第13話

「んあ?」

 私が目覚めたのは、優の部屋だった。

「…なんで」

 私はずっとソファに居たぞ。そもそも彼の部屋はカギが掛かっている。

 密室に酔っ払いが侵入というケースも…、無い。私は、例え泥酔しててもそんなミラクル起こせない。そもそも昨日は、酔い潰れてない。

 少なくとも、弟の隠しごとを看破する位には。

「お母さんって、酒強かったっけ」

 私が小さい頃、お酒の味は好きなのに、アルコールに弱かったお母さん。

 最近、意識にすら上ってこなかった。

 高齢出産で、四十二歳で私を産んだ。優の様子をさりげなく聞き出そうとすると、時折眉尻を下げていた。

 …そうだ!違うかもしれない。私達が同一人物で、二重人格のそれぞれの人格でしかないなんて。

 信じるものか。

 書類さえあれば。何か、決定的な証拠を見つけさえすれば。

 状況証拠など、ただのゴミクズだ。私達がライン以外で会話したことがないのも、ホクロの位置が同じなのも。

 私が「互いにちゃんと独立、自立している」という部分にこだわることも。

 正式なものが一つでも根拠になれば、二人でまた、平穏に過ごせる。

「え?」

 やだ、何取り乱してんだろ。

 ともかく。

 優を泣かせることは、絶対に許さない。たとえ運命でも、ねじ曲げる。

 あの時優を軽蔑した奴らに、唯一できる抵抗の意をあらわす手段。そうとしか思えない。

 優と私は会えるんだ。

 心の黒雲からは、目を逸らすことにした。

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