第27話 長安の休日4〜本当の休日〜
参内して仕事して過ごしたほうがまだ休まるという、全然休まらなかった前の休日。その埋め合わせに引越休暇あわせて1週間の休みをもらった。
お屋敷の貴賓館を目隠しするために正門から母屋まで薔薇のトンネルを生やすことにして午前中は日曜大工店へ骨組みの買い出し。日曜大工店で軽トラ借りて資材を屋敷に……というか設置すべき場所に小分けにして置いて、返却がてら外食の昼飯。
10年前には考えもしなかった便利なものが当たり前に普及して、誰でも利用できる。これを理想社会と言わずして何が理想社会なのだろう。しかしそれでもなお、まだだ!もっともっと誰もが、もっともっと便利に暮らせる社会を作っていく!と陛下はその先を見据えておられる。
外食もかつては贅沢だったが、今では一人暮らしなら食材買って自炊と大して変わらないどころか逆に外食の方が安いまである。料理が下手な人間にとっては朗報である。
昼飯には大秦国の郷土料理のパスタと言われる料理を食す。ミラノに無いと言われてるミラネーゼに、ウィーンには無いと言われてるウインナーソーセージをトッピングする。美味いのだが、これは本当はどこの国の料理なのだろう?(※名古屋メシです)
薔薇のトンネルの骨組みを作り、苗を植えていく。管財(机や椅子といった備品の修理)および雑用の仕事をつい先日までしていたので決して慣れないことだということはないはずなのだが、あまりに広大な屋敷には太刀打ち出来ない。
一日がかりで母屋への半分も出来てないが全身筋肉痛だ。とりあえず(ファッション)マッサージを受けに風俗へ。
―――
ファッションマッサージの店に近づくと尾行されている気配を感じる。ものすごく嫌な予感がしたので目的地を変更して
「いらっしゃ〜い。相方さんは先に来て待ってるわよ」
ブッ!!
「あっ!ちょっと急用を思い出したんで、また次回……」
「あらー
捕まった……orz
しかも今日もバリバリの女装だ。何やってんの?皇帝ってそんなに暇な仕事なの?
「今宵は仕事させたりしないから、ゆっくりお話しましょ」
陛下、距離が近いです(喜んでない)。
「仕事が大変というより陛下の監視下にいる緊張感が拘束時間そのものなんです!」
「あらー、全然緊張する必要なんてないのに〜。私たちは家族じゃないの。一緒にいて寛げる関係にならないとだ〜め。へいいって呼んであま~いお話してよ。」
いや、陛下がそれで良くてもこっちが良くないんです。緊張しないでいいって、誰が緊張したくてするんだ?
―――
翌日、薔薇のトンネルの枠組みと苗を植える作業は終わった。あとは育つのを待てば、初夏から梅雨にかけてさぞ艷やかな庭園になるだろう。しかし、何がどうというのはわからないが、自分もなんだかんだで陛下に毒されてきているような気がする。
というのも、育ってもいないまだ見ぬ薔薇のトンネルの枠組みを見て、満開の薔薇のトンネルを陛下とともに誇らしげに進んで行く自分の晴れ姿を想像してしまうのだ。陛下とともに作っていく未来社会。その側にお仕えして陛下の大御心を実現可能な現実の手順に分解して実作業を取り仕切る。
不可能を可能にする力を持ち、未来の明確なビジョンをお持ちの陛下に寵愛されるというのは紛れもなくすべての男が憧れる栄誉あることであるし、それこそ仕官を志した時の想いを実現させる上でこの上ない環境だ。
でも、なんというのか「寵愛」っていうのはこういうのじゃないと思うんだけど。
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