第11話 謁見初日終了したので風俗へ

 「丙吉よ、大儀であった。定時で解放するゆえ風俗でもなんでも行って来いw。次は明後日に会おう。サラバぢゃ!ハッハッハ」


 陛下に完全にネタにされてると同時に隠密に完全にマークされてるだろう。推しの嬢が国家権力に狙われて危害が加わったら嫌なので、久しぶりに麗阿レイアの店に行く。何故か分からないが、彼女からは不死身の猛者の匂いがするし、少しは陛下の生存に貢献した可能性が否定できない人だと告げておいたので生命までは取られないだろう。何より長い付き合いで、こういう緊張をほぐすには彼女と話すのがベストチョイスだ。


麗阿レイア希臘ギリシア国の出身で大秦国ローマのFKKサウナクラブに出稼ぎしてたのを今は亡き先代のやり手ババアが若き日に同じくFKKで働いてたときにスカウトしてきて漢に帰化したらしい。年齢不詳の神秘的な娘だ。本当に娘なのかすらわからない。なにせFKKは完全実力勝負の場であり、そこで天寿を全うした今は亡き先代のやり手ババアが嬢として通用してた時代から嬢だったわけで本当はとんでもない年増のババアである可能性も否定できない。(※作者註:麗阿の正体については「いとしのレイア」参照のこと)


「いらっしゃい。お風呂にする?ごはんにする?それともワタシ♥?」


 いつものお決まりのフレーズだが、それが良い。お触り一切なしのこの店で「ワタシ♥」を選ぶとどうなるかというと、単純に風呂も料理もなしでガチのお話タイムになるだけなのだ。ちなみに「ワタシ♥」が一番安く明朗会計なのでサービス料のみとなってる。ご飯にしてもサービス料と料理代がお勘定に合算されるだけでどれを選んでもリーズナブルだ。サービス料で他のを割り引くのか料理はその質量を考慮に入れると圧倒的な安さなので頼まない選択肢はない。お話のみなら20銭ポッキリ、おまかせごはんホステスさんとの2人分付き40銭ポッキリ、風呂コースで50銭ポッキリを本当にその通りに会計する超良心的完全明朗会計だ。ここは晩飯も兼ねているので、ごはんにすると答える。


「いいことあったみたいね?」


「あぁ、職場で昇進が決まった。定期昇給といったところかな」


「ふ〜ん。守秘義務があるだろうからそこは深掘りしないわ。尋常でない事になったって顔に書いてあるわよ。」


「まあ、それなりに昇給するからちょっとは貢げるよ。」


「おねだりしちゃおうかな〜」


「流石に家とか車とかは無理だからな。せいぜいバッグとかアクセサリーとかだな。実際どれが買値に対してリセールいいんだ?」


「買値に対するリセールの良さだけなら土地よ。でもいつでもどこでもリセールできるわけじゃないし持ってるだけで税金かかるから正直もらっても困るのよね(※土地=自分自身だからです)。バッグもアクセサリーも、間に合ってるしぃ。いいわ、ちょっと高いごはんいれて私の成績に貢いでw」


麗阿レイアはおねだりするぞするぞ詐欺で、実際におねだりしたのを見たことがない。結局良いもの頼んで一緒に食べよって話に落とし込まれる。でも彼女、お得意先は俺だけじゃないのに仕事とはいえどんだけ食えるんだ?(※無限に食えます。)


ところで陛下からは身請けも考えろと言われているのだが……。そう思い麗阿レイアに目をやると、背後にこちらを軽蔑するかのように目を向けている鳳凰が見えた。怖い。陛下の背後にいた龍からはぶっ殺すぞテメーという殺意を出しているように感じたが、麗阿レイアが背負う鳳凰からは、お前はもう死ぬのですという既に決められた運命の告知をしようとしているかのようにに思えた。断然こっちのほうが怖い。

この娘はものすごくヤバい。直感的に感じ取った。ヤバさは皇帝陛下と同等?いやゲージが振り切れて測定限界超過でどっちがどうじゃない。下手に触れると大火傷で済まない霊的に危険な娘だ。


「どうしたの?顔が真っ青よ?」


麗阿レイアが悪気なさそうに聞いてくるが、心此処にあらずだった。


「あ、いや。疲れているのだろう。丸一日にわたってみっちりと面談でメンタル的にかなりやられてる。」


 間違いない。彼女も陛下に負けず劣らずのモンスターだ。顧客と店員という関係の間はカマトトぶっているが、いざ身請けなどしようものなら大変身して我が名は魔神レイアなり我を崇めよ、毎日欠かさず礼拝したならば福を授けるが一日でも欠かしたら死を宣告するなどと言ってくるタイプのモンスターだ。いや実は前のやり手ババァや今のやり手ババアが魔神レイアへの祭祀を欠かさずやってたんじゃないか。使用者のふりしてるがとっくに麗阿レイアに飲み込まれて、好きに使われているのではなかろうか?そして妙に良心的価格設定なのも客が取れない事を許さない呪でもかかっているのではないか?


 出張中まとめてとってある宿に帰り着くとそのまま意識を失うように眠れた。夢すらも見る余裕はなく。横になるなり目をつむる、目を開けると既に日が昇ってるといった感じだった。肝が据わっているのではなくて疲労が限界突破して意識が強制停止した形の熟睡だった。

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