第5話
退屈な日常は過ぎてゆき、俺は部活もないので真っ直ぐ帰宅した。
帰り道、女子小学生たちが『カレン様可愛いよねー!』とか言いながら何かよくわからない歌を歌っているのを小耳に挟んでしまった。
まあ、最近のアニメの話でもしていたのだろう。
カレンなんてよくある名前だし……
流石に小学生までがファンなんて考えたくもない。
俺は家に着き、鍵を開けて「ただいまー」とドアを開ける。
その瞬間「ユウキくーん!!!!たふけてえ!!!!!」
と、若干、舌を噛みながらドタドタと廊下を駆けてきた母さんが俺に飛び込んできた。
「ぐぇっ!」
俺は飛びかかられた衝撃で後ろに倒れ込んでしまう。
「わぁぁぁ!ごめんねごめんね。ユウキ!大丈夫?怪我してない?」
「全然大丈夫……って母さんどうしたの?そんなに慌てて」
「そう!大変なの。ママ。死んじゃうわ!」
「……は?」
衝撃的な言葉。しかし、死んじゃうと言いながら元気な姿が目の前にはある。
「母さん。死ぬってなに?」
「そう!こっち来て!」
そう言われて俺は家に上がり、手洗いうがいをさせられ、母の配信部屋に入っていく。
そのデカいパソコン画面にはデカデカとユーアーデッドの文字が出ていた。
「死んじゃってる……」
とがくりと落ち込む母の姿があった。
「母さん、ゲームの話ならゲームって言ってね」
「ゲームはゲームだけど、これはお仕事なの。このナイトメア·オブ·ザ·リビングハザード体験版実況!これをメーカーさんから配信でやってって案件が来てね。それで少し触ってみたのだけど、触っただけで主人公が死んじゃったの!ママびっくりしちゃったわ……」
「母さんのゲームの腕は下手だからなぁ……そんな案件断れば良かったじゃん」
「でも、このゲーム。ユウキの好きなゲームじゃない。最新作プレイしたいーって言っていたし、メーカーさんがね。やってくれたら製品版も先行であげるって言ってくれたから……」
「ん?」
最新作?
確かにナイトメア·オブ·ザ·リビングハザードはリマスター版がちょっと前に発売されたが、最新作は名前だけで他は一切予告されていないはず……
「か、母さん!そのゲームそのゲーム見せて!」
「う、うん!」
俺はこのパソコンをカチカチとクリックし、オープニング画面に戻る。
するとそのにはまだ発表されていないナンバリングが書かれていた。
「ユウキ。少しゲーム教えて!もうじきママの配信時間が来ちゃうの!」
ん?
「母さん、どういうこと?」
「実はね、このゲームの発売発表と同時にママがね。体験版の実況プレイ配信する事になっているの……」
「……なんですって?」
まさかの本格的案件じゃん!
母さんのゲームは下手の横好きだから、こんなの視聴者が見たらイライラで炎上しちゃうよ!と心のなかで母さんにツッコミを入れる。
「かれこれ1時間ぐらい練習しているのだけど、はじめの敵で毎回負けているの……」
「……とりあえず……母さん……配信の時、俺がプレイしようか?」
「ユウキー!本当!?ありがとうー!ちゅーしてあげる!ちゅー!」
そういって母さんは俺の頬にキスをした。
「やめろ!俺はもうそんな歳じゃない!」
そういって俺はキーボードに手を添えた。
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