第2話

「うわぁぁぁああぁぁっ!?」


 先程、胸を刺された激痛が今なお残っており、胸を手で押さえて蹲り、数分間悶えていた。

 痛みが和らぎ目に映るのは『あなたは死にました。再ログインは10分後に可能です』という文字と『雑草と364ギット奪われました』と、でてきていた。


「これは思っていたより痛過ぎるな……」


 ログアウトする前に設定を変えようかと設定画面を開き痛覚設定所まで行ったが、変更せず設定画面を閉じた。

 やっぱり痛みがないと緊張感が生まれないし、痛みもあった方が現実味がますからこのままでも良いかな。


「……俺はドMじゃない。現実味を増したいだけだ!うん!!」


 傍から見たらドMプレイしてるみたいに見えて、きちんと声に出して自己否定しとく事にした。声に出しておかないと認めてるようで嫌だからだ。


「30分も立っていないのに早速殺されてるし……」


 ステイタス、装備ともに最弱の俺を殺した犯人は初心者狩りでもしていたのだろう。だって装備も売れるかも分からないし代物で、アイテムもゴミしか持っていない。多分だが、始めたら絶対にもらえる金目的で俺を殺したのだろう。

 しょうがないが復讐なんて俺にはできない。

 俺弱いもの……。

 だがそれは今はという話だ。強くなったらアイテム全部奪う勢いで殺しまくる!


「それなら10分後は、観光じゃなく狩りに行きますか」


 水分補給をし、更新があったweb小説を読みながら待っていたが、読むのに夢中になって1時間程遅れてログインした。


「思ってたより時間たち過ぎてたな」


 でも過ぎたことより次は簡単に殺されないように狩りに勤しみますか!



   *** ** ***



 ログイン地点は死んだ所ではなく、最初に始めた地点で噴水の周りには恋人がまだまだたくさんいた。


「カップル多すぎだろ……」


 おっと、そんな事より狩り狩り!

 南門の方へ向かうことにした。またフードを被り、今度は殺されないように走って行く。

 数分たってようやく門の外に着いた。

 外には中よりも多くの人がおり、スライム、ボア系、昆虫系のモンスターを狩り尽くす勢いで狩りまくっていた。


「これ、狩れるモンスター残っているかな?」


 ――グエッ!?


 周りを見ているとスライムが後ろにリポップした事に気づかずに攻撃をモロに受けた。

 痛みはさほどなかったがノックバックが地味に強かった。

 スライムのくせしてなかなかやりやがる。


「なんでこんなノックバックつよ……。あ、そっか、俺の装甲が紙過ぎるからか…………」


 でも不意打ちじゃなきゃ勝てる!

 たかがスライムだし!




 と、思っていた時期もありました……




 レイ Lv1

 HP20 MP10 力1 魔力50 防御1 魔防30

       素早さ20 知力40 器用10 抵抗5

 所持金 636ギット


    ↓


 レイ Lv1

 HP3 MP10 力1 魔力50 防御1 魔防30

       素早さ20 知力40 器用10 抵抗5

 所持金 636ギット



「なぜ負ける……」

「相手スライムだぞ」

「スライムって確か2~3回攻撃したら倒せるはずだぞ?」

「じゃあなんで負けてんだよ」

「いや、俺に言われてもわかんねーよ」

「というかあのスライム、あの子の上で跳ねまくってなんか勝ち誇ってないか?」


 周りからの声で泣きそうになった。

 ホント泣きそう……。


「このスライムめ!」


 起き上がろうとする勢いを跳ねていたスライムに利用され、潰されたときに潰れたカエルの様な声でた。

  HP1になってしまったが、誰かが俺の上で跳ねてたスライムを倒してくれたのか、背中に感じる柔らかい感触はなくなった。


「大丈夫かい?」


 助けてくれた人は優しそうな青年で装備がおしゃれだ。上位プレイヤーなのかもしれないが他の人も皆お洒落さんなので良く分からない。


「はい、ありがとうございます。助かりました」

「お礼なんていいよ。一人で狩りをするなら気を付けなよ」


 それだけ言って、違うモンスターを狩りに行った。

 今回の失敗を踏まえて乱雑に振るんじゃなく、一回一回的確に振ってみようかな。周りの人もあの時の俺みたいに振り回してないし。

 それに2~3回で倒せるって言っていたし。


「というか回復回復!」


 運営から初心者パックありそれを開けて見たところHP回復ポーションx5、MP回復ポーションx5を貰いはしたけど10本にして欲しかった。紙装甲だし。



 HP回復ポーション

 ◆1分間の間にHP100回復する


 MP回復ポーション

 ◆1分間の間にMP100回復する



「一分が長い……」


 カップラーメンの3分が長い似てる気がする。あれって、待ってる間基本ずーっと時計見てる気がするんだよな。

 体感3分ぐらいの時間が流れているような感じだった。

 HPも回復したし事だし、もう一回スライムに挑戦してみるか。


「おっ!いたいた!!」


 早速見つけたので、先程の反省点を活かして戦ってみると苦戦はしたものの何とか倒せた。

 倒すと丸い結晶みたいのからはがれ、結晶は割れ液体だけ残った。


 レイ:+2Expを獲得しました。

    『青い液体』を手に入れました。



「よし!まずは一体倒したし、この調子でドンドン狩っていこう!」


 5時間頑張ったが10回くらいスライムに殺された。



 ――解せぬ――



 ログアウトして時間を確認すると15時半になっていた。

 ご飯は規則正しく食べるようにしているが朝と昼は例外で晩御飯だけは17時半前後で食べるようにしている。ご飯はさっさと食べて家では特にゆっくりしたいからだ。


「もうこんな時間か、お昼も食べてないけど2時間後には晩御飯だしそれまでにめしでも買い出しに行くか」


 この服装で外出は流石にないというか、普通に捕まる。大人用の服しか持ってないがズボンは折れば良いし、上はブカブカでもパカーもあるしな。


「ズボンどれにしよ……」


 探していたら夏物のズボンもあったがウエストのサイズが合わなく、少し歩いたら脱げてしまう。ジャージのズボンが紐で縛るタイプだったので、それを着ることにしたが、上もジャージじゃないと統一感がないので着替える事にした。


「これで良いんじゃないかな?」


 鏡の前でダボダボの服を着た幼女がいる。歩くのに支障が出るので折り込んでいる。袖は長すぎて手が全く見えない。


「これなら買い物に行けそうだな。ついでに女性物の服と下着、靴とかも買うか」


 靴はサンダルを履いてスーパーと服屋に向かう。

 道中他に入用な物がないか考えながら歩いて行ったが、何も思い付かないまま服屋(ウニュクロ)についた。


「う…………」


 服屋(ウニュクロ)は性別、年齢など関係なく衣服を扱っているが、一人客の男性が少なく、女性が苦手な俺はキツいものがある。

 だが今は幼女だ!

 これを最大限活かして同じ服を数着買いますか!


「「いらっしゃいませ~」」


 店員さん声を聴きながら入り子供服コーナーに向かう。

 白と黒の飾り気のないシンプルパンツを4着ずつ、白と黒のスポーツブラ4着すつ、靴下の白と黒3着ずつ買い。

 冬物はパーカーの白と黒を2着ずつ、ストレッチパンツの白と黒を2着ずつ、長袖の黒と白を2着ずつ買い。

 夏物はワンピースの白と黒を3着ずつ、半袖を黒の白を2着ずつ、半ズボンの黒と白を2着ずつ買い。

 最後に黒のジャージ2着と黒と白の靴を一足ずつ、黒いサンダル一個を買って店の人に配達依頼をして、3時間後に家につくようにしてもらう。


「――合計62,760円になります」

「カードでお願いします」


 やっぱり高いな……。



   *** ** ***



「服って高いなー」


 お金は貯金が結構あるので心配いらないのだが、頑張ってためていたのが減っていくのは、なんかへこむ。

 それに童貞で女になりたくなかった。


「まあ、何とかなるだろ」


 晩御飯はレトルトカレーでいいや。レトルトカレーの中辛を選び取る。パックご飯も持ってレジに並ぶ。

 外に出てからやたらと見られている気がする。

 確かに銀髪幼女が一人で買い物に来ていたら注目されるのも分かるが――。

 俺、誘拐されるとかないよね。

 客観的にみるとロリコンの人達には誘拐しやすい状況ではと思い始めた。


 誘拐できる状況

 ①一人暮らし。

 ②誘拐されても近所の人には気付かれない。

 ③暗くなっても買い物に出かけている。

 ④大人や男たっだ時の力はない。

 ⑤見た目が可愛い。


 ③は調整できるが他は変える事が不可能だ。

 ロリコンの人は『YES!ロリータNO!タッチ』の紳士さんだけでなく『YES!!ロリータGO!!タッチ』の変態もいるのだこの世には。

 変な汗が出てきた……。

 よし走って帰ろ!

 会計を済ませると手で持って、1秒でも早く帰った。

 帰ると大手ネット通販ショップ『トントン』でマイオトロンと特殊警棒、催涙スプレーを購入し近日中には届くようにして購入した。

 レトルトカレーを温め、ご飯は電子レンジで温めて食べ、食器を洗い片付けてもまだ時間には少し余裕があった。


「それならもう風呂も入って寝るだけの状態にしておこ!」


 そうと決まれば早速着替えを用意し、パンツは届いてから着直せばいいから男物を持っていき、上はシャツを着る予定だ。だがブカブカでワンピースみたいになってしまった。


「……いくか」


 男の時ならいざ知らず、女の子の姿で入るのは少し抵抗感があるが、汗の気持ち悪さを考えるとどうでもよくなる。


「うわぁ……」


 服を脱ぐと陶器のような白い肌があらわになった。


「思ってたより白い……肌弱そうだな」


 今日、外に出たときに顔と手が日焼けして赤みが帯びているのを風呂の鏡で確認できた。


「これ風呂でヒリヒリしそう」


 これなら先ずは顔と手を冷やすところからだな。

 男の時でも基本的に外に出て行って遊ばない引きこもりだったので肌は元々白かったので、外にいくと日焼けして痛い思いをした。

 だが、今の肌は日焼けのひの字すら感じさせない白さだ。絶対顔と手は痛い!


「今日風呂入りたくねぇ……」


 うだうだ言っても仕方ないと思い、シャワーで水を頭から被る。

 寒い寒いサムイサムイサムイサムイ!!

 いやマジで寒いから!?

 まだ夏にもなってない状態で水浴びとか死ぬわ!


「もう無理!!」


 8分は耐えたが冷たすぎて逆に痛くなった。

 沸いたばかりの熱々の風呂は、冷えた体にじんわりと暖めていく。


「ア゛ア゛アァ~」


 女の子にあるまじき声を出してリラックスする。声だけ切り取るとおっさんやおばさんの部類かもしれない。

 確か髪を風呂に浸けたら痛むんじゃなかったけ。まぁあとで調べよ。


「体と頭洗ってさっさとでよっと」


 体は前より楽に洗えたが髪がものすごくて洗いずらかった。

 余談だが首にあったほくろが消えていた。



   *** ** ***



 服がまだ届いてないのでまだ男の物の下着を身に付けるが、パンツは脱げそうになっている。


「早く服届いてくれ~」


 土下座のような状態でグデっていてもしょうがないと思い直し、毛先からドライヤーで乾かしていく。


「髪が長い女子の大変さを身をもって知ろうとは……」


 地味に複雑だ。

 乾かしたら次に化粧水で肌を保湿する。

 もうすぐ届くのでゲームをすることもできず、柔軟していたら若返ったせいか、前だったらあり得ないくらい曲がる。その事が楽しすぎてネットで調べて色んな態勢に挑戦していった。

 そうしていると玄関からチャイムがなった。


「ウニュクロからの配達です」


 おっ、来たみたいだな。

 Tシャツを着て玄関に向かう。


「はーい、今開けまーす」


 玄関を開け放つと結構な量の荷物が目に入った。


「!?」


 ドアを開けると配達のお兄さんが目を見開いている。


「どうかしました?」

「あっ!いえ、こちらで全てですね」


 紙袋7つ受け取り代引料金を支払い待ちに待った服を受け取る。


「ご利用ありがとうございました」


 次の配達があるのか、駆け足で行ってしまった。

 あらら、忙しそうだな。俺も初めの頃はあんな感じで、忙しなく働いてたな。


「先ずは着替えるか」


 パンツとTシャツの状態の今が、女性ものに変わっただけだ。

 着替え終えると眠くなるまでゲーム開始だ!

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