季節は巡りて

 本作は唯一の長編作品だ。ギリギリ10万文字を越えている。10年ほど構想を練り、かつ執筆中に思いついた内容を付け加えている。作者が見落としているだけで、矛盾点があるかもしれない。


 本作では大胆にも「読者への挑戦状」を取り入れている。しかし、論理的に犯人を指摘可能かは怪しい。感覚的に犯人を絞ることはできると思うが、それでは意味がない。それに、「読者への挑戦状」があるが、「ノックスの十戒」にしか対応していない。これは、犯人が2人いるからだ。本来であれば「ヴァン・ダインの二十則」に対応するのが、「読者への挑戦状」のあるべき姿だと思う。


 構想10年ということもあり、作者の本格ミステリーへの愛がギュッと詰まっている。思いつく限りのミステリー要素を詰め込んだ。読者への挑戦状に見立て殺人。クローズド・サークルに叙述トリック。


 叙述トリックは執筆中に思いついた。読者が「やられた」と感じるなら、ここだろう。登場人物の一人「蝶野夏央」は女子大学生だが、口調などでボーイッシュさを出し、男性だとミスリードしている。


 小道具にタロットカードを使っているが、本来なら別の作品で扱う予定だった。出し惜しみしなかったのは結果的に良かったと思う。


 ここまで、自画自賛ばかりしてきた。しかし、問題点も多々ある。まず、春夏秋冬の間の描写が乏しい。これは作者の力量不足だ。また、全体に言えることだが、地の文で人の性格・個性を表現できていない。キャラクターが無個性的になっている。これは今後の作品に活かさなければならない。そう言いたいが、無理だと思われるので、ショートショートがメインなのだ。


 書くのにかなり苦労したので、今後長編は書かないと思う。そもそも、長編になるほどのネタがない。ミステリーに限らず、どのジャンルでもだ。


 10点満点なら、6点くらいだろうか。「長編にしては頑張った」という甘さ込みである。

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