第20話 目覚め
「はっっぅ!!!!!」
「ライル様!!」「ライル様!!」
ルイスに、トールか。寝起きに何とも騒がしい。流石に視界はぼやつくが、お陰で一気に目が覚めた。
「ライル様、うなされていらしたようですが、ご加減はいかがでしょうか。3日も目を覚まさぬものですから、心配いたしました。」
「あぁ、トール、心配いらない。少し悪い夢を見ていただけだよ。それよりも喉が渇いた。飲ませてくれるか。」
ふと、自分の体に意識をやるとひどい汗でびょっしょりと服が濡れていることがわかった。また、筋肉痛のためか、魔力回路が傷ついたためか、体中がひどく痛み、指1本動かすのさえ、ひどく億劫に感じる。
それにしても、3日か。また、長く寝たものだ。
「ライル様。私が水を飲ませるのです。」
「ありがとう。」
私の状態を察してか、ルイスが私に水をその手で飲ませてくれた。
改めて、2人を見ると2人とも怪我をしているようであった。トールは体中に包帯を巻き、左腕を骨折でもしたのか、肩から垂らしたものに腕を通していた。ルイスも私とトールが離脱したあとに、戦線に加わったのかあちこち怪我をしており、包帯を巻き付けていた。
「2人ともよく、最後まで私の護衛を勤め上げ、砦を守っててくれた。2人がいなければ、今、私はここにはいないであろう。深く感謝する。特にトール。よくぞ、身を挺してまで私を守ってくれた。」
「いえ、私達はそれぞれの勤めを果たしたに過ぎませぬ。」
だが、本当に2人がいなければ命はなかっただろう。何か褒美を考えねばならないだろう。
「トール、砦はどうなった。」
「ライル様、砦を私達は守り抜くことができました。しかし、こちらの被害も甚大でありました。」
そうか。砦は落ちなかったか。あの戦いで、散らしていった命は無駄にはならなかったか。
「共に後ろの民たちを守った英雄たちに深く感謝しなくてはならないな。残された家族たちが、生活していけるように私からも父上に掛け合ってみよう。」
「私からもお願い致します。」
父上になど会ったことなどないが、やるだけやってみよう。これだけで、心象が良くなるのならば安いものだ。
「私が気を失ったその後のことを教えてくれ。」
「はっ!私も聞いた話なのですが、ライル様がミノタウロスを討たれるとほぼ同時に左壁・中央のミノタウロスはシュバルツ団長・アルキス兵長により討ち取られました。
その後も、烏合の衆と化したモンスターの攻撃はその後も半日続きました。しかし、先程お伝えした通り、最後まで守り抜くことができたそうです。」
シュバルツ団長は当たり前としてアルキス兵長か。砦の元の責任者か。砦の兵数を半数を損壊させても、敗走させず持ちこたえたと聞いていた。きっと、私とは違い大した怪我もすることなく討ち取ったのであろう。
しばらく、私はあのミノタウロスとの激戦や、己の成長を思い出しながら目をつむり物思いにふけった。
「ほら、トール、早く言うのです。」
「し、しかし、、」
「もう、いいですよ!ライル様。トールがライル様に謝りたいことがあるみたいなのです!」
トールが??これだけ渋るということは余程のことなのか。それとも、ルイスが急かすあたり、それほどのことではないのか??
「ライル様。私はライル様に深い負い目があるのです。私は途中でそれに気づきましたが、それをそのままにしてきました。己の都合のために。
知っていますか。砦の戦場であなたがどのような目で見られていたかを。知っていますか。あなたが砦の兵士たちに何と思われてきたのかを。」
たしかに、トールの口調はこの6ヶ月の間に少しずつ丁寧なものになってきた。また、その態度も私を立てるものになってきていた。先生だから前のままでいいのだと言い聞かせてもだ。
その負い目とは余程のものなのか。だが、全くと言っていいほど心あたりがないのだ。
「私には分からぬ。トール、申してみよ。」
トールは静かに息をのみ、その額にじんわりと出る汗からも、その負い目がいかほどのものなのかが伺える。
「はい。」
トールは床にまるで懺悔するごとく両膝を付けた。そして、息を「すーーっ」とこちらにも聞こえるほどの勢いで吸い込んだあとに、言葉を続けた。
「あなたは戦場で【混ざりもの】などと呼ばれております。これは!この呼び名は私の責任であります。どうか、お許しを。」
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