第1話

 僕の名前は笹川ささがわ太地たいち。高校二年生である。


「おはよう。朝からそんな死んだ魚のような目をしてどうし・・・あっ。もしかして告白失敗したのか?」

 

 朝、学校へと向かう途中に声をかけてきたのは同じクラスの友達、安藤あんどう一志かづし

 一志とは腐れ縁で幼稚園からの長い付き合いになる。

 

 「・・・そうだよ」

 

 朝から昨日の悲しい出来事を掘り起こされ、不機嫌にそう言葉を返した。


 「そうか。まぁこれも良き青春の一ページとして大人になった時には笑い話になるさ。・・・ちなみにだけどなんて言われて断られたんだ?」

 

 「それ言わないといけないか」

 

 「気になるだろ。もしかしたらワンチャンあるかも知れないし」

 

 なんて奴。人の失恋を踏み台にする気か。というか、お前彼女いるだろ。

 

 「言いたくない」


 「教えてくれよ。読唇術手伝ってやっただろ」 

 

 それを言われたら何も言い返せなかった。

 

 「だるい」

 

 「そんな事言うなよ。なぁ、俺とお前の仲じゃないか」

 

 「だから『だるい』って言われたんだよ!」

 

 数秒の沈黙してから、一志は肩に手をかけて。


 「ドンマイ」


 にやにやしながら言いやがった。覚えておけよ。今の話お前の彼女にチクっておくからな。

 心の中で復讐を誓う僕は気づいていなかった。少し後ろでこの会話に驚いている人がいる事に。

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