3庭

「〜〜♩」

 草花に水をあげている所だ。

「美しく咲け。そして我にみせるのだ。

 おっ。こりゃ綺麗な紫陽花(あじさい)だ。んふふ。長く咲くのじゃよ。」

 花の上に乗った水が反射して綺麗だ。

 ――――――――――――

「こんなもんかな。」

 じょうろを水汲み場の近くに置く。

 振り向くと子供っぽい顔のない子がおった。

「!!!!」

 急いで走る。

「何をしておる!」

 子供の手に千切られた花や葉が握られていた。それは鬼が育ててたものだ。

「ぽつ…………ぽつ、」

「分かった。話せないのだな。」

 子供の目線に腰を下ろす。そして肩に手を置く。

「これはな、鬼さんが大切に育てた花なんよ。綺麗だろ?けどな、そんな千切られたら悲しいぞい。ちょいっと、こっちに来い。」

 子供の手を握り、鬼の心を見せる。

「これは、銀木犀。こっちは鈴蘭。これはのぅ、最近咲かせた紫陽花だ。」

 子供の顔にゆらめきが見えた。花鋏(はなばさみ)を手に取る。

 チョキ……チョキ

「ほら、綺麗な花を。」

 切り花を子供の胸元に押し寄せた。

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