第5話 ミッション・一年二組ミハラ先輩を探せ

俺がユーリちゃんを捜すことは決定事項らしい。ケイちゃん先輩の言葉には、逆らえない力がある気がする。まあ、一人で文化祭を回っても特に面白いこともなさそうだ。

「わかりました。一年二組のミハラ先輩ですね。見つかったらここに報告に来たら良いですか?」

「あ〜。一旦、生徒会の本部に連れて来てくれたら良いよ。抵抗したら無理にでも引っ張って来ても良いから。よろしくね」

そう言うと、ケイちゃん先輩は忙しそうにどこかへ行ってしまった。


ユカリ先輩からこっそりパンフレットをもらった。

さっきはユカリ先輩がバグを起こしてしまい、貰えなかったからだ。しかし今はかなりの行列ができている。なのでこっそりパンフレットだけ貰って受付を離れた。

一年二組のミハラ先輩。

デキるユカリ先輩はパンフレットの隅に、ミハラ先輩の特徴をメモしてくれていた。声はかけずとも、俺とケイちゃん先輩のやり取りを聞いていたらしい。ただのアホの子ではなかったのは間違いない。先輩に対する発言ではないので、誰にも言わないことにした。

――三原椎名、一年二組。青春部副部長。有能な常識人。明るい髪色。いつも眉間にシワがよっている。眼鏡。私がユーリの右腕として副部長を受け持ちたかったのに三原君のせいで私がユーリの役に立ちたかったのに小学校の頃から私がユーリの希望を叶えて私がユーリ〜〜。

途中からはユカリ先輩の怨念のようなものが書き込まれていた。最後の方は想いが非常に強いのか、ぐちゃぐちゃとした、およそ文字と呼べるものではなくなっている。ボールペンで書かれているはずなのに、折れた時にインクが飛び出したような跡もある。

しかし基本的に文字はかなり美しく、育ちが良く、教育が行き届いている印象だ。どこかのお嬢様なのだろうか。ケイちゃん先輩のような人もいるのだから、ユカリ先輩がどこぞのお嬢様でもおかしくはない。

――三原先輩を捜そう。……ユカリ先輩に呪い殺される前に。

まだ見ぬ三原先輩を不憫に思いながら、パンフレットの地図を見て一年二組を目指した。

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