6助け

「すみません。勝手に上がって。見ると重症のようでしたので。体調はどうですか。」

 子供が淡々と話す。ついていけない。

「っ……え?……え」


「あー、急に取り乱して悪い。まずは礼を言う。

 ありがとう。」

「いえ。なぜ倒れていたんですか。」

 子供が下を向いた次に我に問いかける。

 「ん〜。ごめん。答えられない。せっかくだけど、一人にさせてくれないか?」

「分かりました。」

 襖が閉じる。

「ほんま、どう言うこと。そもそもなんで襲われた?」

 想い残ることが一つある。

「届けか……」

 長い空間が空く。






 







 

「俺、そろそろ終わりか。」





 不思議と涙が出た。

 届けの内容とは、鬼は儀式を行わなければならないことだ。産まれた瞬間から誰が行うか決められる。不運にも鬼がその順番だったのだ。

「ふぐっ…………ッ……うーっ……」

溜めに溜め込んだ大粒の透明の涙が、重力によって落ちる。身体が自然と縮こまる。

 「大丈夫、大丈夫だろ。」

 自分に訴えかける。手が震える。布が擦り合う音がする。

 「もう全部無くなるだけなんだ。今までのこと全部。」

更に身体が縮こまる。顔なんてぐしょぐょだ。 

「あぁ。俺は昔から嫌われてたなぁ。儀式のためだけに存在してるんだから。」

 ――――――――――――――――――

薄暗い天井が見える。

「あれ、寝てたのか。」

 寝ぼけ眼が子供を映す。まだ目がひりひりする。

「すみません。勝手に部屋入って。罰は受けます。」

「いいよ。そんなこと。」

 鬼より二回り小さな手が握られていた。

「ごめんなぁ。心配かけて。」

 子供の頭を撫でる。

「ごめんなぁ、」

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