第8話 ヤンデレ、住む

「何で何回も締めるの?」


「いや、現実から目を背けたくて。」


「え?とりあえず早く荷物入れてくれる?1人でここまで来るのも大変だったんだから。」


「いやいや。お前こそ意味分かってる?」


「分かってるよ?」


「お前家は?」


「出てきた。」


「何で?」


「私も独り暮らしだったけどそこを昨日解約して今は宿無し。」


「だから何で?」


「大河と住むため。」


「……………」


呆然で言葉も出ない。


「だから早く入れて?」


「ちょっと待て。何で俺が了承すると思った?」


「私の夫だから。」


「お前の中でだけだろ?」


「いや、決まってるから。」


「決まってないんだよ。決まってるのはお前の頭の中だけなんだよ。」


何かヤバイ薬でもしてます?


「え?私入れてくれないの?」


「会って数時間のヤツと一緒に住むのは…しかも俺のこと変に言ってるし………」


「夫と言ってるだけだよ?」


「それがおかしいんだよ。」


「あ~、ダメなんだ。入らせてくれないんだ?」


「入らせて………いやその荷物無ければ入ってもいいけど………」


「宿無しの私を見捨てるんだ。」


「解約したお前が悪いだろ。」


「そんなこと言って私にも考えがあるよ。」


「考え?」


「スゥ~」


「スゥ?」


「やめて~!大河~!私を見捨てないで~!」


大声で叫びだす杏。


「ちょ、お前………」


「何でもするから~!私を~!見捨てないで~!」


「分かった!分かった!分かったから!黙れ!黙って入れ!」


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