第11話 理解不可能

「皆んな、よく集まってくれた。」

俺、クラウス・ジャンビルは次の作戦。フリ・エモーション地方を攻め入るための会議をしている。


「またかよ、次は何処だよ?」

「フリ・エモーション地方だ。」

「けっ!あの山脈地方をかよ!これまたキツイ戦いになりそうだな。メンドくさっ!」


文句を言っている人物はバリウス・ルル。やる奴なんだが...まぁめんどくさがり屋だ。


「そうメンドくさがらないで下さいよ。あの山脈地方を攻めたら流石に休みはでますよね?そろそろ体力が持たないですよ。」


今喋っている女性はキリシマ・ミサキ。彼女は剣の使い方がとても良い。上官の俺でも一度教えてもらったぐらいだ。


「ああ、この作戦が終わったら休暇を取るように説得した。それと、一つ言う事がある。」

「おお?太っ腹だな!」

「それで?言う事とは?」


「どうもー!ヘル・リバルンドです!」

「はぁ!?」

「え...うそでしょう!?」


ヘル・リバルンド...悪名高い彼女がこの部隊に入るとは。上の奴らは何を考えているんだか...もちろんと言ったとこか、2人は嫌な顔をしている。


「何でヘルがいるんですか!?」

「そうだ!あのイカれ野郎が!?」

「上から言われたんだ、我慢してくれ...」 


小声で文句を言ってくる...彼女が何故あんなに嫌がられてるか、その理由を説明しよう。元々彼女はかなりの犯罪者だった。その罪を無くすために軍に入ったという噂がある。殺しを楽しんで、女子供関係なく殺していくことから『オーガス直属の殺し屋』とも言われている。


「これから少ない間だけどよろしくね!」

「そう言う事だ、皆挨拶を。」

「あー...バリウスだ。よろしく...」

「キリシマ、えっと...よろしく。」


はぁ...空気が重いな...


____________________



「フリ・エモーション...ですか。」

次の戦いの場所はあの山脈地方、フリ・エモーションだった。あそこは守りは頑丈だし、楽に勝てる戦いだとは思う。とは言っても、戦いに駆り出されるのは嫌だが...


「戦い自体は別に良いんだ。私もカイルくんも出るし。ただ、気掛かりなのはレインくんだ。またあの時みたいに放心状態になったら死ぬかもしれない。」


確かにな、アイツは強いが俺が助けに行かなかったたら死んでいたかも知れないからな。


「そこで彼には戦場で強い奴が来たら戦う。という方針で行こうと思う。あと、君はレインくんと一緒に戦って欲しい。」

「え?俺がですか?戦うのは...」


「誰かしら知っている人がいたら戦いやすい物だろう?それに、きみは結構強い部類だと思うんだけど?」


強いねぇ...まぁ、生まれた地がそうだったせいで次第にそうなったのかもな。


「リリーナ隊長のお墨付きなら、やってやりますよ。」


____________________


「ここがフリ・エモーションか。」

「へぇ?結構綺麗な場所だな?」

「ここで戦うのも躊躇うぐらいですね。はぁ

早く戦争終われば良いのに...」


作戦が決行される日となり、フリ・エモーション地方に着いたが、思った以上に風景が綺麗だ。と言っても、血と死体で台無しになるのは目に見える。そういえば、ヘルはどうしたんだ?少し周りを見渡して彼女を見つけたが...


「ふんふんふん、ふふ〜ん!」


剣を研いでいた。だが顔がずっとニヤけている。これから地獄が始まるというのに。まるで旅行気分だ。少し背筋が冷えたような気がする...そんな俺に気づいたのか、2人が俺の視線を追って俺と同じ顔をした。


「...とりあえず、今は作戦に集中しましょう」

「何だよアイツ...キチガイかぁ...?」

「そう言えば、あの噂を聞いたか?」


俺は空気を切り替える為に、あの噂を話す事にした。いつまでもこの空気感は味わいたくないしな。


「噂?何ですか?」

「せめて、マシなのにしろよ...」

「ルルンドに危険対象とされた人物がいただろう?泣きながら、物凄い魔力を秘めた奴だと聞いたが...」


危険対象とは?戦場でそこそこ強い奴がいたら危険対象とされ、マークされる。その分類は4つまであり数字で分類される。それと、これはあまりない事だが、4のランクにされた奴は必ず異名がつけられる。ただ単に分かりやすいようにしてるだけだと思うが。


「ああ、最近付けられたやつ、だがまだ1だろ?なららくしょ...」

「私、彼の事分かるよ。」


この発言をしたのはヘルだった。まさか話に入ってくるとは思わなかったが...


「えっと...どうゆう者なんですか?」


最初に発言したのはキリシマだった。だが、のちにキリシマは後悔するだろう。ヘルが話す内容の狂気性を。


「彼はね、私の初恋の人なんだ。」

「は...初恋?仮にも敵ですよね?」

「ロマンチックじゃない?」

「ロマンチックって...」

「最初はね、右足を叩き切って、ああただの雑魚かなって思ってたの。私に攻撃しようとしたらマッチ一本分の炎しか出なかったの。けどね、彼が私の事を本気で殺すって思ったら、物凄く強くなったの。」


「うげ..イカれてんな、本物のキチガイかよ」

「私は気づいたの。ああ、これが運命だって。私と彼は殺し合う運命で、永遠に愛し合う宿命なんだって。」

「なん...ですか....それ?」


バリウスの言う通りだ。コイツはイカれている。俺たちには到底理解出来ない物だろう。バリウスは顔を顰めていて、キリシマは顔色が悪くなっている。本当に、上はとんでもない物を持ってきたな。


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