第1-3話 初めてのセッションは突然に
「
寝不足な日々を思い出して惰眠を貪っていたら
えーと、社会の授業を受けていたら神のやつのアナウンスが入って……
「ああ、休校になったんだったな」
「そうだよ! ってカイくんがウトウトしてるうちにみんな帰っちゃったよ」
そう言う
「つまり、俺待ちだったってわけか。それは悪かったな、急いで帰ろう」
「えーと、それなんだけど、ちょっとだけ図書室に寄っていいかな。今日返却日の本があるんだ……」
朔良の伏し目がちなお願いを断れるわけもなく図書室に寄ってから帰ることは決定された未来だ。
「オーケー、神がどうこうって言っても今日すぐにどうにかなるわけじゃないだろうし俺は構わないぞ。蒼真はどうする? ベータプレイヤーの事が気になるなら先に帰ってもらってもいいが……」
授業中からソワソワしていた蒼真は心此処にあらずという感じで挙動不審だ。
「いや、僕も図書室にいくよ、べ、別にベータプレイヤーのことはこれっぽっちも気になってないから」
「ま、そうか、既にベータプレイヤー参加申し込みを済ませたなら関係ないわな」
「そうそう、善は急げって……あ!」
カマをかけられたのに気づいた蒼真の顔が引きつった。
「お前、やっぱり登録しやがったな。どう考えても怪しい勧誘だから即決せずに注意しろって言おうと思ってたのが台無しだよ……。朔良はもちろん登録は保留してるよな?」
「え、あ、うん。後でカイくんに相談しようと思ってたから選択してない……」
「まったく蒼真ってそういうところあるよな。そもそもベータプレイヤーってのは一般的に何が起きるかわからない人体実験みたいなもんだぞ。ゲームならともかく
「でも神様が選んでくれたわけだし、剣と魔法の世界なんてワクワクするだろ!」
ノーテンキに剣を振り回すような真似をしているが、一応こいつは剣道の有段者だったりするのが余計たちが悪い。
「その神が死んだら生き返れないって言ってただろうに……それに、あれは絶対愉快犯だ、俺達が苦労するのを見て楽しむタイプだ」
素知らぬ顔で俺の周りをふよふよと興味深げに彷徨っていたワンコが深く頷くのが見えた。
それにしてもこのワンコは本当に俺以外には見えていないらしい。それどころか接触しても気づかれていない。なお、すり抜けるようなことはなくワンコのほうが弾かれて転がっていった。
「なあ、晦も登録について知ってるってことはベータプレイヤー参加申し込み表示が出てたんだよな。僕ら三人とも選ばれてるって凄い偶然だな!」
「幼馴染三人とも選ばれるのは偶然と言えるのか、はたまた
お気楽にテンションをあげている蒼真はともかく、単純にゲームのような楽しめるだけの
「私としてはカイくんとソウマくんと一緒なら安心かな。ほら、ゲーム的にパーティを組むならソウマくんが前衛で私も前衛で、カイくんが前衛?」
ハッとした表情で小首をかしげる。
「いや、サクラっち、それバランス悪すぎるから。少なくともカイは中衛か後衛をやってもらおう」
俺を抜きにしてパーティ編成が決められているような気がするがこいつら無駄に詳しそうだ。
よく考えると蒼真は休み時間もスマホゲーのRPGをやっていたし、朔良はファンタジー系のラノベが好物だった。
「ねぇカイくん、神様が『ゲーム的な仕組みは導入する』って言ってたけど、ステータスとか職業とかあるのかな?」
「あーそう言えばそう言ってたな。どうだろうな、それより図書室着いたけど開いてるのか?」
ステータスとか職業については知っていないこともないけど言うことはできない。
「じゃじゃーん! じつは私は図書委員なので今日は鍵を預かっているのです。って開いてる?!」
仰々しく鍵を掲げた朔良には悪いが図書室のドアは何の抵抗もなく開いた。
「開いたけど誰もいな……」
図書室の中はいつもの整然とした机と椅子の配置ではなく、それらは部屋の隅に寄せられ広く真ん中が開けられていた。
「あっ、
「えっ、
部屋の真ん中でしゃがみこんでいた女子生徒が慌てて立ち上がって朔良を制止するも既に俺も朔良も図書室の中……
「あれ?
最後に図書室へ入ってきて馬鹿丁寧に図書室のドアを閉めた蒼真が振り返って叫んだ。
蒼真の見つめる先、図書室の中央、女子生徒の足元から赤い光がゆっくりと広がり、複雑な図形が踊るように廻る。
プロジェクションマッピングのような非現実なホログラムのような魔法陣に一瞬気を取られてしまう。
「蒼真、外へ!」
蒼真へと叫び、部屋の中央の少女へ駆け寄ろうとして異常事態に固まっている朔良の手を掴む。
「カイ、開かない! これは異世界召喚定番のやつ!」
ドアをちからいっぱい引っ張る蒼真の姿が見えた。
赤い魔法陣は図書室いっぱいに広がり……俺達は白い光に包まれた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます