第10話 決意
あの戦いから数日、俺はレインの様子を見てはいるんだが...一向に目覚める気がしない。ただ、その顔からは恐怖しているような顔をしていた。
「え〜と...ミリスくん、だっけ?」
「はい、ミリスです」
後ろから足音が聞こえ、その人はリリーナ中佐だった。あの人も撤退の時戦ったのに傷はあまり無いように見える。
「レインくんはどうだい?」
「さあ...一向に目覚めないので。」
「うーむ...レインくんには戦って欲しいが、もう心がぼろぼろだろうな。」
おそらく俺とリリーナ中佐はレインの力を知っているだろう。レインは心が傷付けば傷つくほど強くなる。魔法は感情によって変わると言うが、ここまでとは聞いたことがない。
「とにかくレインくんの調子を見れてよかった。ミリスくん、レインくんの事頼んだよ」
「了解しました。」
そう言ってリリーナ中佐は医務室を去った。リリーナ中佐もやる事が多いんだろうな。
「レイン...どうか起きてくれ。」
レインは俺の唯一の友だちなんだ。もう気軽に話せる奴なんていないんだ...
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「そうか...あのバカが...」
リリーナから聞かされた言葉を疑った。グリムが?あの筋肉バカが?
「ごめん、もっと早くいけば...」
「いや、良いですよ。どうせあのバカはどうにかして生きてるでしょうし。」
そうじゃなきゃ僕は一生奴に負けたままだ。
子供の頃僕は大人の闇を知った。大人どもは戦争が金になると知って色んな事をした。俺の家族もそうだ。僕が戦争で役に立つ為に、剣の使い方や魔法の勉強。色んな事をさせられた。
そんな欲に塗れたヤツらが嫌いだった。そうして俺は大人になり、戦争に参加された。そんな時に会ったのがグリムだった。
「お前、俺と戦え!」
「はぁ?僕と?」
僕を知らないのかと言ったが知っててなお勝負しようと思ったらしい。本物のバカかと思って適当にあしらおうと思ったが、負けたんだ。信じられなかった。
そうして僕はヤツに勝つ為に何度も戦った。そして次第にアイツは僕のライバルとなった。少なくともあの大人どもとは違うから嫌いとは思わなった。
「今日も勝負するぞ、グリム!」
「ああ!望む所だぜ!」
アイツは...生きてるはずなんだ。
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数日後...
「・・・」
体が痛い...俺は...何をしている?グリムさんが拐われた時は俺は何をしていたんだ...何寝てたんだ俺は...!!
俺は力があるんだ、それを使わないでどうするんだよ!
「クソ...何をしてたんだ俺は...」
「レイン?起きてたのか」
ずっと自己嫌悪に至ってた時、気づかないうちにミリスがいた。
「その...どうだ?調子は?」
「まぁ...普通だよ...」
「そんな訳ないだろ」
あんまり心配はかけたくないけど、ミリスにはバレてしまうか、これでも長年の付き合いだからだろうか...
「お前は辛い事がありすぎたんだ、俺にできる事があったら何でも言ってくれ」
「そう...ありがとう。」
ミリスに迷惑はかけたくないし、この罪は俺が背負っていかないといけないんだ。俺はこの先、何人もの人を殺すだろう。何百、何千もの人を...
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「え?俺がですか?」
「ああ、君だよ。」
ある日信じられない事をリリーナ中佐が言って来た。
「君をカンヘル部隊を入隊する事を許可する」
カンヘル部隊はこの国でもかなり名を馳せている部隊だ。ただの一般兵の俺を?当然俺は理由を聞いた。
「何故俺が?言ってしまえば戦うのはあまり得意ではないですよ」
「まぁ、レイン君のカウンセラーとなって欲しいだけなんだ、こんな理由で入隊させるのは申し訳ないが...」
リリーナ中佐が気難しい表情をしている。でも、アイツの助けになるならそれでいい。それにカンヘル部隊に入れば色々出来るしな。
「分かりました、こっちで入隊手続きをして来ます」
「助かるよ。実を言えば上はレインくんの事をこき使うらしいんだ。それで彼の心の助けになって欲しい。」
「ええ、いくらでもやりますよ」
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