第18話 長安の休日2〜雀卓の誓い〜
すっかり復興を遂げ大都会になってしまった長安。あの頃役所をサボってよくそのまま徹麻になった1時間1銭の雀荘はまだあるのだろうか?ここで許広漢とも王奉光とも張賀とも出会った。イカれた紳士たちの社交場。
許や王と異なり張は堅くともかく早く和了ることにのみ重点を置いたプレイスタイル。派手なことはやらず、低得点でもともかく少しでも早く和了ろうとするんだが、一度だけ弟子と称するイケメンの美形で物静かで何を考えてるかわからない不気味な若者を連れてきた事があった。
張が代わりに打たせるとその若者が連荘でとどまるところなく朝まで監禁、しかも一局あたりがえげつなく速い。日が明けてまだ連荘してるのには流石にみんなもうどうでもいいから終わりにしようぜというムードになってる。その間とめどもなく出た役満。偶然は一度までは信じる。
「ハハハ、さすがは高貴の血、何があっても決して泣かないで虎視眈々と復讐の機会を見定め、最後の最後で不思議なことが起こる。」と張賀は弟子の快挙を自分事のように鼻高々で自慢してた。
今から思えば、あの子、皇帝陛下だったんじゃないか?いや、皇帝陛下なら先日オレが泣かしたぞ。
ボーリング、雀荘、雀球、アレンジボール、プールバー、巨大迷路といった遊技場は改装せずに営業して、ボロくなっているのに味がある。ボロいからと言って必ずしも経営が悪いとも限らず、明らかに街から浮いている店がずっと続くこともあれば、小綺麗でもいつの間にか潰れていることもある。
俺たちの古巣は、立地が良いがボロい店だった。確かこの辺かなと見に行くと時の流れは残酷なもので入居していたビルの跡形もなく、その一帯がまるまる大型ショッピングモールになっていた。
お休みの日に大型ショッピングモールにお出かけなんて唾棄すべきリア充のやる事だが、あの店の面影を求めて中に入る。総合案内でアミューズメントのフロアマップを確認すると隅の方に見慣れた屋号を見つけたので見に行ってみると、雀荘ではなくオンライン麻雀専門のゲームセンターになっていた。
耳をつんざくようなド派手な効果音、店内まで照らされるド派手な効果映像に、これは紳士の社交場ではないなと一局も打つことなく立ち去る。
かつてあの卓を囲んだ許は皇太子殿下のおじいちゃんだし、王は後任の皇后陛下の父だ。つまり血の繋がらない兄弟になった……。
丙吉は……身内ではなく自分自身が皇帝陛下のパートナーになりそうだ。つまり皇后陛下の兄妹。どうしてこうなった?
その点、張は皇帝陛下の即位とほぼ時を同じくして世を去った。夢を叶えた絶頂の最中のやり逃げで一番幸せだったんじゃないかな?陛下と人間関係が無い状態であの世から大漢帝国の繁栄だけを見れるんだから。
華の都大長安。昨日も今日も街はその姿と構成員を替えつつ生きている。
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