第7話
アイドルが声優初挑戦!
それは大抵呪われた言葉だ。
それは男だろうが女だろうが関係ない。
大抵は話題作りのために無理矢理キャスティングして、下手くそな演技で映画やアニメの感動を潰しまくる呪われた言葉。
その呪いがまさかの俺の家庭に降り掛かってしまった。
興味のないゲームならまだしも、俺の好きなゲーム……
……
わぁぁぁあ!!!!なんてことを!
と、体験版なのに俺は机を叩いて涙を流す。
しかも、なんで!なんで父さんが参加しているんだ!
いや、気にするな!俺!大抵こういうのはちょい役……
ちょい役だよな?
完全メインで売上崩壊レベルになったりしないよな?と俺は心のなかで大焦りする。
現に、父さんのキャラは目的地が近いからと言って主人公に着いてきてくれている。
なんか、ガチ仲間キャラっぽいな……
いや、ゲームとシナリオ部分は面白い。これなら……
と思い、俺はプレイを続ける。
コメント欄も声優初挑戦……みたいなコメントがチラチラ流れて来ているが、こういうのは大抵ファンしか見に来ていない。好意的なコメントが多数だった。
『ナイスショット!』
『まってろ!今、助ける!』
『恋人、どんな人なんだ?』
『恋人……見つかるといいな……俺の娘も無事だといいんだが……』
とゲームをしていると父さんがカッコいいイケボでめちゃくちゃフォローしてくれる。
……
うわ、父さん、めちゃくちゃ上手い!
とプレイが気にならないレベルで父さんのアフレコは上手かった。
コメント欄も「アキラさん声優上手!」「イケボすぎる……俺、男だけど惚れてしまう……」「娘になりたい……」といったコメントで溢れていた。
そうして、俺はゲームを進めていった。
ふむ、体感的にそろそろボス……ってボスが来た!
うぉぉぉ!!!これのボス戦めちゃくちゃ面白い!ってか父さんのキャラ、めちゃくちゃ戦闘フォローしてくれてる!よし!勝てた!
これで、このキャラの娘が待っているっていう場所に……
ゲームのボスを倒し、ムービーが流れる。
しかし、避難所となっていた場所は崩壊しており、金網の向こう側ではゾンビがひしめき合っていた。
クソ……これ……
と俺はシナリオに感情移入してしまう。
主人公の恋人は大丈夫なのだろうか……
それにこの人の娘も……
ん?そういや、父さんが声優してるキャラ、名前なんだっけ?ってか名前でたっけ?
そう思っていると、主人公のスマホがなり、恋人は別の避難所に避難した事がメールで綴られていた。
よかった……
そう思っていると
『ゔわぁぁぁぁ』
と何か聞いたことのある声がゲーム画面から聞こえてきた。
……
母さん?
「はいー!実は綺羅星カレンも声優初挑戦ですー!でもあまり、上手にできなかったのと、世界観を壊したくないって事でゾンビA役で出ましたー!」
その言葉に俺は黙ってムービーを見続ける。
避難所の金網の向こうには母さんの声をしたゾンビがおり、また大量のゾンビがひしめき合っていた。
そして、金網が押し倒されて次々にゾンビたちがなだれ込む。
『こいつをやる。俺にはも必要ないからな……』
と父さんの声をしたキャラがマシンガンを渡してきて、おとりになって体験版は終了した。
「はい!皆様、いかがでしたでしょうか?今回、パパはモブキャラAと私、カレンはゾンビA役で声優初挑戦としてやらせていただきました!発売日までまだまだ先ですが、みんなも是非体験版プレイしてみてねー!じゃあねー!」
と母さんは画面に手を振って別れを告げており、配信のコメントは大盛りあがりだった。
……
いや!モブにしてはキャラ濃いよ!
ってか体験版で終盤みたいな盛り上がり持ってくるとか流石だな!シナリオライター!
と心のなかで叫びながら、母さんの配信は終わった。
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