第3話 神様からの贈り物
「そろそろだな、レイン」
「だな、これで勝負が決まれば良いけど」
もうすぐデュラク攻略戦が始まる。今日はリリーナ中佐がいるからここで決まりそうなものだと思う。
「それじゃ、俺は別の配置になってるから。お前も気をつけろよ!」
「ああ!またな!」
あいつも生き残ればいいんだけど。
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爆発の音が聞こえた、砲撃が始まったな。これが終われば戦い。前と同じだ...
寒気もするし、鳥肌も立って来た...落ち着け、生き残ればいいんだ!家族のためにも。
「総員武器を構えろ!砲撃が終わり次第突っ込むぞ!!」
よし...覚悟を決めろ!俺はここで生きのこ...
その時、とてつもない風と共に体制が崩れた。
「ザコ1匹ぃ〜!」
「え...?あ...?」
足...あしが...ない...
「キサマあああっ!!!」
「うあああっっ!!あしがっっっ!!??」
なんだなんだなんだ!?足がない!?痛い痛いいたい!!
「お前結構強そうだな!どうだ?私を殺してみろよ!」
「お望み通り、一瞬で殺してやる!」
こいつの奇襲が成功したのか、敵兵が次々と出てきてる...クソっ、痛すぎる...
ソルーシャ隊長が剣を振れば相手は何だと言うように、余裕で受け流す。新しいおもちゃを見つけた子供のような顔で、ソルーシャ隊長の右腕を叩き切った。
「うぐっ...こいつ...」
「おいおい、結構やれると思ったんだけどなぁ?」
「そる...しゃ...たいちょう...」
痛みは酷いが...このままじゃソルーシャ隊長が死ぬ。くそっ何か、何かないか!?
「あ〜あ、これじゃすっ飛んできた意味がない。ま、とりあえず殺すか」
魔法、そうだ!魔法!少ししか出来ないけど...時間稼ぎぐらいは...!
「クソッ!!燃えろ!!!」
自分に残っているちょっとの魔力を使い、出てきたのはライターをつけたかのような、小さい火だった。
「くっ、あっはははは!!何だお前!!面白いなぁ!!」
自分の魔法の才能の無さに絶望する。俺はこんなに出来ない人間だったのか。俺は、何もできない人間だと。
「あ〜あ、おもしろ!ザコに笑わされるなんてなぁ!気に入ったよ、最後に殺してやるからな!それにおかわりも来たしな」
遠くからとてつもない速さで近づいている人がいる。多分リリーナ中佐だろう。そう考えている間に俺の足を切り飛ばしたやつが同じ速度で突っ込んだ。
「ぐゔっ...はぁ、はぁ...」
「そるーしゃたいちょう...大丈夫...ですか...?」
「お前の方が、大丈夫じゃないだろう。」
それはお互い様だろう...脳もあまり動かなくなってきた...いたい...
「衛生兵を呼ぶ、お前はとにかく耐えていろ。私は奴に一矢報いる。」
「それは...無茶でしょ...」
「確かにな...だがここでリリーナ中佐を失うのは...こちらとしても痛い」
「けど...!」
無理だろ...あんな強さを見せつけられて...左腕しかないのに...
「心配するな。お前に言ったみたいに生き残ることが大切と、私も生き残るさ...」
そう言ってソルーシャ隊長は行ってしまった。
「おれは...なにも...できないのか...」
この地獄の中で、泥と血にまみれた場所で1人悲しく絶望する。みじめで、弱くて、何もできない。
「くそっ...いたいなぁ...」
俺は...どうしたらいいんだ...
「見つけた!大丈夫か!?」
「ぇ...ぁっ...」
出そうとしても声が出てこない。声に何かが突き刺さってるかのように出てこない。
「治療薬を打つ。後退するまで耐えろよ!」
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「全く!面倒な奴!」
「お前もなぁ!!」
私が手から火の魔法を出せば相手はそれを切って突っ込んでくる。こいつ化け物か?
「ほうぅらよ!!」
「あぶなっ!?」
ギリギリ、ほんとに髪がかすったぐらいで避けれて、危なかった。多分当たれば死んでたな。
こいつは休む暇もなく剣を振り回す。子供が遊びで枝を振り回すようではなく、ちゃんと避ける位置を考えて振り回している。まったく嫌になるね。
魔法で牽制しつつ、少し視界に入った物がある。あれはソルーシャ?右腕が無くなってるな。ソルーシャが傷つけられたんだ、相当強い奴だな。
「ん?ああ!あのババア戻って来たのか!根性あるやつは好きだぜ!」
「キサマは...キサマだけは!この命に賭けても殺してやる!!」
ソルーシャが突っ込み、敵はそれをいなす。私は即座に魔法を放つ。
「ソルーシャ!大胆かつ冷静に行ってくれよ!」
「了解!!」
ソルーシャは片腕だけど、まだ戦えるだろう。
「2対1か、おもしれぇ!」
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「とりあえず安静にしてろ!安全なのはここしかない!」
衛生兵に連れられ、切り倒された右足に包帯を巻かれ寝かされる。まだ痛みがひどくのこっている。
「ふぅ....ふぅ...くっ...」
頭がごちゃごちゃだ。ソルーシャ隊長は生き残れるのか?戦場はどうなっているんだ?あいつに勝てるのか?気持ちも体も限界だ。
「レイン!?大丈夫か!?」
「みりす...」
ミリスか、無事そうでよかった...
「足をやられたのか、この戦いが終わるまで耐えろよ。レイン」
「わかってるよ...ミリス...」
「どうした?何かあったのか?」
「...ソルーシャ隊長が、死にそうなんだ。俺のせいで...不意打ちを取れたはずなのに、俺は何も出来なかった...」
みじめだ、こうやって涙を流して友達に愚痴を吐くだなんて。まだ戦場には戦っている人たちがいるのに...
「そうか、お前に何があったのかは知らないがとりあえず今は休んでおけ」
「ごめん、ミリス...」
そうして、すぐ近くで爆発のような音が聞こえた。
「何だ!?あれは、ソルーシャ隊長!?」
「え...ソルーシャ隊長...?」
「全く、片腕なくなって私に無謀に挑んで、そんなんだから負けるんだよ!おっと、飛ばしたのは私か!」
あのクソ野郎だ...まさかソルーシャ隊長をここまで吹き飛ばしたのかよ!
「おっと!そこのザコ達!動くなよ!」
「くそっ...実力差があり過ぎる...」
あのクソ野郎はソルーシャ隊長に近づいていく。まさか殺す気なのか?
「これ以上ババアに邪魔されるのダルいし、さっさと殺すか」
「まてっ...まてよ....!」
ソルーシャ隊長が...!あいつに!あのクソ野郎に!殺されてしまう!!動け!動けよ俺!
「んじゃ、さよなら〜」
そうしてあのクソ野郎はおばあちゃんの首を切った。
「あ」
「ああっ」
「うああああああっっっっ!!!!!」
戦場に1人の男の叫びが響く。悲しさ、怒り、憎悪、殺意。どろどろとした気持ちがこもっている叫びが響いた。
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「ん?あ!?あの時の面白いやつ!何だ生きてたのか!」
あんなに叫んで、もしかして結構大切な奴だったり...
なんだ?あれ?
肉が互いに重なる音、骨が響かせるビキビキとした音。彼の右足に、元に戻るように足が治っている。その音はまるで不協和音。周りのザコ達は耳を塞いでいたり、ゲロを吐いてたりしている。
けど、私は何故かその音が、たまらなく気持ちいい。
「はっ、ははっ、何だよお前!」
「最高だ!最高じゃないか!!お前!!」
見つけた!ようやく!!こいつだ!私を最高にさしてくれる人は!
「殺す」
そう言って彼は私に喉を刺そうとして来た。間違いない。私を本気で殺す気だ!
「私とお前!どうやら赤い糸で結ばれているようだな!!」
童話で見たことがある、赤い糸で結ばれている人たちは運命の人だって。
彼は的確に早く首を狙う。私もそれに応えるように心臓を狙う。だけど、彼はそれを分かってる。剣で弾き、即座に殺してくる。動きはまだ単純だけどこれだけは伝わる。
「殺意が、ひしひしと伝わってくるなぁ..!」
「黙れよ...お前!」
魔法を使って来た、さっきのマッチのような火ではなく視界を覆い尽くすような火だ。
「アハハっ!!さっきの火はどこに行っちゃったのかなぁ!!」
ああ、楽しい!こんなにも!この時間が、ずっと続けばいいのに!!
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何も聞こえない。何も感じない。ただあるのは、殺意だ。やつを殺さんと。やつの首を、絶対に取ってやると。
「レイ...てった....聞こえ....」
ミリス、邪魔しないでくれ。今はこいつを殺さないと。やつの息の根を止めないと。
「全く、何が起きてるのやら」
一瞬、何かを感じた。これは...体が動かない?
「とりあえず、少し寝ててよ」
クソ...意識が...あのクソ野郎は...絶対に、殺してやる...!
「ころして...やるからな...」
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