第4話 合成と鍛錬
魔法には四つの大属性がある。
「〈ファイア〉! 〈ウォーター〉! 〈アース〉! 〈ウィンドウ〉!」
火を司る火魔法。水を司る水魔法。土を司る土魔法。風を司る風魔法――の四大属性だ。
「わ~、すご~い」
「がうっ」
掛け声とともに、バスケットボール大のサイズのそれぞれの属性で生み出した火、水、土、風を自分の周りに浮かべさせれば、母さんが拍手と共に歓声を上げて、隣におすわりするガルガンチュアがいつものようにガウと吠える。
それから、続けて俺は魔法を唱えた。
「〈マッド〉!〈ミスト〉!〈サンダー〉!〈サンド〉!〈クラウド〉!〈マグマ〉!」
四大属性を組み合わせることによって、魔法はさらに性質を変える。水と土で泥魔法。水と火で霧魔法。火と風で雷魔法。風と土で砂魔法。水と風で空魔法。火と土で溶魔法。
同時に六つの複合属性を使用した俺に向けて、再び母さんから喝さいが飛んできた。ガルガンチュアも、真っ白な前足を上手く使って拍手している。最近、母さんから仕込まれた芸である。
「ど、どうかな?」
「すごいよユーリ! 流石、お母さんの子供だわ~!」
転生してから三か月目。母さんからたたき込まれた魔法のイロハのおかげで、ようやく使いこなせてきたところだ。
「よぉし、じゃあ行きなさいガルちゃん!」
「ガウッ!」
四大属性から複合属性四つの同時発動をお披露目したところで、今度はガルガンチュアを俺の方に襲い掛からせる母さん。
相も変わらず大口でぺろりと俺のことを平らげようとするガルガンチュアに向かって、俺は魔法を発動する――
「〈ファイアーブースト〉! 〈アイアンスキン〉!!」
火魔法〈ファイアーブースト〉によって筋力を大幅に増強し、土魔法〈アイアンスキン〉によって鋼鉄の皮膚を手にした俺は、真正面からガルガンチュアの牙を受け止める。
それから、数十秒。俺へと食らいつくガルガンチュアと、必死に抵抗する俺との勝負が拮抗した後に、更なる魔法を唱えた。
「〈マッドトラップ〉!」
「がうっ!?」
地面を泥にする泥魔法〈マッドトラップ〉をガルガンチュアの足元に使うことで踏ん張れなくし、ついには俺が押し勝った。
魔法で強化した筋力が遺憾なく発揮され、まるで相撲の押出のように森の奥へとガルガンチュアを吹き飛ばしたのである。
「わぁ~!!」
そうして、またもや母さんからの歓声を頂いた。
「つ、ついにここまで来たか……」
三か月前はただただ食べられるしかなかった俺は、ついに魔法を会得しガルガンチュアに対抗できる力を手に入れた。
これでもう、向かうところ敵はない。魔物だって怖くない!
「がうっ」
「ぎゃっ」
そう思っていたのもつかの間、ぬかるみから抜け出したガルガンチュアが再び戻って来たかと思えば、そのままの勢いで俺の体にかぶりついた。
「うぎゃぁあああああああ!!」
恐るべし魔物。油断も隙もあったものではない。
アイアンスキンの効果が残っていてくれたおかげで、なんとか傷つかなかったものの……危うく死ぬところだったぞおい……。
「まったく、油断しちゃだめよユーリ。身を守る魔法は常に発動しておくように」
「ま、魔力切れないそれ……?」
「鍛えればできます。なんたって私たちは魔人族なんですから」
「さいでっか……」
一応、ガルガンチュアの嚙みつきは甘噛みであったものの、如何せんガルガンチュアの牙は魔物のそれ。触れるだけでも危ない刃そのものであり、アイアンスキンが無ければ胴体が真っ二つになっていた可能性は高い。
もしもの事態を想像して顔を青くした俺は、母さんに言われた通り、常に身を守る魔法を発動できるように鍛錬を積むのだった――
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