第2話
ようやく出番だ。正直言って、他の人を見ているとき、うずうずしていた。はやる鼓動をなだめながらも、歩は進める。
ステージの真ん中に立った。かなりの視線が私に集まっている。
「おい、Suira様だぞ!」
「やっべ、俺今日死んでもいいわ」
前列の二人組の声が耳に入った。こういうのにも最早慣れてしまっている自分が居る。
司会の紹介と、自分から発されるいい感じのコメント、そしてファンサがてらカメラに向かって笑いかける一連の儀式が終了すると共に、また移動。スマホの設置されたテーブルの前に立つ。司会の指示に従い、準備を完了させる。相手も済んだようなので、開始直前に一度深呼吸。集中を意識的に上昇させ。
スタートだ。今回やるゲームは戦略を特に必要とする。攻撃をいつ、どう当てるかは勿論、無闇な行動がクールタイム地獄等を招き、負けへの片道切符となる。やればやるほど将棋っぽく思えるというのが、やり込んだ感想だ。
慎重、かつ大胆に敵のペースを崩し、確実に有利状況を作り出していく。
そのとき、敵の攻撃が、私の前方の強キャラへ。すぐさま、追撃に来る敵キャラを、クールタイムの明けたキャラを出撃させ、カウンター攻撃で仕留める。思わず笑みがこぼれた。
敵は、強くなっている。
これが、いよいよ私の戦闘スイッチを最大へと押し上げてしまった。
一段と精度の上がった切り返しに、隙を見つける余裕さえない様子。追い討ちのように蓄積ダメージを入れていく。
相手キャラの復活までの間に、数々の嫌がらせ。戦略の研究をしているうちに、気付くと上手くなっていたものだ。
容赦など微塵もなく、試合終了となった。相手が意気消沈しているのを目の当たりにして、ようやく可哀想に思えてきた。会場は、開始前よりもむしろ静かだった。溜め息を感じる静寂に、少したじろぐ。
やりすぎた。最近、動画配信の仕事を増やした反動だろうか。
無論、辞めても生活はできるが、ゲームシーン全体のためを考えると、その選択が果たして良いのか、自信がない。
取り敢えず、帰りの電車で考えよう。一応、無事予選通過だ。静まり返った観客を尻目に、そう思うことにした。
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