第10話

 もしや避けられてるんじゃ…。理由は?さっぱり分からん。既に焼酎をビン一本空けた状態なんだよなぁ。無意識で飲んだのか、酔いが回るのが妙に早いのか、覚えてないけど。

 勢いでそのままラインを送る。

『優って、わたしのことさけてる?』

 変換機能を使い損ねたと、送ってから気付く。

『へ?』

 優からだ。数件来ている。ちょっと間の抜けた返事。

『ちがうってば』

『いきなり、なんかあった?』

 何故か向こうもことごとくひらがな。

 もしかしてと、予感を確かめるべく自撮りして。

 送信っと。

『のみすぎました』

 と添えてみる。

 返信だ。三十分経っていたようだが、その間の記憶が抜け落ちている。やっぱりハイペースでビン空けるのはやり過ぎだったか。明日の朝に響くぞ、コレ。

 スマホ画面を指で叩くと、『こっちもですw』という文字が下部に表示されていた。スワイプして顔認証させた後、アプリ、そして彼とのトークを開く。優の顔がほんのり赤くなっている画像に目が吸い寄せられた。心もち濡れた瞳と、左目の目尻のホクロが異様に煽情的で。どうしよう、自分の鼓動が耳からはみ出しそう。

「……」

 いや何ときめいてんだ自分。元は、己がとりま送ってみた画像が元凶だろうが。

 ひと時の興奮が落ち着いた頃、改めて彼の自撮りを見返す。私は、写真に映る或る一点のせいで、すっと酔いが醒めた。

 コレは一体?可笑しくない?もう胸が高鳴ることはなかった。左頬が勝手に引き攣る。

 部屋が、家がいやに静かだ。

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