レビ部

夏休みが開けて約半月。今度は体育祭がやってきた。


これもかなりハードで面倒くさい行事だ。


文武両道じゃなくてやたら武ばっかやんなよ!!

まぁ校内模試とかもやってるからなんとも言えないんだが。


オーセンには伝統の部活対抗のリレーがある。

皆、コレを楽しみにしてるみたいなんだよ。

Reviリヴァイ部にいくとなにやら盛り上がっていた。


「先輩方? どうかしたんですか?」


私がやってくるやいなや、彩先輩あやせんぱいが得意げに言った。


「あっ、愛ちん!! Reviリヴァイ部は部活対抗リレー競争にエントリーしましたぁ!!」


えっ⁉ そんなぁ!!

……と言うと思ったか? どうせこんなことになるだろうと私は未来予知していた。

こうなったら下手に反対したところで何か変わるでもない。


「それで、誰が割り振られるんですか?」


なぎさ先輩も得意げだ。こンのぉッ……。


「対抗リレーは私、あいつばさ知里ちり櫻子さくらこの5人だ」


そうか。そういや彩先輩あやせんぱいは生徒会だからな。

こっちのヘルプは出来ないか。


「ほら。バカやってないで、いくさに勝つ算段をするぞ。そしたらタイヤをくくりつけて土手をならす。筋トレと汗はウソをつかないからな。走り終わったら皆でプロテインだ」


あぁ〜、久しぶりになぎさ先輩の脳筋トークを聞いたわ。

ホントにそのトレーニング要る?

なぎさ先輩についていったら冗談なしに死んでしまう。


そういうわけで私達はなあなあで本番を迎えた。

やらないよりはマシ程度である。


嵐の前の静けさのように玉入れ、長縄跳び、綱引きなどソフトな競技が続いた。

パン食い大会で翼先輩が優勝したり、障害物競争で知里子ちりこ先輩がぐるぐる巻きになったりした。


櫻子さくらこ先輩は借り物競走でアヤしい花を借りてきたりした。


それマジでやべぇって!!


なぎさ先輩は長距離リレーのアンカーで5人もゴボウ抜きして優勝した。

あの人ブレねぇなぁ。しかも息1つ上がってねぇし。

女生徒から黄色い声援が上がる。そりゃそうだよカッコいいもん。


そうこうしているうちに部活対抗プログラムがやってきた。

運動部だけでなく文化部も出場したりする。

中にはネタ的なチームもあって、そっちはワイワイやってる。


……んだけど、ガチの運動部の視線が怖えよ!! 今にも殺し合いそうだ!!

Reviリヴァイ部はネタ枠ととらえられているらしいが、なぎさ先輩がエントリーしていることでそれなりにマークされていた。

いわゆるダークホースというヤツだな。


リレーは予選を勝ち抜いた5組で行われる。

ぶっちゃけ、私は予選落ちだと思っていた。


えぇ⁉ 決勝進出してんじゃん!! まぁ9割5分くらいはなぎさ先輩のおかげだけど。

ウォーミングアップしていると向こうから彩先輩あやせんぱいがやってきた。


「やあやあ。さすがReviリヴァイ部だね。お姉さん、思わず感動しちゃったよ。私も生徒会で走るね。お手柔らかににゃ」


あれ、なんだか周りの雰囲気が変わった。

彩先輩が差し出した手をなぎさ先輩がギュッと握り返した。


うお殺気!!


この2人、なんでこんなことになってんだ。

そもそもどうやって生徒会が勝ち抜いてきたんだろ。


リレーのトップバッターは私だ。

カオルやまこっちゃん、そしてクラスの皆が声援を送ってくれた。

私って人気者!? などとのぼせ上がりつつ、それにひらひらと手を振って返した。


「あっ、あっ、あ……。あっあっ(陰」


ボサッとしてると審判員がピストルを構えた。


「よーイッ!!」


パンパン!!


ついに本番だ。運動神経がペケな私だったが不思議と他の選手についていくことが出来た。

半年前ではありえない好走だ。

思い返せばなぎさ先輩との遠泳トレーニングであちこち鍛えられた。

結局、夕日の土手をタイヤを引きながら走った。


「っしゃあああ!!」


私はラストスパートをかけた。1人抜いて2位に浮上する。


知里子先輩ちりこせんぱいッ‼」


「はいッ‼」


上手くバトンは繋がった。


知里子ちりこ先輩は一番、運動神経がポンコツだ。

だが、誰も足手まといには思わない。それどころか信頼しているんだ。

Reviリヴァイ部は5人で一蓮托生いちれんたくしょうだかんな‼


「ハアッ、ハアッ、翼さん‼」


知里ちりナぁイス‼ よくこらえたな‼」


翼先輩はイメージ通りかなりすばしっこい。

私、翼先輩、なぎさ先輩で引っ張っているようなもんである。


「ギュイいいぃぃぃん‼」


2人抜いた‼ かない良いペースだ‼


「頼むぜ櫻子さくらこぉ‼」


「ウフフフ。は〜い。ガンバリまぁ〜す」


櫻子さくらこ先輩はマイペースにポテポテと走り始めた。

順位が4位まで下がる。

これもまたいつもの事なのでReviリヴァイ部チームは気を落ち着けてそれを見守った。


そしてなんとか交代スペースに入った。

運動音痴の多い生徒会とほぼ同着だ。


「ウフフ……なぎさちゃ〜ん」


バトンはアンカーに渡ったが私達は思わずビビった。


「生徒会のアンカー、あや先輩じゃね?」


すぐにデッドヒートが始まった。

そりゃなぎさ先輩にはかなわねぇだろと思ったんだが、あや先輩、クッソはやッ‼


なんだよアレ。なんであのちびっこはあんなに速いんだよォ‼

それもそのはず、私達は彩先輩がガチのスポーツウーマンだということを知らなかった。


別に黙ってたわけじゃないんだろうけど、まさかそんなキャラだとは思ってなかったのだ。

ちょっと秘密主義者っぽいのはかっこいいかもしれんね。


こうして2人は一気に他のチームを追い抜いて一騎打ちになった。

観客席のボルテージは上がり、爆発しそうな声援が校庭を包んだ。


「キャーッ!! なぎさ!! なぎさ!!」


「イケイケ!! ア〜ヤ!! ア〜ヤ!!」


並走する2人は声をかけあった。


「さすが先輩‼ 素晴らしい走りです!! インターハイ出場は伊達だてじゃないですね!!」


「なぎさちんこそ!! 私についてこられるのはなぎさちんくらいしかいないよ!! こんなに思いっきり走れるのは久しぶり!!」


あっという間にゴールが近づいてきた。

私は思い切り目を見開いた。

2人ともラストスパートでゴールテープを切った。


同時だったので審判員判断になったが、すぐになぎさ先輩に勝ち判定が下った。

体育の授業でやったぞ。タイム計測はムネがゴールを越えた時に計測するんだ。

あ〜。そりゃぁなぎさ先輩が勝つに決まってるじゃねぇかよ……。


周りの皆が感動で泣く中、私は悲しみの塩水をしこたま流した。

彩先輩にちょっとだけ共感したりもした。

問題は終了後のアナウンスだった。


「優勝はReviレビ部でした。おめでとうございます!!」


こうして私達は見事に部活対抗リレーで優勝した。

これによって、学園からちょっと評価されるようになった。


よ〜し、あとは学内の知名度だ。

生徒からの支持は一番の活力になる。

私は満足げに張り出された学校新聞を見ていた。


おっ、諸君、この新聞を見たまえ!!


「"レビ部"すごいね〜!! 運動部なのかな? それとも文化部なのかな?」


「さぁ? にしても"レビ部"ってなにやってんだろね? 名前がさ、ネタ部っぽいんだよねぇ。オカルト系? みたいなさ」


おい、ちょっと待て。

学のあるオーセン生ならばこれがReviveリヴァイブと部をかけたセンスのあるシャレだとわかるだろう⁉

だけど、そう思い込んでいたのは感覚が麻痺しきった私達だけだったんだよ!!

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る