第8話 人間性

俺は、家族のために戦っている。俺を大切に育ててくれた母、俺に戦い方を教えてくれた父、まだ小学生の弟。俺は家族が大好きだ、だからこそ一刻も戦いを終わらせて家族を安全にし、弟をこの地獄を体験させたくないんだ。だが本当にこんなやり方で戦争を終わらせていいのか?


数々の人間を組み合わせ、人間にも似ても似つかないこの化け物を使って?確かにコイツは物凄く強い。前の戦いじゃ腕を振り回すだけで何人も殺した。だがこんな物を使ってまで掴み取る平和は本当に平和なのか?


とにかく、俺がやる事は戦争を終わらせる。今はその事だけを考えよう。


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「レイン!コイツ持ってけ!」

そう言って渡された物は手斧だった。手に持てるサイズだが、よく切れそうだ。


「どうしてこれを?」

「あの化け物は多分硬いだろうからな、剣より斧でぶった斬った方が効果的だろうな」

前に会った化け物...肉が分厚いから多分剣じゃ上手く切れないだろう。


まだ敵は来ていないから、今は迎撃の準備をしないと。


「矢、まだあるか?」

「食料配給の時間だぞ!」

「敵はいつ来るんだよ...」

「早く戦争終わんねぇかな」


周りは騒がしくも、それぞれが戦う準備をしている。だが、前のあの化け物を見たせいか空気がお通夜状態になっている。


「すみません、食料を持ってきました」

「ああ、ありがとう」


渡された物は味気ないバーだ。こっちは敵がいつ来るか分からないから、こうゆう即座に食べれる物を支給されてる。けど俺は...何も食う気にはなれない。


今までの事を振り返れば、多くの事があったな...結局この力は何なのか?未だによく分からない。


その時、爆発音が聞こえた。

敵が来ただろう。


「クソっ、来たか...」

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自慢のスピードで戦場を走り抜き、通った敵を一瞬で葬る。俺の父から伝えられた戦い方だ。敵より先に攻撃する。これが俺と、父の戦い方だ。


「はぁ...はぁ...これで何人目だ...?」


人を殺す事は気乗りしない。だが今は戦争中だ。仕方ない。


そうして敵を次々に殺して行くとあの化け物が見えた。あれも俺と同じ様に殺していく。


子供の遊びの様に。掴んではちぎり、叩きつけ、周りには内臓か、肉しか残らない。


その先を見れば、前に戦った奴がいた。あの炎を出していた子供か。その横を見れば...グリムとか言ったやつか。


あの化け物を今ここで殺されるのはまずい。手を貸すのは少し嫌だが...仕方ない。地面を蹴って奴を一瞬で殺さんと、俺は向かった。


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「あ?何だあいつ...」

化け物退治をしようってトコに結構なスピードで来てる奴がいるな。化け物はレインに任せるか。


「レイン!化け物頼んだ!」

「了解です!」


拳を握りしめ、顔面めがけてぶん殴る。相手は少し怯んだが防御する。


「パワーが強いな...行けるか?」

「とりあえずお前速攻で潰す!」


相手に近づき前蹴り、それを避け相手は剣で横腹を刺そうとしてきたが、俺はそれを回避。相手は剣を逆手に構え勢いのまま俺の上半身を切り裂いた。腕を取られなかったのは幸運だった。


「クソがよ...うろちょろしやがって」


相手はこれを続けるつもりだ。目で追えないスピードだが、伊達にカンヘル部隊にいるわけじゃない。

「オーケーお前潰す!」


ほぼ運だがやつは俺の事をまた切り裂いたが、やつの肩を掴めた。


「なっ!?」

「よーし!お前は死刑だ!!」


自慢の力で抱きつきそのまま背骨を折る事にした。これで死んでくれよ!


「くそっ...!お前!」


脇腹にナイフが突き刺さるが関係ねぇ!そのままぶっ壊してやるよ!!


「俺は...!こんな所で!!」


バキッ!と、折れる音がした。間違いなく、奴の背骨だろう。奴はそのまま力が無くなり地面にへたり込んだ。多分、死んだだろう。


「クソっ、めちゃくちゃ刺しやがって」


アイツの援護に行かねぇとな。


そうして背中に激痛が走った。

「があっ!!!」


矢?矢だと!?それにしては...クソいてぇ...!


「う〜ん、もう少しやれると思ったんですが?まぁいいです。」

「この...クソ野郎!!!」

「あーうるさいですよ。どうして人間はこんなにうるさいんでしょうか。」


多分矢に毒か何か仕込みやがった。力が思う様にうごかねぇし...意識も無くなって来やがった...


「素材としては十分ですかね、とりあえず寝ててくださいよ?」

ふざけんな....!俺はこんなとこで...まだ...


「うおおおあああ!!!!」

「おお!?マジですか!?」


なけなしの魔力を使って体を強制的に動かしてクソ野郎をぶん殴ろうとしたが、無慈悲にもそれは避けられた。


「まったく、生きがいい事は良いことですが、ここまでとは。ん?ああ皆さん!」


何だアイツら.......鳥のくちばしみてぇなマスク...?


「そうです!コイツ連れてってください!」

「クソ...やめろ...」


本当に終わりかと思ったが、神はまだ俺の事を見捨てなかったらしい。アイツが...レインが見えた。そう思いながら俺は意識が無くなった。

____________________

少し前...


グリムさんから離れた俺は化け物と戦うことになった。まだ足が震えてる様な気がするが、ここで逃げちゃグリムさんに顔負けできない。


「殺してやる!」


手斧を構え、勢いをつけてジャンプ、そして太い腕を叩き切ろうとしたが、手斧が刺さったまま固定された。

「クソ!思ったより分厚い!」


化け物は悲鳴のような叫び声を叫びながら腕を振り回した。俺は一度離れ、炎の魔法を化け物に放った。炎が化け物の体に燃え移り、悲鳴もまた大きくなった。


「何だ...相手は人間がいるのかよ...?」


ずっと疑問だった。あの化け物は人間とは絶対に言えないのに...人間に見えてしまう。俺は剣を構え、見えない罪悪感と共に走った。


俺はジャンプし、相手の顔めがけて剣を刺したが、それでも死なない。となればどうすればあの化け物は死ぬんだ...


「剣が効かないなら魔法でやるか...」


化け物は炎の魔法をくらったら悲鳴は出しているから炎は効くはず。あの化け物はずっと苦しむだろうが仕方ない...


俺は炎を出し続けた。何度も、何度も、何度も。悲鳴が戦場に響き、俺は心が黒く染まって行く様に感じた。


「あづい!!あづい!!おがあざん!!おがあざん!!ぐるじ!!ぐるじ!!!」


これが本当に正しいのか?


もっと苦しませないやり方はあったんじゃ...


「だすげで!!!」


その言葉が、重なった様に聞こえた。










そうして化け物は燃え尽きた。焼け焦げた肉の匂い。化け物だった真っ黒な塊。間違いなく背中に罪悪感を感じる。


「・・・」


俺がやった事は絶対に正しくない。そうだろう?助けてと叫んでいる奴に、ずっと苦しませたんだ。


かと言ってもここで化け物を殺さなければまた人が死ぬだろう。


一体何が正しい?ここには正義があるのか?


どうか俺に、正解をくれよ。




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