第1-7話 アフターセッションはファミレスで
―― GigyaGuaoaaaa!!
ちらりと振り返ると目を押さえて苦悶するサイクロプスが見えた。
それでも、逃げだすには十分な時間を稼いでくれている。
「運が良かったな……」
『クリティカルの効果ぱう。六のゾロ目は追加で何らかの良い効果を及ぼすぱう』
『そういえば最初の攻撃を相手側のファンブルで避けてたか。運が悪いやつと思ってたが実は蒼真って運が良い?』
『運に関連するスキルは『強運』以外にも『悪運』とかあったりするぱう……』
うん、人のステータスは個人情報だと言ってたし深くは考えまいと足を速める。
「カイくん、あれがダンジョンコア?!」
少し広くなった場所に台座の上に黒く光って浮かぶ球が見えた。
「そうぱうよ。あれを壊せばダンジョンクリアぱう」
「
先頭を走っていた朔良にそのまま指示を出す。
「いっくよー、とわっ!」
朔良が走る勢いそのままにダンジョンコアへと蹴りをいれる。見事なドロップキックだ。
―― パキッ!
小さく割れたような音が響く。ダンジョンコア、いや、このダンジョンという異界自体が壊れたと感じる。
―― スキルを取得しました。
ベータプレイヤーによる特殊なダンジョンクリアを確認、称号を付与します。
ダンジョンがクリアされました。
ダンジョンクリアのアナウンスが聞こえる。
俺達の足元にはいつの間にか魔法陣が大きく広がり、青い光に包まれた。
◆ ◇ ◆
「無事なダンジョンクリアおめでとうぱう」
気づくと元の図書室にいた。出口は……あるな。
「たすかったぁ」
「これでシナリオクリア、ダンジョンも攻略したで良いんだよな?」
:――――――――――――――――:
シナリオ:図書室ダンジョンの脱出 クリア!
難易度:★★
推奨人数:2~4人
クリア条件:図書室から脱出する
:――――――――――――――――:
クリア表記の付いた、みんなには見えないウィンドウを見ながら、やっと頭上からおりてふわふわしているワンコに確認する。
「その通りぱう。誰一人欠けずにシナリオクリア、ダンジョン攻略完了ぱう。今回はこちら側の不手際に巻き込んでごめんなさいぱう。後で何らかの補填があると思うぱうよ?」
「再度確認するけど、もしあの中で死んでいたらどうなった?」
「んー、遺体が残ってるうちにクリアしていたら遺体も外に出るけど、そうでなければダンジョンに吸収されていたぱう。残酷ではあるけどこれはゲームではない
どうやら、まだゲーム気分が残っていたらしい俺達もかろうじて生き残った現実を改めて理解する。
「ねえワンちゃん、私達はベータプレイヤーってことだけど、モンスターとかはプレイヤー関係なく出るんだよね?」
神は全
「その通りぱう。今はダンジョンの中だけだけどベータプレイが終わってある程度したら出てくるかもしれないぱう。もっともそのころには皆が
「つまり、文字通り俺達ベータプレイヤーでそれまでのテストと世間の認識を調整するのかぁ。このままだと絶対ベータプレイヤーの死者が爆増するぞ」
「大丈夫、カイくんは私が守るよ?」
「おう、僕も最強になるから安心しろ」
二人の心強い宣言に少しホッとするが、コイツら脳筋組の手綱をどう取るべきか今から心配でもある。
「ありがとよ、ってもしかしてこれからは今日みたいなダンジョンが発生する感じになるのか?」
「ベータ期間中はチュートリアル的なダンジョンを固定で用意する予定ぱう。それを利用してこの
「ま、難しいことは大人に任せて、ダンジョンクリアを祝して皆でお昼ご飯食べに行かないか? あ、
「あ、はい、ご一緒します」
「それじゃあ、早速行くぱう!」
なぜか当然のように頭上に張り付いて付いてきたワンコをつれてファミレスへと向かうのだった。
◆ ◇ ◆
2022年11月11日、その日の内に政府は国立探索者養成高等学校の設立を発表。
ベータプレイヤーへの登録者を対象に同高校への入学を必須とした。
また、週明けには大幅な内閣閣僚の交代と探索者庁の発足が発表された。
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