第4話 予算を余分に確保
死刑囚を含む大所帯となった丙吉の留置所は、不思議な共同体の体をなしていた。予算ではとても賄えない食糧、衛生用品は自給、建物内は余りある囚人の刑務所作業による魔改造により通常の三倍の収容人数でも快適にパーソナルスペースが確保され、この共同体を支える人材を再生産するための独自の教育制度までが成立していた。
もともと優秀であるがゆえに嫉妬され冤罪でここに送られた囚人たちの集まりだ。言うなれば中央政府中枢の頭脳が集まっている。
流石に古典教養で複数の囚人に負けたのはちょ~悔しいので歌って踊れる看守になるため役所を定時で上がってディスコへ直行。次の日はカラオケへ。
―――
「……定時で上がったあとのことについてまで朕から言うことはなにも無い。定時までが勤務時間だからな。」
言うことはないと言ってるのにそれを言うということは、何か言いたいがうまく表現できない複雑な心境ということなのはわかっている。しかしいったんは言うことはないと言質を取ったのだから引き下げさせないために礼を以て受け止める。
「ありがたき幸せ」
「では頁をめくってくれたまえ。」
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巫蠱の禍について、単なる冤罪でありカルト教祖にして武帝の重臣である江充の陰謀であるという報告が上がったらしい。発端から約1年。長くは続いてはいけないし、長く続くわけもないが、1年掛けて形作った朝廷、役所に張った根が根こそぎ取り除かれるまではもう少し掛かるだろう。それこそこれからも残党がうちの囚人の処刑を要求してくるかもしれないが、うちのポリシーは推定無罪。当たり前だが、このあたり前のことを天下に向かって堂々と言えるようになるのもあと2年はかかるだろう。今はうちの中だけ、そういうことだからと
次年度の予算要求も、推定無罪を楯にして生活費を要求する。囚人なんか死んでも構わないという予算と、推定無罪を取り調べのために拘束しておく生活費に充てる予算では雲泥の差だ。
―――
ついに「仕事をサボって◯◯へ」構文が登場しない日が目立ってきた。逆に言うとそれまで毎日が何か夜遊びしてたということだ。
「ここから一気に名誉挽回だな」
皇帝陛下が色めきだった。まるでテレビに齧りついてブラウン管を通してヒーローを応援してる子供のようだが……申し訳ない。
「陛下……。恐れながら申し上げます。この時は大きな興行の日程があり、業務外はひたすらチケット確保に奔走していたんです。」
「なんの興行なのだ?」
「
「な、なんだ?……そ、それは
「
「ふむ。それが朕の生存と何が関係があるのか教えてくれないか」
「その後、「長安から視察団が来るからこの日に会えるように空けておくように」と言われたときに、「長安からの視察団がどうしたと言うんだ?こっちは
趣味全開で無関係な話に逸らされたのかと思っていたらそれも一応関係してたのか……いや、一応朕は仕事上の上司なんだからさ、もちろん
「その、なんだ……その楽士たちの名は本当に舌を噛みそうだな。」
「そ、そうですか?(汗)慣れ親しんでるんで特に珍しいとか言いにくいなと思ったことはありませんね。」
「その楽士たちの名がとても言いにくい事も、中央省庁の調査団がしつこく叱責することを面倒くさがらせて諦めされる役割を果たしたのかもしれぬな。」
「フルネームを呼ぶのに打撲傷が自然治癒するだけの時間掛かる寿限無ほどでもありませんよ。」
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