N.C.039 法律の自由化

連邦政府が法律の自由を認めることを発表した。

今までは連邦政府が憲法、法律を定め、全世界がそれに従うようにする形をとっていたが、これからは従来の憲法及び法律の一部をまとめた連邦憲法を定め、各国がそれに従って法律を独自に制定する方式に変更するとのことだ。

ただし、これには各国それぞれに議会の設置が不可欠で、議会の設置にかかる猶予期間が設けられることも同時に発表された。


  *  *  *


「やっとこれが通ったわね……」


ある一人の連邦議員はそんな感想を持っていた。

今まで何度もこの話は議題として挙がっていた。彼女自身も一度議題に挙げたことがある。しかし、今までは全て否決されてきていた。それは、それだけ慎重な意見を持っている人や、連邦議会の権威が失われてしまうのではないかと恐れている人が多かったということである。

しかし、慎重派もここしばらくの社会の安定ぶりや、法律の自由化を求める世論を考えれば、もうある程度各国に自由にさせたほうがいいと思えるような状態にあるのも確かだった。

更に、最近起きたトロイア事件が権威の失墜を恐れていた面々にさえも大きく影響を与え、ようやくこの決定までこぎつけたのだった。


「じゃあまずは自分の国に帰って議会の設置について私も一緒に話し合うとしましょうかね」


彼女が過去にこれを議題に挙げることを国に連絡した時に、『もしもそのようなことが可決されたときには、あなたには我々の国の議会の設置に関わる問題の相談に乗ってほしい』と連絡があり、彼女はこれを快諾していた。

そんな時に、彼女の元に一通のメールが届いた。


「何かしらね?」


そのメールは国から来たもので、『これから議会の設置を行う委員会を設置するので、そこの顧問となって我々の相談に乗ってほしい』というものだった。


「だから良いって言ってるじゃない。前にもその話はしたでしょ」


そう言って彼女は了解の旨を綴ったメールを返し、そのまま帰国に向けた計画を立て始めたのだった。




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