第4話 我、決意する
「魔法って、なんですか?」
クリスの質問に、思わずポカン、と呆けてしまう。
「ん……? いや、魔法は魔法だろう?」
「え、いや、あの……魔法っていうものが何かわからなくて……」
んんん? 魔法がなにか、わからない……?
「いやいや、これだけの都市に住んでいるんだ、魔法の一つや二つ見たことがあるだろう? ほら、さっきのライネスとかいう輩のやつとか」
「ライネスの……? ライネスの【
「待て待て待て」
「それはなんだ? 魔法の一種か?」
「え? あ〜……もしかして、千年前と、なにか違うんですかね……?」
*
なるほど、クリスの情報と、俺の憶測を混ぜると、こうか。
千年前。我と勇者の戦いが終わった後、神の介入により、世界の改変が行われた。
そこで、世界から『魔法』が奪われ、代わりとして『
才能や努力によって違いはあれど、誰もが覚えることができる可能性がある『魔法』と違い。
『
魔法が強さによって取得難易度が変わるのに対して、
「なるほど、ぶっ壊れチート、というやつか」
「まあ……平たく言えば、そうなりますかね」
どうりで、若造にしか見えないケイネスが、あんな無茶な技を使えるわけだ。
「まさか、魔法が、存在ごと消えているとはな……」
「ボクも、千年前は、みんなが好きな能力を得れた、ってことに驚きました……」
「そうか、現代人からすれば、そっちの方が普通になるのか」
……我が魔法を使えるのは、おそらく、封印の影響だろうな。
封印されている間は、この世界にいるという判定をされず、我からは魔法が奪われなかった……と、思うことにしよう。
でなければ、説明ができない。
「……この世界には、あんな能力を使う者が、ごまんといるのか……?」
「はい……ケイネスは強い方ですけど、中にはもっと理不尽な能力を持っている人たちもいます……」
そうか、アレ以上もいる……のか……。
「……魔王さん、気を落とさないでください。魔王さんが弱いわけではな――」
「フフ、フフフ、フハハハハハハハッ!!」
「――ま、魔王さん?」
面白い! 面白いぞっ!!
我のまだ見ぬ力が、溢れているだと!? かつて世界を統べる手前までいった、この我だぞ!?
「フッハッハッ!! クリスよ! 世界は広いなぁ!!」
「ま、魔王さんが、おかしくなっちゃった……」
「決めたぞ! 我は、この世界に挑もう!!」
千年前、頂点にいた我が、また1から世界に挑む……フフフ、面白いではないか。
「せ、世界に挑む……ですか? ど、どうやって?」
「それは!! ……ふむ、どうすればいいのだ?」
「って、無計画だったんですね……」
クリスに言われて気づいたが、我はこの世界について知らなさすぎる……。
なにか、この世界について学べるものがあれば――
「――そうだ! クリスよ、お前は学生と言っていたな!」
「え? あ、はい」
「そこでは、この世界について学ぶことは可能か?」
我の質問に、クリスは少し悩んだ様子で答える。
「んー、ボク的には、世界について学ぶ、っていう意識は持ってなかったですけど……魔王さんからすれば、世界を学ぶっていうことになるとは思いますよ」
「よし! ならば、我は学院に通うぞ!!」
「えぇぇぇ!?」
闇雲に独学で調べるよりも、学生たちと共に、教師に教わる方が早いだろう。
「が、学院に入るって言っても、受験期間は終わっているどころか、もう新しい学年が始まってから半年近く経ってますよ!?」
「む、途中から入る手立てはないのか?」
「そんなの…………いや、なくはないですね」
話してる途中で何かを思い出したのか、ハッとした様子で考え込むクリス。
「でもあれは……いや、魔王さんならいけるのか……?」
「なんだ、なにかあるなら言ってみよ」
「……一つだけ、手段があります。それは――」
*
王立ラスエント学院。
国からの認可を受け、個能の取り扱い方を学び、個能をより良く社会へ活かすことを教育し、善良なる意志を育てる学院。
その
――ただし、それは入試に受かれば、の話である。
筆記、実技の難易度は、この国でもトップレベルであり、誰でも受けられる入試だが、入学できる人間はほんの一握りの人間だけである。
そして事情を抱えた人間に対しては、『編入試験』をクリアすることでも、学院生になることは可能である、が――
その試験難易度は、入試の際の2倍以上と言われている。
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