第40話 中立派の過去②
*本話はライルの父ルドルフ視点です。
(本話は残虐な描写が含まれます。出来得る限り話に支障が出ない程度に、省いているつもりではありますが、苦手な方はご注意ください。)
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貴族派や王族派は我々には手を出してこない。そんな保証はどこにもない。だが、確信めいたものが私にはあった。
私達から思うがまま搾取し、一方的な暴力を与えてきた。そして、ついには一部貴族の離反まで果たした。
だが、彼らは直接的な例えば、軍を動かすような手段には一度も出ていない。それは、己の労力や資金を出し渋っているからだ。そして、一番は私たち、中立派が勝手に空中分解したという名目が欲しいのであろう。なにせ、それは我侯爵家の言い分が間違っており支持を得ることが出来なかったと知らしめる行為になるからだ。
つまりは、彼らは欲張りすぎたのだ。すべてがうまくいきすぎて、最後まで自分たちの思い通りに物事が上手くいくと錯覚させられている。
だからこそ、いま!今動くことに、最大限の意味がある!!そう、計らずも意味が生まれてしまったのだ。例え、それが粛清などという望まぬ手段であろうと、私は侯爵として、中立派の頭目として動かねばならない。それが、中立派への抑圧を止めることが出来なかった私の責務なのだ。
とはいえ、貴族派や王族派も私たちが手をこまねけば、余計な介入をしてこないとも限らない。だからこそ、奴らに考える余裕を与えないほどに、一挙に息の根を止めねばならなかった。
よって、私は、離反したそれぞれの貴族に向けて早急に軍を差し向けることとした。それも、途中の街や砦にわき目を振らせず、各領都に向けて一直線に侵攻をさせた。今回の目標はあくまでも、早急に離反した貴族を討ち取ること。余計な事象に時間を割く必要はない。
さすがに、離反したというだけあって、道中にて軍が待ち構えてはいたが、練度が違う。端から勝負になどならないのだ。指揮官を早急に討ち取って、離反。討ち取って、離反。その繰り返しであった。
そんな調子で、想定よりも早く、そして大した困難もなく、離反した貴族たちの領都をすべて陥落させることが出来たと連絡が入った。
そして、その離反した貴族たちが捕縛され目の前に、膝を屈して並んでいる。
「どうか!!お許しを!!」
「すべてを差し出しますのでどうか!!」
「侯爵様!!ご慈悲を!!どうかご慈悲を!!」
目の前にいるのは、何も貴族の当主だけではない。その妻子、そして親族が目の前に並んでいる。すすり泣く声、どうか助けてもらおうと私に懇願する声。それらの恐怖を伝える音が場一帯を支配していた。
「私の親愛なる配下の貴族の諸君、よくぞ集まってくれた。ルドルフ・ルードリッヒ侯爵である。諸君らに集まってもらったのは、愚かにも私へとその刃を向けたものたちの末路を示すためである。今日は存分に目に焼き付けて帰ってほしい。では始めろ。」
処刑を始めるようにと号令を出したわけであるが、なにも処刑人にだけ言ったわけではない。まだ離反していない貴族を領都に呼び集めた彼らを脅すための言葉でもあったのだ。
私が号令を出すと、あたりが一層、悲痛な声で満ちた。子供を助けるように懇願する声、その親に泣き叫び助けを求める声、ただひたすらに泣き叫ぶ声など、様々だ。そんな、声も今となっては意味をもたず、処刑のための場が整えられていく。
「ルドルフ様!!どうか、お考え直しください。」
「私からもどうかお願いいたします。」
妻のミレイ、カミーレの2人が私に異議を申し立ててきた。
「正気で、正気で言っているのか。離反したものたちを許せと!!そう言っているのか!!」
「どうか、どうか、ご再考を。」
ある意味、正論だ。だが、もう遅いのだ。いま、曲げればそれは私は甘さを見せることとなる。そして、それはまた新たな離反を生む。もう同じことを繰り返さないためにもいま、甘さを見せるわけには行かない。
それに何よりも、私だってこんなことはしたくないのに、よりにもよって実の妻がそのようなことをのたまうものだから、沸々と怒りが湧いてきた。
(私が本当に心から望んでやっていると本当に思っているのか。)
「もういい。連れていけ!!」
突然の事態からか、だれも動けないでいる。だが、今となってはさらにそれが私の怒りを搔き立てる。
「早く連れていけ!!」
兵士が2人の妻の肩を持ち、嫌がる妻たちを無理やり連行していく。
「いや!!はなして!!」「ルドルフ様!!話を聞いてください!!」
「牢につっこんでおけ!!」
さすがに、2人の血縁関係にある貴族もいるので、下手なことは出来ない。ここら辺が落としどころであろう。
念のため、2人の出身の家のものに、アイコンタクトをとり問題ないかを確認を取るが、それぞれ頷きで返答が帰ってきた。
そこからは、この処刑を止められるものは誰もおらず、迅速に執り行われた。
「ルドルフーーーーー!!貴様を私たちは絶対に許さないぞ!!絶対にだ!!!」
最後の一人まで、多くの貴族が私へと恨みをぶつけながら散っていた。だが、そんなもので恐怖に震えるほどやわではない。
それよりも、これから先、恐怖の象徴として生涯を生きていかねばならないことに、先が思いやられた。もう、私が普通に生きられることは決して訪れないだろう。
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