バーチャルリアリティー

天川裕司

バーチャルリアリティー

タイトル:(仮)バーチャルリアリティー


▼登場人物

●仮添宇 生流(かそう いきる):男性。35歳。ゲーム大好きで現実に絶望している。根っからのゲーマーでフリーター(人には「フリーター」と言ってるが本当は在宅ワーク)。独身。女にモテた事は無い。

●鶴崎由美(つるざき ゆみ):女性。30歳。生流の小学校からの幼馴染。めちゃくちゃ可愛い。生流が片想いしていた子。

●警察:一般的なイメージでOKです。

●アンナ:女性。30代。生流の「ゲームの世界に入りたい・現実を捨ててゲームの世界に幸せを見つけたい」と言う欲望と夢から生まれた案内人。


▼場所設定

●生流の自宅:一般的な戸建てのイメージで。両親と同居。生流の部屋は2階。

●鶴崎由美の自宅:生流の自宅から近い。一般的な戸建てのイメージでOK。

●バー「Virtual Reality」:意味は「バーチャルリアリティー」「仮想現実」。お洒落な感じのカクテルバー。アンナの行き付け。


NAは仮添宇 生流でよろしくお願いいたします。



イントロ〜


皆さん、こんにちは。

私の名前はアンナ。

皆さんを不思議な世界へお連れする案内人です。


今回はバーチャルリアリティーに興じる余り、

現実を見失ってしまった或る男性のお話です。


現代はネット社会。

こんな時代だからこそ、

このようなエピソードも現実味を帯びるのかも知れません。

その辺りを楽しみながらご覧下さい。



メインシナリオ~


ト書き〈生流の自宅〉


生流「えい!そりゃ!ソイヤ!」(ゲームしてる)


俺の名前は仮添宇 生流。

今年35歳になるが未だ独身。


こんな俺の趣味はゲームだ!


でも最近…


生流「ふぅー。なーんか、ゲーム全部やり飽きちゃったなぁ」


持ってるゲームに飽きてしまった。

新しいゲームにも欲しい物がない。


ト書き〈数日後〉


数日後。


生流「は-あ!全然楽しくなくなった!」


新しい趣味を持とうにも見つからない。


生流「ふぅ、仕方ない。今日はどっか飲みに行こ」


ト書き〈バー「Virtual Reality」へ〉


いつもの飲み屋街を歩いていた時。


生流「ん?『Virtual Reality』?こんな店あったっけ?」


全く知らないバーがある。

店内には懐かしいゲームのポスターが貼られていた。


生流「へぇ。なんか俺の為にあるような店だな♪」


気分を良くし、俺はカウンターで1人飲んでいた。

するとそこへ…


アンナ「こんにちは♪お1人ですか?ご一緒しません?」


割と綺麗な女性が声を掛けて来た。

別に断る理由も無いので俺はOK。


彼女の名前はアンナ。

たぶん歳は俺と同じ30代。

ライフコーチをしてるらしい。

副業でゲームソフトも取り扱ってる。


生流「へぇ~ゲームも売ってんですか」


アンナ「ええ」


話す内に何となく不思議に思う。

「昔から一緒に居てくれた人」

先ずそんな感覚が漂い、

「この人なら悩みを聞いてくれる」

そんな気持ちにさせられてしまう。


気付くと俺は今の悩みを全て打ち明けていた。


生流「もう最近、日常生活の娯楽って言うんですかねぇ。そういう楽しめるモノが何にも無くなっちゃって。なんだか張り合いも無くて、何の為に生きてんだろう…なんて考え込んじゃう事もあるんです。すいません、愚痴です」


アンナ「そんな方は凄く多いんですよ?私も長年このお仕事をしてますが、特に『現実に生きる望みを失くした』『自分の居場所が無い』『このまま生きてても不安だらけで疲れてしまう』といった人生への悩みが多く聞かれます」


生流「はぁ…」


アンナ「あなた確かゲーム好きっておっしゃってましたね?」


生流「ゲームは好きです。でも最近はもうそのゲームすら楽しめなくなっちゃって、何となく無趣味の生活・人生を送るハメになっちゃいそうなんです」


アンナ「なるほど。でもそれはきっと『面白いゲーム』が手許に無いからでしょう。また『面白いゲーム』を見付ければ、きっと生活も楽しくなります」


そう言うと彼女は…


アンナ「どうぞ、こちらをお試し下さい」


そう言ってメモリーカードを1つ差し出した。


アンナ「生流さん。あなた、Googleマップをご存じですか?」


生流「え?知ってますけど」


アンナ「それはGoogleマップを土台にした『リアルクエスト』のようなゲームです。パソコンから簡単にインストールできますので、ぜひ1度試してみて下さい♪そのメモリーカードには、アプリをインストールする為の情報が保存されています。リアリティ満点のゲームですから楽しめると思いますよ」


生流「『リアルクエスト』?」


取り敢えずメモリーカードを受け取った。


アンナ「ただしそのアプリの使用期間は3か月です」


ト書き〈生流の自宅〉


生流「うぉ!めっちゃリアルじゃんコレ!」


早速、プレイしてみた。

画面に映ったのはGoogleマップそのもの。

そのマップの中を主人公が自在に冒険する。

ストリートビューでそのまま冒険する感じ。


1つだけ違うのは、画面上の人物が全て動いている事。


勝手に民家に入る事も出来る。

店に買い物に行く事も出来る。

画面に映る人のプライベートを覗く事さえ出来てしまう。


ト書き〈3か月後〉


クソ面白い!

これまでのゲームに無い現実感・臨場感が丸出しだ!

俺は更にのめり込んでいった。


そしてアッと言う間に3か月が過ぎた。


生流「くっそ!やっぱ出来なくなってる!」


アンナの言った通り、ゲームを楽しめるのは3か月だけだった。


生流「今さらやめられるか!」


俺は財布を持って、すぐ又あのバーへ行った。


ト書き〈バー〉


生流「あ、いた!アンナさん!」


アンナ「あら、生流さん?どうしました?」


生流「あ、あのゲーム!ぼ、僕に売って下さい!お願いします!3か月しか出来ないなんて我慢できません!あのゲーム面白すぎます!お願いです!」


俺はどうしてもあのゲームの続きがしたくて堪らなかった。

例え高くても買おうと決めていた。


アンナ「生流さん。あのゲームですが、余りのめり込まないようにして下さい。お勧めしてこんな事言うのもアレですが、私は少しでも生流さんの覇気に繋がればと思いお勧めしました。あのゲームはのめり込むと危険なのです」


生流「そ、そんな事言わないで、お願いしますよ!あのゲーム、僕、どうしてもやりたいんです!あのリアルさ、現実感丸出しの面白さ、1つ1つの冒険がプレイしてる僕には堪らなく面白くて痛快なんです!お願いです!!」


暫くしてアンナも漸く折れた。


アンナ「ふぅ。仕方ありません。3か月間のお試し利用はもう出来ないので、こちらのゲームソフトを差し上げる事になります。それでよろしいですか?」


生流「あ、はい!それでいいです!幾らですか!?」


アンナ「私のお仕事はボランティアですのでお代は結構です」


そう言ってアンナはゲームソフトを1本くれた。


生流「無料なんて信じられない!」


アンナ「最後に1つだけご忠告しておきます。冒険だからって、そのゲームの中で余り無茶ぶりをしないようにして下さい。例えゲームでも、その世界の中では常識を弁え、登場人物や生き物には優しく接するようにして下さい」


生流「・・・?あ、はい!」


何だかよく解らなかったが、取り敢えず頷いた。


ト書き〈ゲームにのめり込む〉


生流「す、すげぇ・・・。こりゃすげぇ!」


久しぶりにゲーマーの血がたぎってきた。


俺はいろんな冒険をした。

・通りを歩いてる人をいきなり殴り倒す

・店から物をかっぱらう

・子供や老人を「敵」と称して棒で殴り付ける


生流「ひゃはは!面白ぇなあコレ!」


でもそんな事を繰り返す内・・・


生流「・・・でもなんか、ホントにリアルだなこれ・・・」


倒れ方や叫び声。

そういうのが全て現実のように思えてくる。

やってる内に段々怖くなってきた。


そんな時、画面上に知り合いの女が登場。


生流「あ、こいつ、鶴崎!?」


そいつは鶴崎由美。

俺の幼馴染で、小学校からずっと片想いしていたヤツ。

彼女の家は俺の家からすぐ近く。

だからその界隈もよく知っている。


由美はとにかく可愛い。

俺はコイツにゾッコン惚れていた。


そんな彼女を見る内に、俺の新たな欲望が目を覚ます。


生流「ぐふふ・・・由美ちゃん、想いを遂げさせて貰っちゃおかなぁ・・・」


(ゲーム内の展開)


主人公・生流「由美ィ~~久しぶりだなぁ」


由美「え?生流くん?な、なんでこんな所に・・・?」


生流「へへ!ちゃんと名前も呼んでくれんだな♪」


主人公の名前は「生流」に設定。


主人公・生流「由美ィ!お前がずっと好きだったんだぁ!」


由美「きゃあ!」


ゲームの中で、由美に思いきり襲い掛かった。

そのとき由美が・・・


由美「やめてぇ!ケダモノおぉ!!」


そんな事を言って来たからついカッとなった。

ゲーム内で用意された道具を使い由美を八つ裂きにした。


生流「ふっふーん、所詮ゲームだからね♪」


ゲームなら現実に出来ない事が出来るのだ。


ト書き〈逮捕〉


その時、ゲーム内で警察が登場した。


生流「ん?なんだコレ、警察か?ほ~こんなトコまで。凝ってんなぁ」


警察「生流だな!老人・子供への殺傷、コンビニ・デパートでの窃盗、そして鶴崎由美 強姦殺人の現行犯容疑でお前を逮捕する!神妙にしろ!」


生流「お?おーおー捕まっちゃったよ俺」


いきなり背後から現れた警察が、ゲーム内の俺を逮捕した。

「これもリアリティ満点のこのゲームの醍醐味か」

そう思っていた時、コントローラーを握る俺の体に異変が起きた。


ト書き〈粒子分解するように生流が消える〉


生流「ん?な、なんだ!?オイ!これなんだよぉ?!」


部屋にいた俺の体が、まるで粒子分解するように消えて行く。


生流「うわ・・・うわぁあぁぁあぁ!!!」


俺は完全に消えてしまった。


一瞬の闇を通り抜け、気付くと俺はゲームの中にいた。

警察に連行されている俺。

警察と俺の周りには、俺がゲーム内で殺傷した人間の残骸。

店から盗んだあらゆる商品が散らばっていた。


ト書き〈生流の自宅を見上げながら〉


アンナ「だから言ったのに。ゲームでも無茶ぶりはしないようにと。あのゲームはね、3か月のお試し期間ならゲーム内の出来事で済むけど、それ以上のプレイになると、仮想現実で起きた事が現実でそのまま起きてしまうのよ」


アンナ「私は、生流の『ゲームの世界に入りたい・現実を捨ててゲームの世界に幸せを見つけたい』と言う欲望と夢を叶える為に現れた案内人。本当はゲームにのめり込まず、彼には現実を生きてほしかったけど無理だったわね」


アンナ「皮肉なものね。生流は楽しんでいたゲームに裁かれ、ゲームの世界に捕われた。あれだけの事をすれば、生流はゲームの世界でも極刑を免れないでしょうね。コンティニュー出来ればいいけど、あのゲームには無いのよ」



エンディング〜


「バーチャルリアリティー」とは仮想現実。


でもその仮想現実こそが多くの現代人にとっては、

「現実そのもの」

に移り変わる傾向が本当にあるのかも知れません。


架空の夢から目が覚めて…

「しまった…現実に裏切られた」

とならないよう皆さんもぜひ気をつけて下さいね。



これまでに書かせて頂いたYouTube動画はこちら(^^♪

https://www.youtube.com/watch?v=gzVwcu6nWOs&t=332s

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