第5話

 起きたら、窓から暗さが差し込んでいた。

「あ゛」

 嫌な予感がする。そういえば、今日はやけに寝入りが良かったような…。

『18:16』

 という数字が、スマホをタップすると表示された。

「まずい」

 誰も居ない部屋で、呟く。何もごはんを作ってない。具材はあるけど。ここから作ったら最短でどれくらいだろう。あれ?皿も食洗機に入れた記憶がない。流しに置きっぱなしか?

 悶々としていると、慣れ親しんだ味噌汁の香りが漂っているのを鼻腔が感知した。かつお節の独特な、あのにおい。

 急にお腹が鳴った。集中が切れるのがキライで、おやつも食べてない。

「こんなにお腹空いてたっけ…」

 きっと、あの味噌汁を作ったのは、優だ。何も無いダイニングテーブルと、放置された末の流しを見てまさかと直感し、姉の部屋をノックするも反応は返らず、全てを察した。ざっとこんなところだろう。

 何故か、気恥ずかしさが押し寄せてきた。己のおっちょこちょいが情けない。

 地味に燻る羞恥心を飲み下すべく、ずかずかと匂いの元の方へ行く。テーブルには、既にお椀に注がれた状態で、箸とともに置かれている。やや荒い手つきで箸を手に持つ。二、三周手早くかき混ぜ、椀のフチに口をつける。容器を少しずつ傾け、味わう。相変わらず美味しい。今日は具が豆腐しかなかった。ちょっとしたイレギュラーだ。

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