第14話 やってない
「さあ、今度こそ復活できないように、完全に粉微塵にしてあげるよ!」
ミノルはオレに向かって処刑宣告するかのように言い放つと、また何やらタブレットを操作し始めた。
そうして最後に右手人差し指で画面上のボタンを押すような動きをしたあとに。
ミノルたちと一緒に飛んできた多数の岩ブロックのうち半分くらいが、オレに向かって一斉に突っ込んできた!
「うわぁーーーーっ!」
ブロックが何個も勢いよくドカドカッと地面に激突して、オレの身体はたちまち押し潰されていく。
「まだまだ! こんなものじゃあ済まさないよ!」
ミノルは少し興奮気味に叫ぶと、積み重なった岩の上からドン、ドンと猛烈に衝撃を加えてきた。
ゴーレムたちにでも上から打撃を加えさせているのだろうか。
オレはヤツの言う通りに粉微塵になった。
「ふう、ふう……やったか!? ザマアみろ、僕が本気になればお前なんか粉々にできるんだ。もう復活できまい!」
「あ〜あ、その言葉をこの場面で言っちゃダメだって。100パーセント『やってない』ことになって相手の生存フラグが立っちゃうんだからさあ!」
オレはゴーレムの1体の肩の上に乗って、ミノルへ指摘を入れた。
その時のヤツの顔は、目を丸くするなんてものじゃない驚きようだった。
「そして、お前は既に2つ、負けフラグを立てている。もうお前に勝ち目はない、諦めて帰れ!」
「な、何をふざけたこと言ってるんだ。まだ僕は、お前なんかに負けていない!」
ミノルは顔を紅潮させながら必死でタブレットを指で操作する。
そして入力が終わると、空中に留まっていた残りの岩ブロックが、まさにブロックを積み重ねるが如く組み合わされていく。
そして中型の岩ゴーレムが姿を現すと、お腹のあたりに残された空洞にミノルが乗ったブロックがまず入り、前後を別のブロックで塞いだ。
おお〜、凄い。
合体ロボットとまではいかないが、人型兵器がその場で組み上がってそれに乗り込むというのは、見ていてワクワクしてしまう。
いや、今はそれどころじゃない。
オレはミノルが自ら立てた負けフラグを確定させた。
するとオレの身体は、自動的に動いてゴーレムの肩の上から飛び降りた。
それからすぐにオレの口から勝手に何やら叫び声が出ると、ゴーレムの額へと吸い寄せられていく。
そしてオレの身体は額に溶け込むようにゴーレムの中に入ってしまったのだ。
これって聞いたことがある叫び声とシチュエーションだけど何だったかな……。
そうだ、同じクラスのスパ◯ボ好きのヤツが言ってた気がする。
詳しくは忘れたけど。
それはともかく、オレは今、ゴーレムを乗っ取って自分のロボットみたいに扱える状況ってことか?
この際なんでもいい、ミノルを倒してこのピンチを脱出できるならな。
オレの意識と目線は完全にゴーレムと同じ高さで見えるようになっていて、手足を動かす感覚でゴーレムの身体を動かせるのだ。
オレは他のゴーレムに拳を振るって破壊し始めた。
ウヒョー、これはなかなか面白くて爽快な気分だ!
「どうなっているんだ! タツノスケが吸い込まれたゴーレムが、僕からのコントロールを受け付けない!」
ミノルが乗り込んだゴーレムから声が聞こえてきたけど、あの状態でもちゃんと周りの状況が見えているんだな。
で、コントロールが効かないのは当然。
なんせオレが乗っ取ったんだから。
でも次々と湧いてくるゴーレムをいちいち破壊するのは面倒だな。
なんか、全てを片付けられるような必殺技でもないものか。
そう思ったからなのか、オレのゴーレムは勝手に飛び上がると、自動的に鳥のような形態に変形し始めた。
そうしてゴーレムの群れに猛烈なスピードで突っ込んでいき、次々と破壊していく!
最後はミノルのゴーレムだ。
突進に錐揉み状のスピンも加わって、ヤツを一気に粉々に打ち砕いた。
「くそっ、僕のゴーレムたちがこんな訳のわからないやり方で倒されるなんて……! 絶対に許さないからな、タツノスケ!」
ミノルは寸前に自分が乗ったブロックを切り離して脱出に成功したようだ。
そして魔法使いの女カーラをブロックの上に乗せて退散していく。
「……タツノスケ、次こそは必ず……!」
なんか、段々と恨みを買う度合いが酷くなってきている気がする。
オレはただ、独りダラダラ過ごせる安住の地が欲しいだけなのに。
奴らが去った後、オレが乗っ取ったゴーレムはガラガラと崩れ落ちて土の塊となってしまった。
結構楽しかったのに残念だ。
「タツノスケ! やりましたね、わたしたちの力で奴らを追い払いました!」
ゴーレムから出てきてへたり込もうとしたオレに、グリゼルダが抱きついてきた。
それはいいけど息が苦しい。
彼女は全体的にはスレンダーな体型だが、胸が豊満というか……。
そこに顔が埋まってしまったのだ。
息も苦しいが、オレだって男子高校生、こういうのは別の意味でも苦しい。
でもなんとか顔を引き剥がして大きく息を吸った。
「どういうつもりだよ、窒息させる気か!」
「え〜、喜んでくれると思ったのに〜」
ますます意味がわからん。
でも彼女のお陰でオレはミノルを相手することに専念できた。
それには感謝しないと。
「お前のお陰で勝てたよ。それはありがとうな。もうしばらくだろうけど、このまま旅を続けよう。よろしくな」
「そんな……わたしとこれからもずっと一緒に旅をしたいだなんて。もちろんOKですよ?」
そんなこと言ってねーよ!
もう呆れて言い返す気も失せた。
疲れてしまったのか、オレはその場で少しの間寝入ってしまった。
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