第2話 縞々ぺリス
「――して、貴方はなにをやっておられるので?」
聞き慣れた女の声がうるさい。今こちらは重大な観察任務中であることを理解できないのか。
一度の瞬きすら許されない緊迫した戦況である。
「フェルドナード総団長」
しつこい問いかけに、アムリヤスは暗がりの隙間から目を向ける。長い青髪の猫目女が訝し気な顔でこちらを見下ろしている。つい昨日まで隣に佇んでいた女だ。
「なんだぺリスか。何用か?」
「何用……ご自分の醜態を分かっておいでで?」
一瞬苛立ちもしたがまんざらでもない。女学院付近の歩道の側溝にすっぽりとハマり、頭上の隙間を喰うように睨みつけている状況を、客観的に捉えれば醜態と呼ばれても仕方がないだろう。
ただ、これには絶対無比の大義がある。
「至急、いくつかのパンティを拝見したい。自分の思念に間違いはないか、確かめなければ」
「間違いです」と即答した女――帝国騎士団副団長ぺリス=ぺペロンは騎士団のマントを広げて女学生たちの往来に目隠しをした。
しゃがみ込んだ彼女の足元に目をやると、太ももの間に緑色の縞模様が挟まっていた。むっちりとした肉に押された膨らみを凝視する。
「……ふむ。姫様ほどの激情は覚えんが、まぁ確認材料程度にはちょうどいいか」
どこからか棒状のものが差し込まれて額を穿つ。
悶絶していると、無表情を貫いていたぺリスに側溝から引っ張り上げられた。
「王城は大騒ぎです。どうするおつもりですか?」
「知らん! 俺は宿命のもと、新たな覇道を歩み出したのだ!」
パンツ一丁で堂々言い放ってやった。辺りではまだ何も知らない女学生たちがひそひそと声を忍ばせている。
ぐったりと肩を落としたぺリスは口を閉ざし、ただ一言だけ忠告した。
「もう騎士総団長の椅子には戻れませんよ? 泣いても喚いても」
「泣きも喚きもせん!! 俺はもう決めたのだ!! あとは貴様らの好きにやれい!!」
ぺリスは変わり果てた元団長に背を向け、その場を去っていった。
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