第3話 緊急事態

「た、大変です陛下! 領内にて魔物の大群が暴れているようです!」

 

「何じゃと!?」

 

「おそらくオークの集団だと思われます!」

 

 オークとは豚のような見た目をしている魔物である。


 だが力は強く、人間では到底太刀打ち出来ない相手だ。

 

「ならば兵力を集め討伐させよ! オークごときに王国は揺らがぬ!」

 

 国王であるレーク・ティガル・デーニッツはその場にいた大臣たちに声をかける。

 

 だが大臣たちはその言葉に対して良い顔をしなかった。

 

 何故ならばオークの数はあまりにも多かったのだ。

 

「陛下、兵を率いる指揮官が今現在おりません。近衛騎士団は東部の魔物討伐に向かっておりますし、他の兵団も今は遠征に出ているのです。多勢のオークを相手にするのは難しいかと」

 

「ではどうすれば……」

 

「父上、私が行きましょう」

 

「な、何!?」

 

 俺がそう言うと父上は驚きの声を上げる。


 他の大臣達も言葉を失っているようだ。

 

「駄目よアトソ! 貴方はまだ17歳なのよ? そんな危険なことをさせられないわ」

 

「母上、私は大丈夫です。私には古代魔法があります。それにこの王国で今指揮を出来るのは私だけかと」

 

「確かにお主は王国の中でトップクラスの強さを持っているのは間違いないが......」

 

 父上は俺を止めようとしてくるが、ここは引くわけには行かない。


 俺はこの国の王子だ。


 国民を守る義務がある。


 それが王子として生まれた者の宿命でもあるのだ。

 

「父上、私に任せてください」

 

 俺は真剣な目で父上に頼み込む。


 すると父上は大きくため息を吐くと頷いた。

 

 こうして俺は国内に現れたオークの討伐を引き受けることになった。


 俺は護衛とともに馬車に乗り目的地に向かう。

 

 すると驚きの光景を目の当たりにした。

 

「オークが移動している?」

 

 俺の見る限り、オークは別の場所に移動をしていた。

 

 不思議に思いながら考えているとある事に気付く。

 

「もしや隣国のネイバミーに向かっているのか? まずいぞこれは!」

 

 もしその仮説が間違っていなければかなり最悪の事態に陥る事になる。


 隣国のネイバミーは小国であるが、わが国と少しだけ関係を持っている国である。


 だがそれだけではない。


 ネイバミー国には後々この世界のヒロインの一人、聖女のローズが住んでいるのである。


 そんなヒロインが隣国のオークに攻めたれたら、最悪の事態に陥ることになる。

 

「急ぐぞ! このままではネイバミー王国の被害が計り知れない!」

 

「わ、分かりました!」

 

 騎士は返事をすると馬のスピードを最大限まで上げるのだった。



―――





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