第9話 また強くなってしまった

遠くで声が聞こえた、多分ミリスさんだろうあんなに苦しい声を出している...とにかく今は行かないと。



声がする方向に行けば、前の世界で見たペスト医師のマスクをした人たちがミリスさんを囲み何か魔法の詠唱をしている。

「何を...してんだよ...!」


一目散に飛び出し、助けようとしたが空中を浮遊している岩によって塞がれた。

「あー今はやめて下さいよ。魔法の準備中ですから」


そこには白のローブを来た女がいた。こんな奴に邪魔されて終わるか。


「さっさと死ね...」


剣を振り回し、相手が後ろに引いたら俺は炎を出しながら距離を詰める。それでもこの女は掠りもしない。


「君魔法の筋は良いですね。ここで捕まえたいですが、いかんせん、私戦う事苦手でして!私は作る方が好きなので!見ました?あのでかい肉の塊を!」


塊?まさか...

「あの化け物...?」

「そうです!そうです!あれ私が作ったんですよぉ!良いですよね?苦戦しましたよね?ですよねぇ!!何せ84人の人間を使いましたから!」


84?人間?あの塊には、84人の命があったのか?


「は...はは....」

「そうですよね!感激ですよね!!」


俺の命には84人の命の価値があるか?あるわけ無いだろう。俺はきっと、この罪を抱えながら戦って行くんだ...


「お前は...殺してやる...」

「え?まぁ、やってみればいいんじゃ無いですか?」


右腕を伸ばし、炎の準備をする。


「また炎ですか、味気な...」


そこには、赤色の炎じゃなくて、紫色のレーザーが走った。


「あっ...ぶないですね....」


ああ、最悪だ。今なら何でもできる気がする。


____________________


「これって、結構やばいですよね...」

普段の私なら前線に出ないのに、悪い癖だ。生きのいい人間がいたら捕まえたくなるのと、自分が作った兵器を見てみたくなるのは。そのせいで規格外な奴とあってしまうし。


おそらく結構時間はたったので転移魔法は出来たでしょう。あとはコイツですね。捕まえたいですが、撤退しなければ。


「くそっ、雑魚ども...」

「良いですよ!そのまま撤退の隙を作って下さい!」


私が作った部隊が役にたってる!案外悪くないものですね!


奴は一度仲間たちに専念させましょう!私は一目散に逃げ出します!


「それにしても、なんでしょうか?あの魔力の流れ?」


奴の魔力の流れ中々に変でした。あーあ!捕まえたかったですよ!


____________________


グリムさんは何処かに消えてしまった。奴も逃してしまった。ああ、また守れなかった。そして力がまた強くなるのを感じる。


「みんな、消えてしまえ」


俺はそう言って、腕を空に伸ばし全方位に炎を撒き散らした。まさに炎の雨だ。雑魚たちは何とか防ごうとはしているが俺はさらに火力を増す。こいつらは、せめて苦しんで死んでほしい。グリムさんの為にも...


そして何かが来るのを感じた。


「クソ...仕留めきれなかったか...」


ふらついた勢いで来た奴は、前に戦った早い奴だ。


「邪魔...するなよ...!」

俺は奴の頭を掴み地面に叩きつけた。かなり勢いはあったし、瀕死だったから死んだだろう。そう思ったがまだ生きている。


「今ここで...お前を殺さなくては..家族の為にも....お前は強すぎる...」

強い?俺がそうなった理由も知らずに...!


「お前に....お前に何が分かる!!!」


怒りに任せ、奴の頭を何度も踏みつけた。俺が心に溜めて来た憎悪と共に。


「お前に!何が!分かる!いきなり知らない世界に飛ばされて!俺の恩人は目の前で殺されて!自分の不甲斐なさを見せつけられて!俺は....どうしたら良いんだよ!」


そこに残ったのは凹んだ人間の頭と、大きすぎる負の感情だ。


殺意、妬み、嫉妬、怒り、苦しみ、悲しみ。


心の中で、何かが切れた。


____________________


「これは...中々に酷いな。」

アリアス防衛戦が成功したのは良いが、あたり一面が炎の海だ。俺たちは第2群として消火活動をしているが、後始末が大変そうだ。


そんな地獄の中、見知った奴を見つけた、あれは...レインか!?


「おい!大丈夫か!?」


意識はあるが、放心状態になってるな....ひとまず、レインを撤退させないと。


「おい、何してやがる?」

「お前は...」


最悪だ、こんな状況で敵に会うとはな。まずは逃げることが最優先。レインを背中に抱え込み、地面を蹴って走った。奴も当然追いかけてくる。


「レインは俺の親友だ。殺される訳には行かないんだ」

「ああ、そうかい。で、それが何か?」


奴は氷の球を放ってここまでかと思ったが、ギリギリ守ってくれた奴がいた。そう、あの時見た魔法使い、リリーナだ。


「君はレイン君を頼む、私はコイツを食い止める!」

「了解!」


流石に助かったな。レイン、無事でいてくれ!




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