第25話 軍議

 この国は今、内戦状態にあるということを覚えているだろうか。王様何やってるんだかと思っていたが、実情としては王様が急死したせいで後継者争いが勃発したということらしい。我が家といい、王家といいどこも同じということか。


 だが、実情はもっと複雑だ。王族を強制的に担ぎ上げて自分がのし上がることを画策している貴族、王族の権力を保持するために王族が主体になっている王族派、王族より自分たち貴族の権力を増そうとしている貴族派、新しい政治体制へ移行しようとしている派閥にわかれ現在争っている。また、日和見している貴族もいるようである。


 普通は王様が急死しても、ここまでの内乱が起こることは歴史的にもあり得ない。ここまでのことが起きたのは、王様の度重なる失態にあるようだ。飢饉や他国との戦争での敗北などが続いたのだ。また、特定の貴族を贔屓して内政を腐敗させ、戦争時や飢饉時の対応が十分にできなかったことも王様へのマイナス評価に拍車をかけたのだ。というのも、国全体で対応しなかければならなかったのに、前王の時代ですでに国で分裂していたということが要因として大きかった。


 前体勢は王族派、貴族派、中立派の主に3つに別れていたが、特に王様に権力が集中していたためにこのようなことが起きてしまった。また、こういう時にそれを止める役割が貴族派、中立派にはあったのだが、貴族派が止めるのではなく王様にすり寄ったのだ。自分たちに権益をもっとよこせと。そして、不幸なことに前王は愚王にも関わらず人の欲を制御するのだけはうまかったのだ。


 ここで、中立派は国を守るために唯一声を上げたがとことん冷遇された。中立派は王族派と貴族派に徹底的に苛め抜かれたのだ。戦争時にも、下手に功績を挙げられ勢力を盛り返されると困るということで、自由にさせてもらえなかった。反抗しようにも、力を削がれどうしようもなかった。そんな時に王様の急死の連絡が入ったのだ。はらわたが煮えくり返る思いであった中立派はこれを好機として、離反した。現体制をぶち壊すために。


 さらに、貴族派も自分たちの権益をより増すために王族をまつり上げ、自分の国を作ろうとする貴族まで出てくる始末なのだ。ゆえに、とにかく今の時代は暗黒時代と言えよう。


 あと、ちなみに我が家は元中立派の筆頭だ。王国への反逆者だ。失敗すれば即処刑される立場にあるわけだ。そりゃ、父のアドルフも表情が変わらないような男になるわけだ。それは元かもしれないが、苦労人なのは間違いない。


 そして、その反逆者の筆頭たちが目の前にいる。侯爵のアドルフ、第3師団長のシュバルツ、第2師団長のキュアノス、そしてカインだ。キュアノスは初めて会ったが、水色の髪が特徴の柔和な顔をした男だ。剣を両脇に2本下げているが、2刀流か?あと、カインやっぱりいるのか。やっほ~みたいな感じで手を振ってきたが、このメンツの中で振り返せるわけがない。見て見ぬふりをした。ちなみ、私はいないがそれぞれに2人が後ろに控えている。カインの2人は護衛として、団長たちの後ろにいるのは副団長であろうか。あと、やっぱりカインは王族のひとりであったようだ。


「では、軍議を始める。まずは、砦の状況報告を。シュバルツ。」


 父のアドルフが開始の宣言をした。


「砦の兵士の死者300名、負傷者100名、残存兵力300名で大損害じゃの。直轄の精鋭を連れて砦外の森を捜索したところ、ダンジョンを発見した。入口付近に岩が散乱し、意図的に塞いでいたかのような形跡もあった。意図的なスタンピードと判断してよかろうて。」


 やはり、そうであったか。帰ってから調べたが、スタンピードの主な原因として、異常繁殖と、魔王格のモンスターの出現、最後にダンジョンを封鎖することがある。ダンジョンを封鎖することは今は禁忌とされている。学説としては、ダンジョン内の魔力の逃げ場がなくなり、過剰なモンスターの発生を促進するからということらしい。


「ですが、なぜ気づけなかったのでしょうか。冒険者ギルドが一定頻度で調査をしているはずですが。いや、まさか、そんなことが。」


 キュアノス団長、本当にそうなんだよな。そうならないような冒険者ギルドという組織があるんだよな。そう国のね。


「そのまさかじゃよ。冒険者ギルドも取り込まれておったわい。モンスターと人の争いを分けて考えていたから、完全にしてやられたというところかの。拷問して、見せしめに処刑してやったわい。すでに領内の職員のトップはこちらの人員に挿げ替えているから問題ない。」


 うちの領土内の組織までに干渉されていたのか。他の組織の内部までに食い込んでないかも気になるな。


「しかし、隣領のブルシュベット侯爵にそこまでのことを考え実行するだけの才覚などみじんもないと思うのだが。あるのは欲だけよ。なにか、情報はないのか。」


 ルドルフがそう言い、皆を見回すが視線を逸らすばかりで答えられるものがいなかった。


「無理をいった。しかし、私も隣の領の策略なのは間違いないとかんがえる。敵の姿が見えないのは実に気持ち悪い。最優先で調査せよ。カイン様、ロベーヌ伯爵家の状況報告をお願いします。」


 どうやら、カインは我領土が責められている最中に安全を取って、元中立派で次に大きな勢力のロベーヌ伯爵に預けられていたのだ。我が家と同じく冷遇され力を削がれていたので、現状を知りたいというところだろう。


「やっと、私に回ってきたね。待っていたよ。」


 このメンツを前にしてニコニコしながら言えるカイン様すごいな。さすがは王族というべきか。


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