第24話 父という男

 昨晩はカインという男にひどく混乱されられたが、今日という日も衝撃的な1日になりそうなことを予感せざるをえない。


 というのも、私の父が今日、帰って来るとの連絡が来たからだ。父の名前はアドルフ。アドルフ・ルードリッヒ侯爵である。アドルフという男は領内な第1から第3になる師団のうちの第1師団の団長を務めている男だ。ちなみに、組織図としては、侯爵が第1から第3のトップに立っており、あくまでも直接の手足が第一師団とのことだ。たしかに、有能な部下がいれば兵を振り分けた方が指揮が楽だろう。


 また、当時は聞くことができなかったが、シュバルツ団長がなぜ私の家庭教師を務めていたのか聞く事にした。ちなみに、シュバルツ団長は今は家庭教師どころではなく後処理に追われているようだ。そのため、戦術の教師は空席だ。


「シュバルツ団長、今よろしいでしょうか。」


「一体、なんだ?忙しいのが見てわからんのか小僧が。要件があるなら早くしろ。」


 老骨に鞭打って働いているのか、顔に隈もあり疲労感がひしひしと伝わっくてる。そして実に不機嫌である。


「では、1つだけお聞きしたいですが、なぜ隣領との戦いの最中で私の教師をお勤めになっていたのでしょうか。砦へのモンスターの襲撃といい、実に不可解なことが多い気がするのです。」


「一応、軍事機密なのだが、済んだことだし小僧ならば良いであろう。それは隣領の動きが不可解なものであったからだ。そのために、何が起こっても柔軟に対応できるように秘密裏に私が領都に戻ったというわけだ。まあ、教師は隠れ蓑にちょうど良かったというだけだ。だが、想定外のことも起こった。今回の戦いは、急を要するもので本当は付近から民兵をかき集める手はずだったのに直属の兵士のみで対応するしかなかった。まあ、そんなどころよ。」


「流石はシュバルツ団長です。」


 点と点がつながった。なぜ、シュバルツ団長が私の家庭教師を正体を明かさずに務めていたのかずっと疑問だったのだ。


「ヌッハハ!なーに、すべてはアドルフ様の指示よ。まあ、家庭教師は儂の気まぐれだがの。まだ、使いものになるとは思えぬがな。用が済んだらさっさと帰れ!邪魔だ!」


 首根っこを掴まれ、放り投げるように私は追い出された。これでも私は嫡男なのだが。まあ、それだけ団長という立場は大きく、私が後継者ではないということが大きいということだろう。


 ふと外に耳をやるとやけに騒がしい。歓声のようなそんな声が聞こえる気がする。ついに帰って来たか。私は邸宅の門へと急いだ。父か。私は会って一体何を思うのか。母と同じ親愛だろうか。


 邸宅の門まで行くと、使用人を始め、母、兄、そして兄の母親だろうか。金髪で少しきつめの顔でキツネに近い印象を受ける。そんな義母を観察していると、あちらも気付いたのかこちらを見てきつく睨まれた。息子の競争相手だからかひどく嫌われたものだ。母といい義母といい、きつめな女性が父はお好みなのだろうか。母は見た目だけな気がするが。


 そうこうしていると、門が開かれ馬に乗った集団が入ってきた。記憶にはないがわかる。先頭に立つ男、あれが父だ。父見ると手が小刻みに震えた。同じ親でも抱く感情は違ったか。前のライルが抱いていた感情は畏怖だ。父のアドルフは一体どのような男なのだろうか。


 ふと、兄のベルゲンを見ると、うつむき顔を真っ青にしていることが分かった。また、母や義母にも目をやると顔や体を強張らせて同じように目線を下にやっているようであった。まるで視線を合わせるのを避けるかのように。


 ここまであからさまだと、逆に笑えてくる。完全に家族崩壊してやがる。アドルフがそれほど恐ろしい人間だということか。


 馬から降りるとアドルフはそのギョロッとした目で私でたち家族に順に目線をやった。そして、確実に私でその目線は止まった。すぐに視線は外れた確実に止まった。いや、一人だけうつむかず視線をやっていればそりゃ凝視するか。


 アドルフは私やベルゲンとはあまり似ていない印象を受けた。アドルフの髪や瞳は赤く、髭をはやしていた。だが、特徴的なのはその感情の読め無さだろう。表情が全く変わらず、そのギョロッした目で見られれば萎縮せずにはいられない。まあ、それだけが恐れられる理由ではない気がするが。


 アドルフは私たち家族を一瞥したかと思うと、抑揚のない声で淡々と指示を出した。


「1時間後、軍議を行う。シュバルツ団長もすぐに招集しろ。それとカイン様もおいでになっていると聞いたが相違ないか。」


「かしこまりました。相違ありません。」


 執事が父の対応をしていた。てか、すごいよ。普通に対応している。流石、プロというべきか。いや、若干だが強張っているか。


「カイン様にも参加してもらえるように声をかけよ。」


「かしこまりました。」


 かわいそうに。こんなの何が何でも参加してもらえというのと同義だろう。執事には同情するよ。


 アドルフはそのまま館へと足を進めた。アドルフの背後には、7人ほど控え、共に足を進めた。そのまま、館へと入ってゆくのかと思われたが、父は突如止まった。


「ライル。お前も軍議に参加するように。」


 アドルフは背を向けた状態で、脈絡もなく私にそう告げるのであった。


「か、かしこまりました。」


 そう返事をするのがやっとのことであったのは、もはやしょうがないであろう。先の戦いの武功が耳に入ったか、それとも唯一目線があったことの興味本位か。どちらにせよ、これはチャンスだ。


 アドルフは私の返事を確認するとまた、歩き出し館へと向かって言った。兄のベルゲンが先程の青白い顔を一転して紅潮した顔で睨んできた。なんとも顔の騒がしいやつだ。


 それにしても、結局、アドルフは他の家族とは一言も会話なしか。一体、どうなっているのやら。


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