第8話 出会い2
プロ野球のチームには、それぞれ本拠地となる球場があり、試合中そこでビールを売る「ビール売り子」というバイトがある。
それを、大学1年の頃からやっていた。
「空夏! 今日から出勤?」
駅からの道を球場に向かって歩いていると、同じビール売り子の桜華が、わたしを見つけて元気よく声をかけてきた。
「実習昨日で終わったから。オリエンテーションどうだった?」
「私たちの時みたいに、実際に樽背負ったら立てなかった子が何人かいたわ〜」
お客さんにビールを売る時、一度しゃがまなければいけない。そして膝立ちした後、また立ち上がらなくてはいけないから、その時立ち上がれなかったり、重さで後ろによろけたりしたら、そこが階段だから、すぐ事故につながってしまう。だから、樽を背負って立ち上がれない子は、この仕事には就けない。
「その子達どうするって?」
「『やめます』って言って帰った子と、売店の方のバイトに変えた子と、半々くらい」
「そうなんだ」
「あとは……夏に辞めて行く子が多いだろーなぁ」
「暑い中、重いもの背負って動き続けるって、過酷だもんね」
「そう言えば、野球のこと全然知らない子がいてさ、『3塁側って何ですか?』って、林さんに聞いて、唖然とされてた」
林さんは、球場で働いているバイト達をまとめる会社の統括責任者の人で、バイトの面接も全て受け持っていた。
「それちょっと見たかった」
「今年は多いみたい。7回の裏がわかんなかった子もいたから」
桜華は笑っていたけれど、きっと林さんはこれからが大変だと、容易に想像できた。
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