Revi部〜Till the end of time〜

春は別れの季節だ。それはRevi部とて例外じゃない。

3年生のあや先輩が卒業するのだ。

先輩は超一流大学の教育学部に合格した。まったく、最後までブレねぇなぁ。


部員たちから花束を受け取ってあや先輩は涙を拭ぬぐった。


「みんなぁ、よく、頑張ったね!! 私、Revi部と過ごしたこの1年、絶対に忘れないよ!!」


みんながすすり泣く声が聞こえる。私も塩水で視界がゆがんだ。

いかん、こんなの泣くにきまってるやん……。

いつしかメンバーはあや先輩を囲んで号泣していた。


結局、Revi部の面々は努力の末、部活の再生に成功した。


なぎさ先輩は頻繁に他校に合宿して、部活復帰の存在感をアピールしていた。

OLにも強力を求めて署名運動したりもしていた。

それが見事に実を結ぶ事となった。


「努力と汗と筋肉はウソをつかない!!」


なぎさ先輩がんばったなぁ。スポ根は強ぇや、やっぱ。


つばさ先輩の軽音部に関してはもともと潜在的せんざいてきな需要があったらしい。

年度替わりで転部届が増え、部としてやっていける頭数が揃った。

私達も校内の公開ライブにつきあったりもして活動を手伝った。

先輩のストリートライブを見て部に来た人もいたみたいだ。


騒音に関して根強い反発もあったが、学内の人気もあって、押し切ることが出来た。

でも角部屋の隣の人は納得しないんだろうな。


「ギュンムギュンムッ!! テレテレテレテレ〜〜!! イェイ!!」


―――ダンダンダンダンッ!!!!


知里子ちりこ先輩の生物部にも部員が2人来る予定だ。

その人数では愛好会止まりなところだが、知里子ちりこ先輩の懸命な実験やレポートで部活として認められることになった。


「よぉし、この調子で地学部ぶっ潰してやるぞ!!」


本末転倒ッ!! 相変わらずキャラが不安定じゃんか!!

にしてもやたらカブトムシの研究が多いのは気のせいか?


カブトムシ……ゴキブリ……うッ!!!!


櫻子さくらこ先輩の園芸部は意外と多く人が集まった。

お嬢様も多いからか、花にかれる生徒も多いんじゃないかなぁ。

もちろん"花"も"クサ"もあるし……。


これだけ一緒に過ごしていてもこの疑惑に関しては完全には否定できないから困る。

いや、別に櫻子さくらこ先輩が嫌いな訳では無いんだよ。

むしろ好きではあるんだが。


「あらあらウフフ……」


そして、私なんだが唯一ゆいいつ、異文化交流会を復活させることか出来なかった。

頑張って活動してきたはずだが、なぜか周囲の反応がイマイチなんだわ。

そりゃ確かに他の4人に比べると何をやる部活なのかわからないという弱点はある。


実際、私自身も攻めあぐねている感は否めなかった。

なぜだかわからないけど、先生方の反応が非常に悪いのだ。

いやそりゃ交流会サボって不純異性交友する部活なんて問題外なんだが。


1人だけおいてけぼりにされてしまった。

これには塩水を流さざるを得ない。

あぁ、エリート男子高生……玉の輿こし……薔薇ばら色の恋愛……不純異性交友……。


夢見た光景が走馬灯そうまとうのように現れては消えた。

私は思わず歯を食いしばっていた。


悔しい!! ぐやじいぐやじい!! こんなところで諦めるわきゃにはいかねぇ!!


そんな時、彩先輩が衝撃的な真実を告げてきた。


あいちん……残念だけどね、異文化交流会なんて部活は初めからこの学校にはないんだよ……。あいちんが聞いたのは全部、ニセのウワサ。流したのは私達。1人でもRevi部の戦力が欲しかったんだ。だましてごめんね……」


は? 何いってんだかわかんねぇ。

全てのモチベーションだった異文化交流会はウソだってことか⁉

じゃあ、なんのために私は死にものぐるいでオーセンに入ったんだよ⁉


思わず私はあやのヤツの首元につかみかかろう……としなかったんだな。

異文化交流会の幻を見た私だったが、幻じゃない確かなものがある。

眼の前のRevi部のみんなだ。


確かに私はだまされたのかもしんねぇ。

でも、Revi部みんなとの思い出はそれをチャラにした。

それどころか、絶望を超える感動と楽しさと、幸せを感じられた。


やられたことはともかく、コミュ障でどうしょもねぇ私に皆は親切にしてくれた。

それだけで有り難いし、私は救われていたんだ。

だから、いまさら、わだかまりなんて残るわけがなかった。


気付くと私は四つん這ばいで号泣していた。


「ぜ、ぜんばぁい……そんなこと、ぞんなごと、どうでもいいんでずぅ!! ぜんばあがたがよぐしてくれで、私は……私は!!」


部員全員が流れる涙を止められなかった。


「でも、っ、ううっぐ。もうぜんばいがたがいなくなるがと思うと……」


次の瞬間、なぜか先輩たちはにこやかになった。


「バカだなあいは。私達3年はあと1年あるだろ? なにがひとりぼっちだ」


「そーだそーだ。勝手に送り出してんじゃねーよ!! まだあたしたちにはやることがあるだろ?」


「そういうの、水臭いっていうんですよ」


「ウフフ〜〜。Revi部は〜、みんなで一蓮托生いちれんたくしょうじゃないですかぁ〜〜」


み……みんな……。


「と、いうわけで、次なる目標は異文化交流会の復活……じゎなくて、創設だね!! 申請まで時間はかかっちゃったけど。いやだなぁ、愛ちんをタダでこきつかうわけないじゃん!!」


ははっ。まったく彩先輩は人が悪いぜ……。

彩先輩は卒業しちゃうけど、こまめに遊ぼうと約束してくれた。

そして、まだこのメンツでRevi部をやれる。それだけで私は幸せだった。

かなりヤケクソ気味ではあったか、すっかり吹っ切れた。


そして私達は異文化交流会のReviveを誓った。


そしてまた春がやってくる。


オーセン入学式の朝……。


いっけなーい!! 遅刻遅刻!! 私は田島たじまハル!!

死ぬほどの受験戦争を乗り越えて憧れのオーセンに受かった。

風の噂に聞いたけど、ここには異文化交流会という部活があるらしい。


なんでも異文化交流会の体を成しつつ、実際はエリート男子との異性不純交友とかして、玉の輿こしなんだそうだ。


グフフ……たまんねぇなぁ。


そういうわけで私は高校まで猛ダッシュしていった。

校長先生のスピーチが終わると校内見学の時間になった。

スタートダッシュを切って階段を駆け上がる。


あんま運動してねぇからな。息が切れるぜ。

膝に手をついて何度か深呼吸した。

息を整えてドアを見上げるとたしかに"異文化交流会"と書いてある。

私は無いムネを張って部室に入った。


「こんにちは!! 私、田島たじまハルです!!」


さぞかし美少女が揃ってるんじゃないか?

だが、その予想は打ち砕かれた。

本当にコレが異文化交流会⁉ いや、そんなわけねぇだろ。

すると、窓際で刑事のようにブラインドをめくっていた人がこっちに気付いた。


「やあやあ、新入生。私が異文化交流会の部長、秋山愛あきやまあいです!! 残念だけどね、今は廃部状態なんだ。そんな部活の復活を助けるのがここ、Revi部っていうんだよ。私と協力して不純異性交友しよう!!」


言わんとすることはわかるが、表現がどストレートすぎるだろ。


「今年は茶道部、演劇部、新体操部、相撲部、TRPG研究会、お城クラブが復活を目指しているよ!!


うわっ後ろ2つマイナー!!

話を聞くから最低でも7人居る。

ほ〜ん、これはなかなか頼れる部活なんじゃねぇかな?


こうして私は勢いでリ……ナントカ部に入ることになってしまった。

これしかチャンスはないと思ってはみたものの……。

これがとんでもない決断になることを今の私はまだ知る由もなかったんだ…。


なかったんだよォ!!


Revive club till the end of time……

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る