第11話

うぉぉぉー!!!

アウフグースだぁ!

 俺は心の中で叫び、サウナ室へと駆け込んでいく。

 ここのサウナはオートロウリュだったはずだが、いつの間にかロウリュサービスも始めたらしい。

これは行かなきゃサウナーがすたる!

(アウフグースとはサウナ室でおこなわれるパフォーマンスである。

 サウナ室にある熱源、サウナストーンに水をかける行為、ロウリュをすることで、サウナ室の温度と湿度をあげ、

熱波師は客にタオルで風を送り、一気に体感温度を上げるサービスの事をいう)


 サ室の最下段に俺は座り、ワクワクとさせる。もちろん、最後まで耐えるために頭は下に下げる。

サウナは上段の方が熱いのだ。

すると「それでは皆様、悶絶調教熱波師タクヤさんの入場です。皆様!拍手ー!」

と店員さんが声をかけていた。

 ふむ、どうやらここの熱波師はテンションを上げでいくタイプらしい……

 熱波師にも2パターンある。

 ただ静かに風を送り、静けさとリラックスを客に提供するタイプ。

 客と一緒に盛り上がり、パフォーマンスや声出しで心と身体を熱くするタイプだ。


ワクワクしていると突如として音楽が鳴り響く。


 わお、こいつはガチガチの盛り上げタイプだ。そうそうお目にかかれないし、

こういうタイプは高級店にしかいない。

 こんな大衆サウナでまじかよ!

と俺はワクワク感を最高潮に達していると「ウッス、悶絶調教熱波師のタクヤです……」

 と熱波師の人が挨拶していた。

 俺は頭を上げる。

「うわぁぁあ!!!変態だぁぁぁぁ!!!」

 誰かが声をあげる。

俺も声を出して叫びたかった。

しかし、声よりも俺は先に足が震えた。

 赤いリボンにフリフリフリル。

青を基調とした青いドレス。

 綺羅星カレンのコスプレをしたムキムキマッチョの変態がいたのだ。

「ウッス、悶絶調教熱波師タクヤあらため、大人気アイドルVtuber熱波師、綺羅星カレンです」

ええ……

なんだこの変態。

 この熱いサウナ室で暑そうな服を着ている。

 死ぬ気か?こいつ……

 と俺は冷静にタクヤさんを見ていた。

「うぉぉぉ!!!タクヤさんだぁぁぁ!!!ってかお前、変態とか失礼だぞ。この人はなぁ!綺羅星カレンちゃんへの愛を熱波として伝えているんだ!つまりはカレンちゃんのファン!つまりは俺たちの仲間なんだよ!」と先ほど叫んでいた人の友人であった人が擁護していた。

「確かに、コスプレって作品やキャラへの愛情表現だもんな!すみませんでした!」

と先ほど叫んでいた人はタクヤさんに謝る。

 いや、変態だよ!確かにそういうのはあるけどさ!そういうのは、そういう場所でやるべきなんだよ!

大衆スーパー銭湯でやるのは違うよ!

 と心の中で叫ぶ。

「それではこれからアウフグースイベントをしますが、私、悶絶調教熱波師タクヤの事を知っている人ー」

とタクヤさんはパフォーマンスをしていく。

 その言葉に半分ぐらいの人が手を上げていた。

 クソ!変態の癖に人気熱波師なのか……

 「それでは綺羅星カレンちゃんのファンの人〜」

と言うと俺以外のサウナ室全員が手を上げていた。

しかも、全員手をピンと伸ばしている。

 ええ……俺以外全員母さんのファンかよ……

「はい、ありがとうございます!知っている人も知らない人もいると思いますが、私の熱波では音楽を流しながら熱波を仰ぎます。それでね。盛り上がりながらアウフをしたいのですが……実はそう!これは仕事を通じた綺羅星カレンちゃんの布教。老いも若きも綺羅星カレンちゃんの事を知って欲しくて熱波をやっています!」

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