強襲
ビー!ビー!ビー!
突如、不吉な警告音が
「姫! 逃げて下さい! 侵入者がまた―――!」
ドォン!ドン!と鈴木氏の警告と同時に爆発音が響き、建物が振動で揺れる。
砲撃。音の方向からして例の大穴か……。
音からすると迫撃砲じゃなくて対戦車ミサイル辺りの火力支援だろうな。
しかし妙だな。あの警備を突破したにしては戦闘音がなさ過ぎる。
何せ鈴木氏達警備ロボットが装備しているのは分隊支援火器レベルの軽機関銃8門だ。
一体辺り毎分8000発の馬鹿火力。それが10台以上いるんだぞ?
そもそも鈴木氏が侵入を感知したのと砲撃が同時とか有り得ないだろう。
鉄火場の空気を感じた僕の頭は冷水を掛けられたように思考がクリアになり、無意識的に状況を分析する。
「桜花、鈴木氏。敵は鈴木氏達警備ロボットを無力化する手段があると思う。まともにやり合うのは不利だ。」
「私も同意見です。キョウ。姫を連れて逃げて下さい。私はここで足止めをします。」
「はぁ? 何言ってんのよ? 鈴木も一緒に逃げるのよ! 敵が警備ロボットを無効化出来るならアンタが残っても意味ないでしょ! 」
「確かにそうかもしれません。しかし、私達鈴木一族にはここを守ると言う生命を掛けるべき使命があります。」
鈴木一族!?
「こっのわからず屋!! 」
桜花の怒声を聞きながら、それなら僕が残った方が良いのか? なんて考えていると不思議な事が起こった。
桜花の長い髪がボンヤリと発光し広がる。
その細い白魚のような手が鈴木氏の無機質なボディに触れた。
「桜花の名に置いて命じます。鈴木 九三六、貴方はミュージアム警備の任を辞め、私の護衛任務に付きなさい。期間は無期限とします。」
「ぐ……ガ……ガ! しょ、承知しました。―――さぁ、キョウ。姫。行きましょう。」
うっそ!何これ!?
短い呻き声の後、あれほど頑なだった鈴木氏が意見を翻す。
「せ、洗脳……?」
「近いっちゃ近いかな? これが
桜花が何回か口にしていた謎の計画だが、名前と今の鈴木氏の様子から考えて、あらゆる機械をハッキングして洗脳出来る
そうなるとハッキングなんかされて鈴木氏は大丈夫なのか?
何だかんだで、あの人間くさい慇懃無礼な彼の事を好きになりかけていたので、あの彼がいなくなるのは僕としてはかなり寂しい。
「―――洗脳とは少し違いますね。私達AIには自分の意思とは別に、与えられた役割を全うすると言う本能があります。姫の力はその本能の方向性を変える力です。この力にはどんなAIも抗う事が出来ないでしょう。」
落ち着いたのか、鈴木氏が解説してくれる。
自分の意思とは別の本能ね? 人間で言う所の三大欲求みたいなもんかな?
ちょっと違う気もするけど、まぁ基本的には先程までの紳士な彼のままらしい。
……しかし、僕が考えた通り、桜花の力はどんな機械も操れる力である事には変わりない。
今現在ここを襲ってる奴等の目的も確定だ。
奴等の目的は桜花だ。
……んー、そうなると悩むな。
さっきまでは雰囲気に流されて一緒に逃げようとか、何なら僕が残って足止めをとか考えていたけどさ。
鈴木氏が一緒に逃げれる様になったのなら、僕いなくても良いよね?
いや、僕としてもこの短時間の間に2人とは仲良くなったと思っているし、ここを襲ってる奴等に売り渡したりなんかするつもりはない。
しかし、だからと言って警備ロボットを無力化出来る様な危険な連中と戦うのは―――。
「キョウ、行き掛けの駄賃です。あんな奴等に奪われても面白くありませんし、ここの展示物や保管されている武器や機械を根こそぎ奪って行きましょう。先程の四菱製ブレード、欲しいでしょ?」
「さぁ、早く行こう! 鈴木氏! 敵は待っててくれない! なぁに君と僕がいればどんな敵だってイチコロさ! 」
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