チープトリック

天川裕司

チープトリック

タイトル:(仮)チープトリック


▼登場人物

●志賀蚤 輝雄(しがのみ てるお):男性。25歳。サラリーマン。

●大原静子(おおはら しずこ):女性。25歳。輝雄の彼女。カフェオレ大好き。

●寿 純也(ことぶき じゅんや):男性。25歳。サラリーマン。輝雄の友達。

●安井夢子(やすい ゆめこ):女性。25歳。純也の彼女。


▼場所設定

●ホテル:4人が滞在する。部屋のドアはオートロック式じゃない。

●観光スポット:一般的なイメージでOKです。夜景も綺麗。

●街中:バッグ専門店や露天風呂など一般的なイメージでOK。


NAは志賀蚤 輝雄でよろしくお願いいたします。

(イントロ+メインシナリオ+解説:ト書き・記号含む=3590字)



イントロ〜


皆さんこんにちは。


皆さんは、

ホテルで殺人事件に見舞われた事などありますか?

或いは何かの事故に見舞われた事など…。


今回は、滞在先のホテルで、

或る不可解な事件に見舞われたカップルにまつわるお話です。



メインシナリオ〜


俺の名前は志賀蚤 輝雄。

今回、4人で旅行に行く事になった。

俺、静子、純也、夢子の4人。


静子は俺の彼女、夢子は純也の彼女。

つまり、ダブルデートの形で旅行に行く事になったんだ。


ト書き〈ホテル〉


静子「あ~~ついに来たねぇ〜♪楽しい旅行にしようね♪」


輝雄「ああ♪」


純也「お、ここオートロックじゃねぇんだな」


夢子「あホントだ。珍しいね」


滞在先のホテルは、外観はまあまあ立派なのだが、

内装は少し古めかしい感じ。

昔の旅館と言ったイメージもある。

部屋のドアは自分で鍵を掛けなきゃいけないようだ。


輝雄「まぁいいじゃないか。旅行そのものを楽しめたらさ♪」


夢子「そだね♪」


ホテルの周りは有名な観光スポット。

毎年、多くの人が訪れている。


結構賑やかな様子で、

俺たちは早速、旅行気分を満喫していた。


ト書き〈買い物へ〉


ホテル到着したその日。

俺たちはじっくり観光スポットを巡り楽しんだ。


その帰り。


静子「あ、私バッグ買いたいんだ♪ねぇちょっと寄って行かない?」


ホテル横にあるバッグ専門店に俺たちは寄った。


店員「誠に恐れ入ります。こちらのバッグは取り寄せとなっておりまして…」


静子「えーすぐに持って帰れないんだぁ。んー、デザインいいし、どうしても欲しいんだけどなぁ~。取り寄せだったらどれぐらいかかるんですか?」


店員「明日にでも」


静子「あ、そうなんですか?じゃあ受け取れるわね♪」


今回は2泊3日の旅行。

今日バッグを取り寄せて貰い、

明日、滞在先のホテルへ届けて貰う事にした。


ホテルではルームサービスでフロントから客室へ、

荷物を配達してくれるサービスをしてくれている。

静子もそれを利用して、

明日、ホテルの部屋でバッグを受け取る事にしたようだ。


輝雄「ご機嫌だなぁ~」


静子「うん♪あのバッグ前からどうしても欲しかったからねー♪」


ト書き〈ホテルへ戻る〉


そんなこんなでホテルへ帰ってきた俺たち。


輝雄「はぁー歩いたら疲れるなぁ〜。風呂入って飯食ったら、今日は早く寝ちゃいそうだよ」


皆もそれなりに疲れたようだ。


俺たちは部屋を別々に取っていた。

俺と静子の部屋、そして純也と夢子の部屋。

部屋は隣同士。


純也「俺も足パンパンだよ〜、ちょっとベッドで横になるわ。じゃあまた後でなー」


(その日の夜)


風呂も入り、飯も食った後。


輝雄「お前ほんとカフェオレ好きだよな〜」


静子「ウフ♪このお風呂上がりの一杯が最高なのよね〜」


静子はカフェオレ大好き人間だ。

大体いつもカフェオレを片手に持ち歩いている。


レストランへ行ってもカフェオレ。

カラオケに行ってもカフェオレ。

或いは飲み屋に行ってさえ…


静子「ねぇ、ここってカフェオレないの〜?」

輝雄「あるわけねーだろ!居酒屋だぞ」


なんて事もある。


でも本当に美味しそうに飲む静子。


輝雄「なーんかお前見てっと、俺も飲みたくなってきたよ」


静子「もう1本あるからど~ぞ〜♪」


そんなこんなで夜が更(ふ)けた。


ト書き〈静子が寝た後〉


静子はもうベッドで熟睡だ。

俺もそろそろ寝ようかとしてた頃…


(小声で携帯電話)


輝雄「ん、なんだよ…夢子かよ?」


いきなり小声で隣の部屋から電話してきた夢子。


輝雄「どうしたんだよこんな時間に」


夢子「うん、ちょっと聞いてほしい事があって…」


内容は、純也との関係らしい。

最近上手く行ってないようだ。


俺たちは昔からの友達で、純也の事もよく知っている。

確かに純也は少し束縛がキツイ。

かなりの関白殿下。


良く言えば頼もしいヤツなのかも知れないが、

悪く言えば我儘だ。


その辺りの事で最近ギクシャクしていると言う。

純也には相談事も余り出来ず、思った事もなかなか言えないらしい。

そんな時、決まって夢子は俺に電話してきた。


輝雄「もう遅いから、また今度にしようぜ」


夢子「うん…ごめんね」


ト書き〈翌日〉


そして翌日。

俺たちはまた観光スポット巡りを楽しんだ。

それから夕方頃に帰ってきて…


輝雄「なぁ、せっかく来たんだから露天風呂行かねーか?」


と皆に言った。

でも…


静子「ん~疲れちゃったぁ。なーんかちょっと休みたいよ。それに今日バッグ届く日だし、いつ来るかわかんないから私部屋に居とかないとね」


と言う事になり、

結局、俺と純也だけがホテル横の露天風呂へ行った。

夢子も疲れたからと部屋で休んでいた。


ト書き〈静子死亡〉


そして俺たちは温泉から戻り飯を食い、

皆で暫く談笑していた。

そして又、それぞれの部屋に分かれた。


夢子は昨日の電話も嘘のように、

今日は純也とイチャイチャしている。


今回の旅行は久しぶりだったから結構楽しい。

俺は何となく時間が勿体ないと思い、

夜にまたホテルを出て、

スポット周りの夜景を楽しんでいた。


それから部屋に戻ってみると…


輝雄「お、おい、静子…?静子!?おい!!」


部屋のテーブルでうつぶせったまま、

静子が死んでいた。


(自殺と断定)


夢子「ウソ…なんで…」


純也「し、信じらんねえよこんなの…」


輝雄「静子!静子ぉぉ!」


それからすぐに警察が来た。

ホテル従業員も周りの客に配慮しながら、

俺たちの部屋に数人集まっていた。


俺が夜景を見ている間に、

静子が心待ちにしていたバッグが届いていたようだ。


そのバッグの中に、静子の遺書があった。

遺書はワープロ打ちされている。


死因は毒物による中毒死。

カフェオレと一緒にそれを飲んだらしい。


輝雄「そんなこと絶対に有り得ない!ある筈ない!俺たちは結婚の約束もしてたんだ!」


しかし毒物による死。

それに遺書まで発見されたとなると、

警察としては自殺と断定せざるを得ないようだ。


あとで聞いた話だが、

バッグがフロントから部屋に届けられたのは

俺がホテルを出て暫くした後。

だいたい夜8時頃だったらしい。


静子の死亡推定時刻は夜7時半頃。


静子が死んだその時間帯、

純也と夢子はずっと自分たちの部屋に居た。

変わらず部屋でイチャイチャしてたようだ。


だから2人のアリバイは、

互いが証明する形で成立している。


輝雄「静子…なんで自殺なんか…」



解説〜


はい、ここまでのお話でしたが、意味怖の内容に気づかれましたか?

それでは簡単に解説いたしますね。


今回の注目すべき点は…

・ドアがオートロック式じゃない事

・バッグの中の遺書

・死亡推定時刻

の3つです。


結論から言います。

犯人は、夢子でした。


4人は昔からの友達であり、

静子がカフェオレ大好き人間だった事は夢子も知っていました。


ストーリー途中で、

輝雄と純也が露天風呂へ行く場面があります。


その際、静子と夢子はそれぞれの部屋で休んでいました。

この時、静子は本当に寝ていましたが、

夢子は自分の部屋から出て静子の部屋に忍び込み、

冷蔵庫にあらかじめ入れてあったカフェオレの中に、

毒を入れていたのです。


部屋に居た静子は、

輝雄がいつ帰って来てもいいように、

ドアに鍵は掛けていませんでした。


だから夢子も簡単に侵入できたのです。


そして新しいバッグの中にあった遺書。

これも夢子が前もって用意していました。

だから遺書はワープロ打ち。

全てを自殺に見せかける為に。


ですが、ここで不自然な経過が見られます。


バッグがフロントから部屋に届けられたのは、

夜の8時頃。

しかし静子の死亡推定時刻は夜の7時半頃。


当然、静子が自分でその新しいバッグの中に、

遺書など入れられる筈がありませんよね?

それに、部屋の中に誰がバッグを持って入ったのでしょう?


つまり時系列から見ると、

「第三者が居た」

という事が明らかになる訳です。


このとき夢子は、

部屋にバッグが届けられるタイミングをずっと見計らっていました。


そして純也に気取られず部屋の前でバッグを受け取り、

その中にすぐ遺書を入れ、静子の部屋に持って入りました。


このとき静子は既に死んでいますから、

夢子はただ遺書入りのバッグを部屋に置き、

そのまま自分の部屋に戻ればいいだけ。


静子が亡くなったその時間帯の前後。

夢子と純也はずっと部屋に2人で居た為、

少なくとも夢子か純也のどちらかが…

「静子を他殺の形で殺した」

と言う可能性は一見して消えるでしょう。


静子殺害の理由は、やはり輝雄と交際したいと思った為。


夢子は純也と寄りを戻したように見えましたが、

それは上辺だけの事。


心の中ではやはり純也を疎ましく思い、

あわよくば、

輝雄と付き合いたいと強く願っていました。

頻りに恋愛相談等を輝雄としていた事からも、

この辺りの心情は分かるでしょうか。


その為、

結婚の約束までしていた静子の存在が邪魔だったのです。


しかし遺書を用意したその前後の経過は余りに杜撰。


バッグが届けられた時間帯、

そして静子の死亡推定時刻を照らし合わせると、

他殺の線はすぐに浮かんでくる事でしょう。


夢子が逮捕されるのも、時間の問題となりそうですね。

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チープトリック 天川裕司 @tenkawayuji

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