第6話 三人目・ヘッドフォン美少女

歩きながら、三原先輩らしき人とすれ違うかもしれない、とキョロキョロと見回す。

青春部と書かれていたが、青春部とはなんなのか。活動内容が気になる。『ユーリの右腕』と書かれていたところから察するに、部長はーー文化祭のアーチを勝手に書き換える破天荒なユーリちゃんか。とすれば、活動内容は想像が付く。いや、想像の付かない活動内容だ、と想像が付く。

「おいおい、神田夏樹と沢井美冬の娘じゃないか?」

進行方向の邪魔にはならないけれど、目立つ人だかりができている。人だかり、というより男の群れ、と言ったほうが正しいか。好奇心も合わさって少し男の群れを覗き込んでみた。

「公開されてないけど、やっぱ画像は出てくるもんな。会えるとは思わなかったけど」

「めっちゃ美少女じゃん。芸能人の知り合い紹介してくんない? 君がデートしてくれても良いけど」

そんな声に興味もなさそうに、白いヘッドフォンの少女がいる。腕を組んでスマホを触っている少女は、良く見なくても美少女だ。美形の無表情は怖いと聞くが、小柄なせいかあまり怖くはない。目線はずっとスマホへ向いている。慣れているのだろう。

なにか面倒ごとになっているが、慣れているのなら彼女がどうにかするのだろう。

「おい! 調子に乗ってんじゃねえぞ。目線くらいよこせ!」

「ちょっと……!」

囲んでいたうちの一人が、相手にされないことに苛立って手を出した。

それだけなら放置するが、カシャン、と美少女のヘッドフォンが落ちる音がした。これは危ない、と思ったら反射的に体が動く。

「おい、おまーー」

パシン!

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る