第8話


「はぁ……濃い一日だった……」

と俺はため息をつく。

楽しいはずの新作ゲームがまさかの親が絡んでくるとは意識外だった……

 宿題を終え、明日の予習を軽く済ませると母さんが「ごはんよー」と声を掛けてきて、俺は部屋を出る。

俺の家は平凡な2階建ての家で、母さんたちが人気者になった今も同じ用に暮らし、同じような生活をしている。

 俺は「はーい」と降りていくと、そこには父と母が、「うーん。ママの作るご飯は美味しそうだなぁ」「パパー。つまみ食いしちゃだめよー」と一般家庭のような光景がそこにはあった。

俺は居間の食卓の椅子に座り、メニューを見る。

ご飯に玉ねぎの味噌汁。そしてサラダがついたハンバーグにブロッコリーのツナあえと育ち盛りの俺に嬉しい豊富なメニューがあった。

「さあ、みんな揃ったし食べましょうー」

「そうだな。ユウキ。ママ。いただきます」

「「いただきます!」」

そして、俺は味噌汁に手をつけて味をみる。

うん、おいしい……

「なあ、父さん母さん……」

「ん?なんだ?ユウキ」

「どうしたの?」

「もう絶対にゲームや映画で声優しちゃだめだからな!」

 その言葉を言うと父さんと母さんはこの世の始まりかのような歓喜の表情をする。

「パパー!ユウキが、私たちのお仕事に意見を言ってきたわ!」

「俺達も有名になったんだなぁ……うんうん」

 いや!違う!その有名レベルが桁がハイレベルで違うから!

世界進出しているうえ、お前たちの話、友達からひっきりなしに出てるから!と心のなかでツッコミを入れたいが、グッとこらえる。

「いや、そうじゃなくて。父さん。母さん。ナイトメア·オブ·ザ·リビングハザードの声優やったでしょ。でも、そのゲームについてどこまで知っているの?」

「どこまでって……ユウキと同じぐらい知っているぞ」

ん?

「ママもよ。そりゃユウキが小さい頃、CM見て、やってみたいーって言ったのに結局、怖くて自分でプレイ出来なくて、パパが一緒にプレイしていたのを昨日の事の用に覚えているわ」

 ……

クソっ!なんかいい話し始めやがって!

いや、違う!

と心のなかで思いながら、スマホで『アイドル。声優。初挑戦で炎上』の記事を見せる。

「今回、知っているゲームだったから、その雰囲気で演技出来たのかもしれないけど、他のアイドルで、得意じゃなかったり、役にあってないのに無理矢理キャスティングされて炎上しているのはよくあるんだ。俺もあんまり詳しくないけどさ。仕事を貰えたからって、あんまり燃えそうな案件には首突っ込んで欲しくないなって……」

「ユウキ……」

「ユウキ……」

「父ちゃん。嬉しいよ!やっぱり若い子の目線ってのは有り難いな!父ちゃんもママもお前の好きなゲームに出てたら面白いかなって思って、結構無理してゲーム会社さんにお願いしたんだけど、次からはやめておくよ!」

……

「こらぁ!クソ親父!なんて事をやってくれるんだ!俺の好きなゲームに両親出てたら息子は複雑な気持ちになるに決まってるだろぉ!」

「きゃあ!パパ!ユウキが反抗期よ!御赤飯?すき焼き!?明日はごちそうにしましょ!」

「ユウキも親に反抗するようになったか……父ちゃん嬉しい……」

「反抗するよ!なんだよ!仕事もらったから、素人なのに声優の仕事したのかと思ったじゃん!もう、俺二度と最新作のシナリオに感情移入できねえよ!なんで親父に『恋人はどんな人なんだ?』ってゲームで聞かれなきゃいけないんだ!」

そう言った瞬間、父さんは

「恋人はどんな人なんだ?」と演技がかった感じで尋ねてきた。

いや、突っ込んだら負けだな……これ……と思う。

「いや、いないし、もういい……飯食うわ……」

「ユウキの反抗期が終わってしまったわ……ママ寂しい……」

と俺が冷めた目で話を終わらせると母さんは寂しそうにしていた。

 ちなみに父と母が声優をしたゲームのコメント欄は名無しのモブだったおかげか、

父と母を知らないでも「これはもうこの親子のボイスドラマ企画作るべきでしょ。はっきりわかんだね」

「モブだけどキャラ濃すぎぃ!イキスギィ!」

「ビンビンビンビン。ちくっ!あああああ!(心に刺さる音)」

「タクヤのボイス3000円」

といった肯定的なコメントで溢れ、炎上せずに追加シナリオ作ってと盛り上がっていた。

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