第9話
そんなやり取りをしながら俺は夕食を終える。
父さんと俺で皿洗いして、母さんが居間でのんびりしていると
「なあ、ユウキ。明日は土曜日で学校休みだし、今晩は風呂屋にでも行かないか?」と言ってきた。
風呂屋!と言えば俺の家庭が行くのは近所にある全国チェーンのスーパー銭湯。天国湯!
デカい湯船に温泉付き、サウナ付きでイベントも多い最強施設!
俺はすぐさま「いいね!いこう!」と言った。
母さんも
「大きいお風呂はいいねぇ〜」と賛成し、
「じゃあ、バスタオルとか用意するから。パパ、車お願いね♡」と声をかける。
俺もタンスからタオルを取り出して準備をした。
家に入ればスマホでは母さんと父さんの話題ばかり、興味の無いものや悶絶するような話。そして、ドン引きするレベルの濃いファンが目に入ってしまう。
心の平穏と体のやすらぎの為に気分転換は必要だ。
父さん。ありがとう。
父さんは何も言わなくても俺の気持ちを察してくれているんだね……
そう思いながら、俺は父さんの車に乗り込み、揺られていく……
夜。
車に乗って、外を見ると、街灯が月の光のように鈍く輝きながら、前から後ろへと消えていく。
父さんの趣味の音楽を聞きながら、父さんは気分よくハンドルを切り、母さんは『この曲、パパとの思い出の曲なのよ。あのときはアイドルの卵だったけど、ついうっかり青春してしまったわ♡』と、何回も聞いた話を耳を塞ぐ。
市街を抜け、スーパー銭湯、天国湯まであと数キロと書かれた看板を見るとデカい風呂が待っていると告げてくるのだ。
おっ、きたきた。
天国湯。
駐車場もほどほどに混んでいるが、満員ではない。
父さんは駐車券を取るために窓を開ける。
すると同じ風呂屋に来たあろう人たちが会話しながら歩いていた。
うんうん、いいね……
賑やかではあるが、騒がしくない……
ん?
「うぉぉぉ!!!!ぜってえ!限定版タオル手に入れるぞぉぉぉ!!!!」
「お前、Bタオルでた?こっちはAのサウナハットがダブってしまったんだ!ぜってえ今回でフルコンプしてやる!」
「もし、見知らぬ方……貴殿も同じ同士ならダブりで不要でしたら、某のも交換しますぞ」
「いえ、このダブりも全て愛……愛の証なのです……」
「失敬……しかし、貴方も同士ということは、友ということですな!」
とめちゃくちゃな会話が聞こえてきた。
そして、クソデカ看板が嫌でも目に入る。それには
『大人気Vtuberたちとお風呂コラボ!!』とデカい文字が書いております、たくさんのアイドルVtuberたちを押しのけて、綺羅星カレンがセンターを飾っていた。
……
「父さん……母さん……これなに?」
「最近のお風呂屋さんはこういうコラボもするんだ。やっぱり父ちゃんはママのファン1号。こういうイベントには参加したいなぁって!」
「まぁ♡パパったら♡ちなみにママはパパのファン1号♡」と二人でイチャイチャしていた。
クソ!風呂にすら魔の手が迫っているのかよ!
ってか、風呂屋にアイドルっていかがわしいなぁ!
と心の中でツッコミを入れた。
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