第14話 過去の産物

「あらあら、かなり派手に愛し合ったのね。若いって良いわね。」

「エレナ!まさか来るなんて思わなかったよ、どうして?」

「お偉い人達から言われたのもあるけど...弟子の恋人を見るのは当然じゃない?」


身体中が悲鳴を上げている。脇腹からは血がドボドボ出ている、しかもランク4の化け物がいる。まだ戦えるが、勝てる見込みがない。あの会話で師弟関係となると、エレナって奴はかなり強いだろう。だとしてもここで死ぬわけにはいかない。


俺は必死に立ち上がり、剣を構える。だが足は震え、顔からは滝の様に汗が流れている。


「へぇ、まだ立てるなんて。相当元気な子ね」

「エレナ、私たちはこれから彼と愛し合うけどエレナもやる?」

「そうね、楽しみましょう?」


2人は狂気のような笑みを浮かべ飛んで来た。俺は魔法陣を俺の真下に構え放つ。そうして俺の周りには炎の壁が出来た。今は一呼吸入れたい所だが、それが何だと言うように突き破ってきた。


「まだ死なないでよね!!」


そう言ってエレナという奴は俺にキックをかましてきた。馬鹿だった。炎の壁を使った時点で魔力は少なく頭も動いてなく、守ることすらできなかった。そのまま吹き飛ばされ背中に感じる火傷と共に地面に転がってしまう。


「う...あ.....」


体は動かない。脳がふわふわしてきた。もしかして...いや、俺はここで死ぬんだろう。


「あらあら、一撃で死ぬなんてゴメンよ?」

「ちょっと!?殺さないでよ!!私が殺すんだから!」

「落ち着いて、彼はまだ殺さない。それにせっかく来たのよ。もっと楽しまないと。」


そうしてエレナは俺の脇腹を治し、クソ野郎とともに後ろに下がった。


「さあ?おいで?」


これが、弄ばれる。という事だろう。怖い...勝てるはずないだろ。こんな化け物2人に。

俺はさっきまでの殺意が、恐怖に変わった事が分かった。口からは歯がカチカチと鳴り、腰に力が入らなくなってしまった。


「あらあら....もしかして、来ないの?」

「なら私から!!」


クソ野郎はものすごい速度で右肩を突き刺した。肉は抉れ、剣は貫通していた。

「があああっっっ!!??」

「アハハハハ!!!可愛いなぁ!!!」


死ぬんじゃないかと錯覚する程の痛みが俺を襲う。目も集点が合わなくなって来た。


「くそ...なんで...こんな...」

「泣いちゃった...うーん!おいしい!」


これなら死んだ方がマシだ。地獄の様な痛みに耐えてもまたクソ野郎が治すんだろうな。


「あらあら泣いちゃったのね...」

「もういやだ...こんな世界...」

「はぁ....ほんとかわいいんだから...」


異世界に転生した結果がこれだ。俺は前世はただの高校生だったんだぞ。ただ勉強して、友達と遊んで。ただそれだけの人生だ。なのに...こんなのって...


「あら?貴方は誰かしら?」

「罪人よ...俺は貴様らを断罪す。」


俺はこの世界を許さない。全てを呪ってやる。何もかも。全部殺してやる。心の奥底で、マグマのように何かが煮えたぎる。


____________________


「何で貴方がいるんですか?二度と会いたく無かったのに。」

「それは私のセリフだ。」

「はぁ...これだから会いたく無かったんですよ、私と貴方は根本的に違うというのに」


まさか、こんな所で...ユスティナと会うなんて...


「何で..あのとき私を裏切った?」

「別に、どうでもいいじゃないですか?」

「どうでも良くない!!ユスティナは...私が知っているルルはそんな事をしない筈だ!」



「はぁ...撤退しましょう。」

「待て!!」


私はユスティナに氷の魔法を使い止めようとしたが、カラスのマスクをした奴らに邪魔されてしまった。

「任せましたよ。」


「くっ....ミリス、動けるかい?」

「ええ、なんとか...ですけど。」

「じゃあ片付けるよ!」


ざっと8人、とっとと倒す。そう決めて私は炎の魔法陣を左手で展開し燃やす。右手に杖を構えそのまま叩いていく。ミリスは両手に剣で素早く切っていき攻撃を交わしている。まだ後遺症があると思うのに、やはり彼は強いな。



「ひとまず、終わったか...まだ体が痺れるな」「リリーナ隊長!!」


そこに走って来ているのは伝令兵だ。相当焦っているな。


「どうかしたか?」

「撤退命令が出ました...それで、これを伝えてほしい人がいます。」

「私が?それは誰だ?」

「ランク4の...処刑者です!」


彼が来たのか...となれば今は相当苦しいだろう、とにかく行かないと。


「分かった。ミリス!君は撤退して!」

「了解...!」


____________________


俺は奴の首を刎ねるため飛び攻撃する。防がれたが左手でもう一つの武器、アラス・インダストリーで吹き飛ばす。あまりダメージは無いみたいだ。


「左手だけでそんな大きな大剣を扱うなんて、貴方人間かしら?」

「フン、せいぜい喚いていろ。貴様は今日ここで死ぬからな。」


俺はこんな人間は嫌いだ。人を弄び、傷つける。戦争だから仕方ない?それでも限度があるというものだ。


お互いに致命傷が与えることができず、剣がぶつかり合う音が響く。俺はイラつきを覚えるが実力は互角といったとこか...ここで長引くとさっきの子供が死んでしまうな。


「吹き飛べ!!」


アラス・インダストリーに炎の魔法を込めて地面に叩き込む。これは俺の武器にしか無い能力だ。そして地面には大きなクレーターができ地面は大きな焦土と化している


「まずは貴様からだ。」

「誰?私を邪魔する奴は...」


子供を殺そうとした奴に剣を振り、防がれたが少しよろめいたな。右足で奴を吹き飛ばし、アラスでトドメを刺す。まだ炎の詠唱は残っている。


「ここで...断罪す!」

「チッ、まずっ...」


勢いをつけさっきのクレーターとは比べ物にはならないぐらいの威力を出したが、俺と戦っていた奴に邪魔されたか。


「エレナ!ありがとう!!」

「ここで死なないでよね。」


内心で舌打ちをする。まだ1対1ならよかったが、ここで2対1になれば彼を助けれない。となれば俺のする行動は逃げる事だ。


剣とアラスを収め、傷ついた彼を脇腹で抱え走る。当然だが敵は追ってくる。


「逃すわけないでしょ?」


スピードは勝っているが奴らは魔法と飛ばし邪魔してくる。今は避けれるが狙いが的確でいつ当たってもおかしくは無い。そう不安になっていると、上空に人がいるのが見えた。

「ようやく見つけましたよ!処刑者!」


あれは...リリーナか?


ソルーシャは俺の後ろに氷の壁を作り奴らを追えない様にした。そして俺の近くに近かずきこう言った。


「撤退命令が出ました!」

「なるほど...了解した。」


どうやら、だいぶ押されているな。今回も負け試合にならなければいいが。それと、彼は大丈夫だろうか?

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