第05話 宣言

『……わたしは、世界樹・エクイテス』


 空から、そして地面の下から、エクイテスさんの重い声が響いてくる。

 頭と足元から同時に入ってくるその声は、まるで心に直接語り掛けてきてるよう。

 警察官たちが揃って、口をぽかんと丸く開けて、空を見上げてる。

 きっと街中の人たちも、同じポーズ。

 わたしは……口閉じておこっと。

 お間抜けっぽいから。


『スティングレー家の令嬢、リーデル。しばらく彼女を、わたしの派出婦はしゅつふとし、聖域への出入りを自由にする』


 派出婦……通いのメイドさんね。

 ……って、わたしがエクイテスさんの……世界樹の……メイドぉ!?


『リーデルからわたしへの干渉に、一切のとががなきことを、ここに宣言する』


 エクイテスさん……。

 わたしを……かばってくれた。

 曾祖父母の代の、お礼もあるんだろうけど……。

 わたしがあまりにも、不出来な女だからだろうけれど……。

 とにもかくにも、世界樹たるエクイテスさんが……わたしをかばってくれた!

 これって……凄いことっ!


 ──カチャン!


 あ……手錠、外された。

 手が軽い、うれしい。


「……失礼しました、スティングレー家のお嬢様。よもや、世界樹・エクイテス直々に許しを得た方だったとは、思い至りませんでした。どうかこの浅薄者せんぱくものを、お許しください」

「あ、いえ……謝らないでください。わたし自身も、驚いているところですから……アハハハッ」

「世界樹の宣託どおり、あなたの聖域への出入りは自由としましょう。ただちに見張り所すべてへ、伝達します」

「は、はあ……」

「……とは言っても、すでに伝わっているでしょうが」

「……ですね。アハハハ……」


 世界樹の足元、丘陵地のいただき

 そこから眼下に広がる、木造とレンガ造りがメインの家々。

 外れにあるちょっと大きめの建物が、わたしの屋敷。

 あっちの角ばった3階建ては、通ってる学校。

 その手前に見える黄色い屋根は、とってもとっても美味しい黒糖パンを売っている、若夫婦が営むベーカリー。

 そんなみんな……みんなに聞こえた、届いた。

 わたしが世界樹の、通いのメイドになったことが────。

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