第1話

「はぁ……なんて物を朝から見てしまったんだ……」

 俺は実の父の執事コスと実の母が2次元イラストでフリフリの姫衣装を着て歌っている光景を見てしまい頭が痛くなる。

 それは学校に着いてからもそうだし、学校は学校で気を抜くと「おい!綺羅星カレン様の配信みたかよ!手料理配信めちゃくちゃ美味そうだったよなぁ〜パパの夕食です!って言っていまし、お父さん想いのいい娘過ぎるでしょ……あんな女の子が彼女だったら……」

(いや、それ夫の事をパパっていうタイプの奥さんなだけだから!ってかそれ俺にとって複雑だからやめろ!)

「アキラ様の筋トレ配信みまして?ベンチプレス150キロ上げていて、そして、あのシックスパック!まさに男の中の男!あんなイケオジがお父さんだったら……いや、年の差があったとしても♡♡♡」

(16ぐらいの女の子がおっさん好きになるなよ!親父の枕、わりと臭えぞ!やめとけ!)

 と俺の両親の話題がちらほらと聞こえてくる。

 それがいい話であればいいが、大抵は実の父と母に向けられると気持ちが複雑になる話ばかりだ。

「よう。ユウキ、おっすおっす〜」

「なんだか浮かない顔してるゾ。大丈夫かゾ?」

声をかけていた2人をみると、いつもおちゃらけているお調子者の田所 コウジと語尾にゾを付ける三浦 トモユキがいた。

二人は数少ないが心を許せる友人。

 俺も合わせて三馬鹿トリオだ。

「ユウキが元気ないとつまらないゾ〜」

「当たり前だよなぁ!何かあったのか?」

「いいや、大丈夫。世間と自身とのギャップに戸惑っていただけだ。」

「あっ、そっかぁ。俺はてっきり学校のアイドルの事についてかと思っちゃったぜ」

 浩二はニヤニヤと笑いながら俺にアイドルの話をふっかけてくる。

「いや、ちがっ……」

 そう言おうとした瞬間、教室のドアが開かれた。

 その瞬間はいつも皆の会話が止まる。

 銀色のきめ細やかな絹のような髪。

澄んだサファイアの様に輝く瞳に純白の肌。

 誰もが振り向く容姿を持った美少女が入ってくる。

 男性だけでなく、女性も誰もが彼女に瞳を奪われる。そんな彼女の名前は白銀アスカ。小学生の頃からテレビに出ている有名人だ。

「今日こそ告白するのか?ユウキ〜」

「そうだゾ」

「いや、違うって!そういうのじゃないから!ってかやめろ!」

 話を聞いていたのかわからないが、白銀アスカさんは俺の隣の席に座る。

 その横顔は教室の窓から差し込む朝日によって眩く輝いていて、まるで太陽のようだった。

 俺が中学生の時。親たちが夢を追いかけていて絶望していた頃。彼女はよくテレビに出ていた。俺と同い年なのに一生懸命歌い踊り活躍している彼女を見ていると落ち込んだ気持ちが晴れ、未来へ進もうと励まされた。

 だから、いつかお礼を言いたい。そんな事を昔から持っていた。

 (だけど、そんな事言えないよなぁ……)

 白銀アスカは今はあまりテレビには出ていない。

 公式には学業を優先として芸能活動を減らしているというが、それは違う。

 妹さんが重病らしく、大手を振って芸能活動をできていない。

 というより、妹さんが入院したタイミングで週刊誌に家族が病気になっているのにアイドル活動をしている女としてバッシングされてしまったのだ。

 ただ、妹さんは姉がアイドルとしてファンのみんなに元気を与えている事が誇らしかったらしく、妹本人も姉の芸能活動を望んでいる。だが、この話はファンの間で伝えられているも、世間の多くには拡められていない。

 だから、俺はいつも心のなかで彼女を応援している。

「はあ〜、人はそれを恋と呼ぶんだゾー」

「お前を見ているとはっきりわかんだね」

と友人が何かを勘違いして茶々を入れてきた。

「うるせ。ってか授業始まるぞ」

こうして、俺の日常は過ぎていく。

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