気持ちいい。

 たが……

「「「うりゃおい!おりゃおい!うりゃおい!うりゃおい!うりゃおい!」」」

 なんだよこの合図!アイドルのファンかよ!

 ってか母さんはアイドルだったなぁ!

 そう思いながら俺も「うりゃおい!」と叫ぶ。

 そして、俺の目の前に風がやってくる。

 目の前には筋肉モリモリステロイドでマッチョになった汗塗れのおっさん。

 だが服だけは母さんのフリフリ衣装。

 うん……気にしちゃだめだ……

「お願いします!」

 俺は風を仰いでもらうために手をあげる。

 そして、目の前ではタオルで仰がれて、ヒラヒラと舞うスカートがあった……

 「あっー!逝くっ!」

 その心地よい熱波に俺はいきかけていた。

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俺の母さんが大人気アイドルVtuberになっているのは世界の方が間違っていると思う TKあかちゃん @tktottuan

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