第7話 異世界、だからこそ。
「オラよっ!!」
敵の顔面めがけて拳を振るえば相手の顔はぐちゃぐちゃになった。クソ、これで何人目だ?
そんな事を考えていたら声が聞こえた。正確に言えば、レインの声だ。
「助けてくださーーい!!」
「しゃあねぇなぁ」
俺は声が聞こえた方向に飛び出す。アイツが助けを求めるって事は強い奴だろう。まぁ、それでも俺が勝つがな。
「ちっ、援軍か」
「呼ばれて来たぜ、レイン!」
まずは軽めに勢いに任せてブン殴る!
「クソっ、パワーがかなりあるなコイツ」
顔を掠めたか、運のいい奴。
「レイン!とりあえずアイツぶっ潰すぞ!」
「了解です!」
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「くらっちまいな!」
「そこだっ!」
俺が先行して攻撃をする。剣を右に振るったり、突き刺す動作をする。もちろん相手はかわす。だがそこをグリムさんが攻撃する。次第に相手は攻撃できなくなりかわす事しか出来なくなる。これを続けたら勝てそうだ!
そんな悠長な事を考えていたが、その時地面が揺れた。
後ろを振り向けば、そこには人間を重ね合わせた様な化け物がいた。体全体が大きく、手足には、まるでくっ付けるのに失敗したのか手と足がバラバラにくっついている。顔もでかく、なにより顔には何個もの顔が貼り付けられている。
「な...なんだこいつ...」
俺は恐怖心に耐えきれず、逃げ出した。
何だ何だ何だ!?あの化け物!?人間、いやあれを人間と呼べるのか!?
俺に続く様にグリムさんも着いて来た。顔色を見れば多少はあの化け物に恐怖しているのが分かる。
「レイン!とりあえず今は逃げるぞ!」
「アイツ!分かりますか!?」
「わからん!結構戦場に行ったが、あんなバケモノ初めてみたぞ...」
後ろからは悲鳴が聞こえる。単に俺は気になったのか、それとも一目散に逃げ出した罪悪感なのか。後ろを見てしまった。
「うわぁぁ!?何だコイツ!?」
「や...やめ!!」
「助けて下さい!お願いします!」
「いやだぁぁぁ!!」
あの化け物が手を叩きつけば、人間の肉は破裂し、まさに人間がアリを虐めるように無慈悲な殺戮だった。
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「うおぇぇぇ!!」
撤退に成功した俺たちはまた新たな防衛ラインを作る為に塹壕や物資を運んでいるが、俺はトイレで吐いていた。
「クソっ...なんだあいつ...」
地球にあんなものがいるって考えるだけで怖くなる。俺はあいつと対等して戦えるのか?いや、無理だ...あんな化け物と...
胃の中を空っぽにし、憂鬱な気持ちでトイレに出る。外はもう暗く、ほとんどの人たちはもう寝てるだろう。今日は多分寝れないだろうと思いつつテントに戻る。
テントに戻ったらグリムさんもあまりいい顔をしていない。
「レイン、戻ったか。あの化け物どう思うよ」
「多分...俺じゃ勝てないと思います。」
「クソッタレ、こんなことになるんだったらもっと人寄越せってんだ。明日も化け物に会うかもしれん。その時はおれとお前で倒さなきゃならない。」
あれが敵国の作った最新兵器、いや、最新生物と言うのだろうか。俺とグリムさんでも勝てるのかよ...
「了解しました...」
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「これが、マモノだって?」
「はい!貴方も見たでしょう、あのとてつもない活躍を!敵をバッタバッタと薙ぎ払いましたよ!」
それはそうだ。後ろから見ていたがあの2人を退けた事はある。ついでにやってほしかったが。
「だが、見た目が最悪だ。どうにかならないのか?兵士たちの指揮にもかかわる。」
「それは仕方ないですよ!今作れる方法がこれしかなくて、まだ材料が足りないんです!まぁ、色々やってみれば改良は出来ると思います!」
最悪だ。それ以上の言葉が見つからない。こんな物が俺たちの国を救う鍵だなんてな、落ちぶれたものだ。
「おが...あざん...、こん..にち、あ、は、は...、さよ...なら...、いだ...い...」
こいつの顔は複数あるが、まさか一人一人、感情があるのか?
「コイツ、どうやって作ったんだ?」
俺はこの発言が、人生の中で一番後悔する事になった。
「気になります!?そうですよね!私たちの最新兵器なのですから!」
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「私、人間の体って魔法を引き出すのに相応しくない体だと思うんですよ!」
「どう言う事だ?」
「魔力は血液から、血液は心臓から。でもその心臓が小さければ意味がないんです!そこで、私は良いことを思い付きました!なんと人と人の魔力を組み合わせればいいんじゃないと!」
組み合わせる?魔力を?
「まぁ、そう簡単には行けなかったんですけど、魔力の流れが近い物同士をくっ付ければ意外と簡単に出来たんですよね。それで、根っこの部分に行きますが、肝心の心臓。それは魔力の流れが近い物同士の肉をくっ付けました!」
まさか、これを...?
「魔法で強制的にくっつけさせ、二週間ぐらいかけて作ったのがこれです!ギリギリ納期に間に合って良かったですよ本当に!まぁ、ちょっと汚い所はありますけど...」
「うっ...」
思わず吐きそうになる。目の前にいるのは、何人もの人間を合わせた、化け物なのだから
そんな俺を見たのか、慌てた顔でこう言った
「ああ!大丈夫ですよ!ちゃんと悪い事をした人たちから作ったので!流石に市民たちの体を勝手に使うのは悪いですからねー!」
俺はコイツの胸ぐらを掴み殴りそうになった。こんな形状し難い物をつくり、へらへら笑っていることに嫌気がさした。
「お前は、自分が何をしているのか分かっているのか!!」
「え?何で怒るんですか?悪い事して無いですよね?」
「そう言うことでは...!!」
「別に、敵を効率的に殺せますし。それに悪い人を使ってるんですよ?もしかして貴方の友達に悪い人がいたりしました?そうだったら謝ります...」
俺はコイツに何を言っても無駄だろう。コイツは頭がイカれている....
俺はとてつもない怒りと吐き気と共にこの場所を後にした。
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