第13話 戦いの幕開け
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シュバルツ率いるライル総勢約300の一団は馬を走らせ、砦に急いだ。とはいえ、それぞれが鎧、武器を身にまといその重さは馬に多くの負担をかけた。早く走ればそれは馬を潰し、遅すぎれば砦の援軍が遅れることとなる。シュバルツを先頭にその絶妙な速度で馬を走らせた。速度は悪魔のような囁きで行軍するものたちを魅惑する。しかし、それを堪えギリギリの速度を見極め行軍するシュバルツがいかに歴戦の将軍であるかを指し示すものであった。
一方でライルは、胃の中のものをすべて吐き出しそうな思いで、いまだ拙い技術で馬を走らせ必死に食らいついていた。というのも、出陣前の数々の発言を強く後悔するとともに、これからの戦いに多くの不安と恐怖を抱き胸を締め付けられるような思いであったためだ。
(なぜ、命を懸けるなどと言ってしまったのだろうか。なぜ、出陣するなどと言ってしまったのだろうか。)
私は、初めは一兵士として参加するつもりではなかったのだ。私は、軍をまとめる立場として援軍に向かいできる限り、後方にいるつもりであったのだ。それなのに、シュバルツ団長のせいで一兵士として参加をせざるを得なくなってしまった。
そして、私はシュバルツ男爵の凄まじいという表現では足りないほどの矛を受け止めたときに、大量に出たアドレナリンのせいか超興奮状態にいたりつい、命を懸け出陣すると言ってしまったのだ。まったくもって、突然のことにあのようにするしか他に手はなかったとは思うが、迂闊な自分を恥じるばかりである。どうしても、他に手はなかったのだろうかと思わずにはいられないのはしょうがないだろう。
そんなことを、考えるうちに日は沈みかけ、砦が視界に入るまできた。その砦からまだ落城ののろしが出ていないことからも間に合ったことがわかり、「間に合った」という声がそこら中から聞こえてきた。周りの兵士からは、一兵士の扱いとはいえ、侯爵の嫡男という境遇から若干の距離を置かれているのは悲しい限りである。
そんなことを考えながら砦に到着し、砦の見張り台の者とのいくつかの問答の後に「開門!!」という声とともに砦入りをするのであった。
砦の中に入り、まず、目に入ったのは怪我をしてうめき声をあげながら寝かされる男たちであった。その男たちの手当をするためにも見るからに非戦闘員である子供や女性、男性が深刻で暗い顔つきでせわしなく動きまわっていた。この砦の戦いがどれだけ壮絶なものであったかをそれは告げているのがわかる。
そんなことを、考えていると当たりが次第にざわつき始めた。ふと、耳をやると「シュバルツ団長じゃないか??」といっているのがわかった。次第にあたりに人が集まり始めた。その間を通って、「シュバルツ団長!!よくぞお越しくださいました。」と兵士を2人引きつれ、ひどく疲れて隈もひどい顔をした責任者らしい男が出てきた。その発言で、人びとがシュバルツ団長であることを認識し、よりざわめつかせた。
「このシュバルツ!!砦の救援のために総勢200余名救援に参った。」
本人が明言したこともあって、確信したのか「シュバルツ団長がきてくれた!」とぽつりぽつりとはっきりと大きな聞こえ始め、それは瞬く間に広がり、もはや歓声と呼ぶにふさわしいものとなり、砦外にも響きわたるものになった。中には、泣き崩れ感謝をするものまで大勢でたほどだ。それは援軍をどれだけ待ち望んでいたのか、シュバルツ団長がこの領でどれだけの存在であるかを暗示するものであった。
「すぐさま状況を知りたい!状況報告を!」
そんな、喧騒下にあっても、シュバルツの声は不思議とよく響いた。シュバルツの邪魔をしてはならぬと思いいたったのか、皆が声を必死で押し殺すように辺りの喧騒は一瞬で静まりかえった。
「は!!砦責任者、アルキスと申します。この2日間の度重なる襲撃にて、兵士400名中、約200名が戦闘不能であります。現在、小規模な襲撃のため残る200を3つに分け、うち2班の約140名ずつで対魔物戦に対応しておりました。」
一般的に軍は3割の損害にて敗北と言われるが、5割損害とはもはやこの砦がいかに危うい状況であったかがわかる。どれだけ砦内の人間が追い込まれていたかが想像に難くない。
「アルキス。よくぞ耐えてくれた。砦にいた200名にかわり、明日の日の出まで援軍にきた我らが防衛をかわるものとする。アルキスは砦にいる兵士200名に日の出まで十分な休憩を取れるように指示せよ。そのあとはお主もゆっくり休むとよい。しかし、夜間の襲撃状況によっては招集するので覚悟するように。」
「は!!お任せください。」
胸に手を当てて敬礼後に、アルキスは迅速に指示を出し動きだした。我々300のシュバルツ率いる兵士も砦上部にいる兵士たちと入れ替わるように、配置につきはじめた。班を3つに分け、順次休憩をとるとの指令が下った。この時、ライルについてきたルイスやトールも同じ班に割り振られた。
しかし、最初は兵士300すべてを配置するとのことであった。なんでも、先ほどの歓声に夜行性の魔物が集まる恐れがあるとのことであった。初の戦闘に心が静まらず、顔色の悪い私のもとまでシュバルツはきた。
「ライルよ。アドバイスをさずけよう。ひとつ!夜明けまでは死なぬことだけをを考えよ。ふたつ!明日の夜明けからの本命の魔物の攻撃に備えて力をだしきらぬようにせよ。本番は明日からだ!最後に!!!まずは戦いを肌で感じ慣れ、仲間たちを信じて戦え!!この300名は我が誇る最高の兵士たちである!!」
私はそんな、アドバイスに聞きいったが、妙に響き渡る声でアドバイスをするシュバルツ団長にそれは軍全体への檄であることに気づいた。私は、アドバイスより檄を飛ばすためのだしに使われたことに苦笑し、シュバルツの狙いか定かではないが、緊張がいくらかほぐれるのがわかった。それと同時に、兵士たち一人一人が笑みをこぼし、軍全体の士気も上がっているのが良く分かった。この妙に人心を動かす力があるところが、シュバルツ団長のすごさだろう。
だが、そんなアドバイスにトールやルイスという実に頼もしい2人がついていることに気づかされるのであった。2人には教師ではなく、護衛としてついてきてもらったのである。これは母様も強く希望し、私はただの兵士として扱われるが、護衛はつけるのは自由であろうとのことで2人は護衛に収まったためだ。
「トール、ルイス、二人に未だ並ぶことのない未熟ものだが、少しは2人を守れるように頑張ろう。最後に、私は2人を心から信じているよ。」
そんな、2人をみやると、普段言わないような言葉に慌てているのがわかった。ちなみに、今は2人は護衛の扱いなので先生はおかしいとのことで呼びすてである。
「では、期待させていただきます。」「私はルイス様のこと、それ以上にちゃんとまもるのです!!」
トールはルイスに「当たり前だ」といい、ルイスはそれに怒るという面白い光景も見れて実に満足である。流石に半年も一緒にいると二人の実力の凄さも身に沁みてわかり、心から信頼できるものだ。
そんなことをしていると「敵襲!!」という声が響き渡った。兵士たちに緊張が走ったのがわかった。それは、終わりの見えない長い私たちの砦防衛の始まりの合図でもあった。
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